3期目の6月、みずほ食品の工場に2台の機械が入った。 1台は乾麺を自動で計量して袋詰めする包装機、もう1台は事務所のコピー複合機。 どちらも買ったのではなく、西美濃リース株式会社から借りている。契約書の表紙にはどちらも「リース契約書」と書いてある。
ところが、決算前に相談した税理士は、包装機のほうを指して 「これは資産に計上してください」と言った。複合機は「毎月の費用でかまいません」。 七海は納得できなかった。どちらも借り物で、どちらも会社のものではない。 それなのに、片方だけ帳面の左側に「リース資産」という財産として並べろという。
この章はその一点を扱う。持っていないものを資産に載せるのはおかしいのではないか、 という引っかかりを潰さないと、2級のリースは最後まで気持ち悪いままになる。 そして3級で習った備品と支払家賃の間に、 実はもう1種類の取引があったことが分かる。
かつて日本では、所有権が移らないファイナンス・リースについて、 売買と同じ処理をせずに、通常の賃貸借として費用処理し、 リース料の残額などを注記で示すやり方が広く認められていた。 その結果、設備をリースで揃えた会社の貸借対照表には、 使っている設備も、これから払う義務も現れなかった。これをオフバランスという。
同じ設備を借入金で買った会社と、リースで入れた会社を並べると、 実態はほとんど同じなのに、決算書の自己資本比率がまるで違って見える。 2007年に公表された「リース取引に関する会計基準」により、 2008年4月1日以後に開始する事業年度から、所有権移転外ファイナンス・リースも 原則として売買処理をすることになり、この差はほぼ埋まった。 国際的にも、IFRS第16号が2019年1月1日以後開始する事業年度から適用され、 借手側はオペレーティング・リースも含めて原則オンバランスとする方向に進んだ。
だからリースの資産計上は、几帳面な会計士の思いつきではなく、 「同じ実態なら同じ見え方にする」という要請から来ている。 契約書の題名ではなく中身で判定する、というこの章の骨格はそこに繋がっている。
簿記を習い始めると、資産は「会社が持っているもの」と説明される。 現金、商品、備品、建物。手で触れて、名義があって、売れば金になるもの。 ところがリース資産は、名義が貸手のままで、期間が終われば返す。 それでも借方に立つ。ここで「資産=持ち物」という定義が崩れる。
崩れた代わりに入ってくるのが、「支配していて、将来の利益を生むもの」という捉え方だ。 包装機の名義が誰であろうと、5年間その機械を動かして袋詰めをするのはみずほ食品で、 そこから生まれる売上もみずほ食品のものになる。他社に使わせない権利もある。 名義ではなく、誰がその便益を得ているかで線を引く。
この見方は簿記のあちこちに顔を出す。3級の売掛金も、 手元に現金はないが将来受け取る権利を資産として数えていた。 有価証券も、券面という紙ではなく、 その紙が表している権利を数えていた。 リース資産は、その延長線上で「使う権利」まで資産に含めたところに立っている。
七海は2つの契約書を並べて、違いを探した。 包装機のほうには「本契約は解約することができない」と書いてある。 リース期間は5年で、年間1,200,000円を5回、合計6,000,000円払う。 契約書の末尾には、同じ包装機を現金で買った場合の見積価格として5,400,000円という数字も載っていた。 5年で6,000,000円払って、5年後には返す。買えば5,400,000円のものに、600,000円多く払っている。
複合機のほうは違った。4年契約だが、6か月前に申し出れば解約できる。 月額25,000円、年間300,000円。台数を減らすことも、機種を入れ替えることもできる。
【必然】 この2つは、契約書に同じ言葉が書いてあるだけで、経済的にはまったく別のことをしている。
包装機は、途中でやめられず、機械の値段と金利をみずほ食品が全部負担する。
やっていることは、5,400,000円の機械を頭金なしで買って、5年の分割払いをしているのと変わらない。
分割払いで買った機械なら、当然、備品として資産に載り、未払いの分は負債に載る。
中身が同じなのに、契約書の題名が「売買契約書」か「リース契約書」かで
帳面の見え方が変わるなら、帳面は題名を写しているだけで、取引の中身を写していないことになる。
【要請】 もう一つ、外から読む人の側の事情がある。
包装機のリースを費用だけで処理すると、みずほ食品の貸借対照表には
