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第3章 態(能動・受動) —— 主語が「する側」か「される側」か、それだけ


3-1 なぜビジネス英語は受動態だらけなのか

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みずほ食品の工場に「包装ラインが3月に更新されます」という社内通知が貼られる。誰が更新するのか(設備部か、外注業者か)は、現場の作業者にとってはどうでもいい。知りたいのは「ラインが止まる時期」だけだ。

英語も同じ判断をする。行為者が分からない・言う必要がない・言いたくないとき、行為者を消して「される側」を主語に立てる。 これが受動態。社内通知・お知らせ・規約・議事録といった TOEIC の世界は、行為者を書かない文書ばかりでできている。だから Part 5 でも Part 6 でも受動態が繰り返し問われる。

【要請】 「誰がやったか」より「何が起きるか」を伝えたい文書がある、という伝達上の要請から生まれた形。

覚え方の取っ掛かり: 貼り紙・回覧・規約は受動態。会話とニュースの見出しは能動態。

ここで引っかかるはず(Q&A)

Q. 受動態は「〜される」と訳せば見分けられるのでは。 A. 訳で見分けようとすると The report was completed.(完成された?)のように日本語が不自然になり、迷う。訳さずに「主語が動詞の動作をする側か、される側か」だけを見るのが速い。report は自分で完成しないので、される側。

Q. be + 過去分詞 の形なのに受動態ではないものがあると聞いた。 A. ある。be interested in be satisfied with be located in be involved in be committed to のように、形容詞として辞書に載っているもの。これらは「される」と訳さない。ただし Part 5 の解き方は変わらず、be の後ろは過去分詞(=形容詞の席)と処理すれば当たる。

Q. 目的語がある文でも受動態にできるのか。 A. 目的語が2つある動詞(give send offer award)は、受動態にしても1つ残る。The company was awarded a contract.(会社が契約を授与された)。受動態の後ろに名詞が残っていても誤りではないので、名詞の有無だけで能動と決めつけない。


3-2 具体例 —— 同じ内容を2通りで書く

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能動: The facilities team    will replace   the packaging line   in March.
      (する側が主語)        (動詞)        (される側が目的語)

受動: The packaging line     will be replaced                    in March.
      (される側が主語)      (be + 過去分詞)    ※ する側は消える

Part 5 ではこれが空所になる。

The packaging line ------- in March, so production will pause for two days.
(A) will replace  (B) will be replaced  (C) replacing  (D) to replace

手順は3つ。

  1. 空所は述語動詞の席か。 主語 The packaging line の後ろに動詞がない → 述語動詞が要る。ここで (C) (D) は落ちる(ch01 の席の話)。
  2. 主語は動作をする側か、される側か。 ラインは自分で自分を交換しない → される側。
  3. (B) will be replaced

packaging line が何なのか、March がいつなのかは一度も考えていない。 見たのは「主語が自分でやるか」だけ。

さらに強い決め手 —— 空所の後ろに目的語があるか

The facilities team ------- the packaging line in March.
(A) will replace  (B) will be replaced

空所の後ろに the packaging line という目的語がある。受動態は目的語を主語に持ち上げた形なので、後ろに目的語は残らない(3-1 Q&A の授与動詞を除く)。だから (A)

空所の後ろ
名詞(目的語)がある 能動
前置詞・副詞・文末 受動

【必然】 受動態は目的語を主語の位置へ動かして作る形なので、動かした跡地に目的語が残っていないのは論理的な帰結。

覚え方の取っ掛かり: 「目的語は1つしかない。前に来たら後ろには無い。」

なぜ他のやり方ではダメなのか

対抗案1: 「〜される」と訳して決める。 The report was completed yesterday. を訳すと「報告書は昨日完成された」で日本語として気持ち悪く、completed(能動の過去形)を選びたくなる。しかし The report completed yesterday. だと「報告書が(何かを)完成させた」になり、意味が壊れる。日本語の受け身は英語の受動態より使う範囲が狭いので、訳を判定基準にすると必ずずれる。