5,400,000円の機械も、5年で6,000,000円払う義務も、どこにも現れない。
銀行がこの決算書を見ても、あと4,800,000円払わなければならない契約を抱えていることが分からない。
借金なら負債に載るのに、リースなら載らない。それなら借金をやめてリースにすればいい、という抜け道になる。
だから、解約できず、物件の代金を全部負担する形のリースは、買ったのと同じように処理する。 これをファイナンス・リースと呼び、そうでないものをオペレーティング・リースと呼ぶ。 覚え方の取っ掛かりは「逃げられない借り方は、買ったのと同じ」。
借手であるみずほ食品がリース資産6,000,000円(または5,400,000円)を計上するとき、 貸手である西美濃リースの帳面には、鏡のように「リース債権」または「リース投資資産」という資産が立つ。 貸手にとってこの取引は、機械を売って代金を5年で回収する取引であり、 回収できるかどうかは相手の信用そのものになる。だから貸手は与信審査をする。
貸手の側から見ると、リース料の中身は「物件の代金 + 5年分の金利 + 手数料」に分解できる。 みずほ食品の例なら、6,000,000 − 5,400,000 = 600,000円がその上乗せ分にあたる。 稟議書でリース料総額だけを見ると、この上乗せが物件価格に埋もれて見えない。 物件価格と利子相当額を分けて書くと、実質の利率が見えるようになる。 6,000,000円を5年で払って元本が5,400,000円なら、単純計算で年あたり120,000円、 元本に対しておおむね2%台の負担という見当が立つ。
借手が資産と負債を両建てで載せるようになると、貸手から見ても話が早い。 相手の決算書にリース債務が載っているので、他社からどれだけリースを引いているかが読める。 昔はここが見えず、決算書がきれいなのに実はリース料の支払いで資金繰りが詰まる会社があった。
で、幹の話に戻ると、借手が資産と負債を両建てにするのは、 貸手・銀行・取引先といった外の人が、その会社の負担の総量を読めるようにするためでもある。
lease は中世の英仏語 lesser/古フランス語 laissier(手放す、任せる)に遡り、
さらにラテン語 laxare(ゆるめる、解き放つ)に行き着くとされる。
「ゆるめて相手に渡すが、自分のものではなくなるわけではない」という語感が元にある。
日本語では明治期に lease を「賃貸借」と訳したので、
「借りているだけ」というニュアンスだけが強く残った。
※覚え方として、「所有権は手放していない(貸手のまま)が、使う権利は解き放って相手に渡している」 と読むと、ファイナンス・リースで借手が資産計上する理由と繋がる。 帳簿が捉えているのは所有権ではなく、使うことで生む将来の利益のほうだからだ。 この「紙や名義ではなく、権利の中身を見る」という発想は、 有価証券を券面ではなく保有目的で分類したのと同じ考え方になる。
で、幹の話に戻ると、「賃貸借」という訳語のせいで借手が資産に載せる話が奇妙に見えるだけで、 元の言葉は最初から「使う権利を渡す」ことを指していた。
| 包装機 | 複合機 | |
|---|---|---|
| 契約 | 中途解約できない | 6か月前予告で解約できる |
| 期間 | 5年(経済的耐用年数6年) | 4年 |
| リース料 | 年 1,200,000円(毎年3/31後払い) | 月 25,000円 |
| リース料総額 | 6,000,000円 | 1,200,000円 |
| 見積現金購入価額 | 5,400,000円 | ― |
| 期間終了後 | 返却する(所有権は移転しない) | 返却する |
| 分類 | ファイナンス・リース(所有権移転外) | オペレーティング・リース |
包装機がファイナンス・リースになる理由を数字で確かめる。
2つの基準はどちらか一方を満たせばよい。満たすということは、その物件の値打ちと使える期間を、 借手がほぼ丸ごと引き受けているという意味になる。これをフルペイアウトという。
複合機は解約できるので、この判定に入る前に終わる。 借りている間の使用料を、借りている期間の費用にすればよい。3級の支払家賃と同じ形だ。
finance は「資金を融通する」。物件を借りる形をとりながら、
実質は貸手が代金を立て替えて借手に金融を付けている取引なので、この名前が付いている。
「賃貸借の顔をした金融」と読むと中身に近い。operating は「日々の業務上の」。設備を保有せず、必要な期間だけ業務のために使う