対抗案2: be動詞があれば受動態、と覚える。 The results are surprising.(結果は驚くべきものだ)は be + -ing で能動の意味。The staff were surprised.(スタッフは驚かされた=驚いた)が受動。be動詞の有無ではなく、後ろが -ing か過去分詞か、そして主語がする側かされる側かで決まる。 この2つは ch04 分詞 と地続きになっている。

対して「主語がする側か」+「後ろに目的語があるか」の2点チェックは、動詞の意味を知らなくても動く。The equipment was calibrated by an external technician.calibrate を知らなくても、by 〜 があるので受動と分かる。


3-3 素性カード

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受動態の形

時制
現在 am / is / are + 過去分詞 The invoices are issued monthly.
過去 was / were + 過去分詞 The line was inspected last week.
未来 will be + 過去分詞 The permits will be renewed in April.
現在完了 has / have been + 過去分詞 The order has been shipped.
進行 is / are being + 過去分詞 The floor is being repaired.(Part 1 の頻出
助動詞 must / can / should be + 過去分詞 Badges must be worn at all times.
to不定詞 to be + 過去分詞 The samples need to be inspected.

名前の由来

仲間と対(つい)

間違えやすい相手と見分け方

見分け方
The results are surprising. / The staff are surprised. 感情の元になっている物・事が主語なら -ing、感情を抱く人が主語なら -ed
自動詞の受動化 occur happen arrive rise consist は目的語を取らないので受動態にできないThe accident was occurred. は誤り
be located be involved 形容詞化しているので「される」と訳さない

出てくる章

ch01 品詞(be動詞の後ろの席)/ch02 時制has been + 過去分詞 の合わせ技)/ch04 分詞-ing-ed の対立はここから続く)


3-4 手順

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  1. 選択肢に be + 過去分詞 系と原形・過去形が混在しているか確認する。混在していれば態の問題。
  2. 空所の後ろを見る。目的語(名詞)があれば能動、なければ受動。 これで7割決まる。
  3. 決まらなければ主語を見る。 主語が動作を自分でするなら能動、されるなら受動。
  4. 時制は別途 ch02 の手順で決める(時を指す語を探す)。

3-5 Part 6 の態

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Part 6 では、態と時制が同じ空所で同時に問われる。3-2 の例のように、「文書冒頭の時を指す語」で時制を決め、「主語がする側か」で態を決めるという2段階になる。

Beginning next month, all outgoing cartons ---(1)--- with a two-dimensional barcode.
(A) were labeled  (B) will be labeled  (C) had been labeled  (D) are labeling

Part 6 の動詞問題は「時制で2つ落として、態で1つ落とす」形に作られていることが多い。 片方だけでは絞り切れないよう設計されているので、両方やる。


3-6 よくある間違い

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  1. 自動詞を受動態にする。 The problem was occurred. The train was arrived. は誤り。occur arrive happen rise remain consist は目的語を取らない。
  2. by があるのに能動を選ぶ。 The samples ------- by the quality team.by 〜 は行為者を示す印。受動確定。
  3. 後ろの目的語を見落とす。 The manager ------- the schedule yesterday. は後ろに the schedule があるので能動 revised
  4. -ing-ed の感情動詞。 The presentation was ------- .interesting(発表が興味を引く側)。The audience was interested.(聞き手が興味を持たされた側)。
  5. need / require / deserve + -ing の落とし穴。 The machine needs repairing. は形は能動でも意味は受動(=修理される必要がある)。needs to be repaired と同じ。TOEIC ではまれだが Part 7 で見かける。

3-7 関連マップ

graph TD
  ch01[ch01 品詞<br/>be動詞の後ろの席] --> ch03[ch03 態<br/>する側/される側]
  ch02[ch02 時制] --> ch03
  ch03 --> ch04[ch04 分詞<br/>-ing と -ed の対立]
  ch03 -.Part 1 の頻出.-> P1[is being + 過去分詞<br/>人が写っていなければ誤答]
  ch03 -.Part 6 では.-> P6[時制で2つ落とし<br/>態で1つ落とす]

本番でセットで出る: Part 1(写真描写)の誤答は is being repaired(=今まさに人が直している)を、人が写っていない写真に当てる型が定番。受動進行を聞いたら「その動作をしている人が写真にいるか」を確認する、というリスニングの解法がここから出る。


3-8 小話コラム 🌿

branch:toeic-gr-ch03-b1

英語の受動態は、もともと「なる」だった

古英語には、現代のような be + 過去分詞 の受動態は十分に発達していなかったとされる。代わりに man(人・誰か)という不特定の主語を立てて「誰かが〜する」と言う言い方や、weorþan(〜になる。ドイツ語の werden と同族)を使う言い方があった。

The line was replaced. の元をたどると「ラインが交換された状態になった」に近い。だから今でも The store is closed. が「閉まっている(状態)」と「閉められた(動作)」の両方に読めてしまうという曖昧さが残っている。ドイツ語がこの2つを ist geschlossen(状態)と wird geschlossen(動作)で書き分けるのに対し、英語は be に一本化してしまった。

※ 古英語の受動表現の詳細には諸説あるが、be への一本化が中英語期に進んだ点は共通して指摘される。

で、幹の話に戻ると —— be located in「〜に位置している」が「される」と訳せないのは、この「状態」の側の意味が化石として残っているから。例外として丸暗記する必要はなく、受動態の元の顔がそこに出ているだけだと分かる。


3-9 枝

<details> <summary>🔧 実務枝 —— 稟議書・契約書が受動態で書かれる理由</summary>

契約書の英文が受動態だらけなのは、文章が下手だからではなく、「誰が」を書かないことに実務的な意味があるから。Payment shall be made within 30 days. は、誰が払うかを本文で特定せず、当事者の定義に委ねる書き方になっている。能動で The Buyer shall make payment と書くと、買主が第三者に払わせる形が取れなくなる。

日本語の稟議書が「〜されたい」「〜のこと」と主語を落とすのと、動機はよく似ている。

で、幹の話に戻ると —— TOEIC の Part 7 に出る規約・契約書の抜粋が受動態ばかりなのは偶然ではないので、受動態を「読み飛ばさずに主語を確認する」癖が読解速度に直結する。 </details>

<details> <summary>🔗 隣枝 —— by は行為者だけではない(ch06 への橋)</summary>

by は受動態の行為者を示す一方、by Friday(期限)、by train(手段)、by 15 percent(差)と複数の顔を持つ。

受動態の by かどうかは後ろが人・組織かどうかで見分ける。inspected by the quality team(行為者)/increased by 15 percent(差)。

で、幹の話に戻ると —— by を見たら反射的に受動と決めず、後ろの名詞を1語見る。この1語の確認が ch06 の前置詞問題ともそのまま繋がる。 </details>


3-10 確認問題

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  1. All safety badges ------- at the reception desk before entering the production area. (A) must issue (B) must be issued (C) issuing (D) to issue → textbook_ref: toeic-gr-ch03
  2. The maintenance crew ------- the drying line every Tuesday morning. (A) inspects (B) is inspected (C) was inspected (D) inspecting → textbook_ref: toeic-gr-ch03
  3. The revised export forms ------- by the compliance officer last Thursday. (A) reviewed (B) were reviewed (C) have reviewing (D) review → textbook_ref: toeic-gr-ch03
  4. A delay in customs clearance ------- shortly after the container left the port. (A) was occurred (B) occurred (C) has been occurred (D) is occurring → textbook_ref: toeic-gr-ch03
  5. The quarterly figures were ------- to the entire sales team, who found them encouraging. (A) surprise (B) surprising (C) surprised (D) surprisingly → textbook_ref: toeic-gr-ch03

<details> <summary>解答</summary>

  1. (B) —— バッジは発行される側。空所の後ろは at 〜 で目的語なし。
  2. (A) —— 後ろに目的語 the drying line があるので能動。every Tuesday で現在形。
  3. (B) —— by the compliance officer が行為者。last Thursday で過去。
  4. (B) —— occur は自動詞なので受動態にできない。
  5. (B) —— 数字が驚かせる側。感情の元が主語なら -ing。 </details>