という位置づけからこの名前になっている。ファイナンス(金融)に対して、こちらは純粋な賃借。包装機の契約書を上から読みながら、分類を1回決めてみる。上から順に聞いて、途中で止まる。
一般化すると、判定は「解約できない(ノンキャンセラブル)」と「代金を全部負担する(フルペイアウト)」の 2つが揃ったらファイナンス・リース、その中で所有権が移るかどうかで2つに割れる。 90%・75%という数字は、「ほぼ全部」を機械的に線引きするために置かれた目安で、 この2つの基準はどちらかを満たせばよい。
所有権が移るかどうかは、減価償却の仕方に効いてくる。移らないなら、 みずほ食品が使えるのは5年だけなので、リース期間5年・残存価額ゼロで償却する(リース期間定額法)。 移るなら、その後もずっと使えるので、自社の備品と同じく経済的耐用年数6年で償却する。
まず、判定が決まったあとの入口だけを見る。金額の作り方は次の節で扱う。
オペレーティング・リース(複合機)
毎月末 (借) 支払リース料 25,000 (貸) 当座預金 25,000
3/31 決算(2か月分が未払いの場合)
(借) 支払リース料 50,000 (貸) 未払リース料 50,000
ファイナンス・リース(包装機・利子抜き法)
6/ 1 (借) リース資産 5,400,000 (貸) リース債務 5,400,000
対抗案1:借り物なのだから、包装機も費用だけで処理する
みずほ食品の3期目の期末を、2通りで並べてみる。 仮に総資産が10,000,000円、負債4,000,000円、純資産6,000,000円だったとする。自己資本比率は60%。
| 費用だけで処理 | 資産・負債を両建て(利子抜き法) | |
|---|---|---|
| 総資産 | 10,000,000 | 14,320,000(+リース資産 4,320,000) |
| 負債 | 4,000,000 | 8,320,000(+リース債務 4,320,000) |
| 純資産 | 6,000,000 | 6,000,000 |
| 自己資本比率 | 60.0% | 41.9% |
※リース資産は初年度の減価償却1,080,000円を引いた残高、リース債務は初回返済1,080,000円を引いた残高。
純資産は1円も変わらないのに、自己資本比率が60.0%と41.9%で並ぶ。 どちらの会社も、あと4,320,000円払う義務を負っている点は同じだ。 費用だけで処理した側の決算書を見た銀行は、存在する義務を数えないまま格付けをすることになる。 しかも、この方法なら設備を借金で買うより見た目の財務内容が良くなるので、 本当に必要かどうかではなく、決算書の見栄えでリースを選ぶ会社が出てくる。 帳面の付け方が意思決定を歪めるところまで行くと、道具として壊れている。
対抗案2:どんなリースでも資産と負債を両建てにする
理屈としては筋が通る。実際、国際的な会計基準は近年この方向に動いた(小話)。 ただし、複合機の月25,000円まで両建てにすると何が起きるか。 リース資産1,200,000円とリース債務1,200,000円が立ち、毎月、元本と利息に分けて償却する。 4年で解約できる契約なので、2年目に解約すれば残りを一括で取り崩す。 得られる情報の増え方に対して、事務の手間が釣り合わない。 月25,000円の複合機を1本ずつ資産計上しても、読み手が受け取る情報はほとんど増えない。 だから日商簿記2級の範囲では、解約できるものは費用処理、 解約できないものでも重要性の乏しいものには簡便な扱いを認める、という線が引かれている。
Q. 所有していないものを資産に載せるのは、財産を水増ししていることにならないか。 A. 資産として計上している中身が「機械そのもの」ではなく「5年間その機械を使う権利」だと考えると水増しにならない。 同時に同額の債務が貸方に立つので、純資産は1円も増えない。 増えるのは総資産と総負債の両方で、この会社がどれだけの設備を動かし、どれだけの義務を負っているかという 規模の情報が増える。3級で習った貸借対照表の左右が同時に増えるだけで、 持ち主の取り分(純資産)は動いていない。
Q. 途中で機械が壊れたら、資産だけ消えて債務が残るのか。 A. 契約上はそうなる。中途解約できないファイナンス・リースは、 物件が使えなくなってもリース料の支払義務が残る形が普通で、その代わり保険が付いていることが多い。 「壊れても払い続ける」という性質こそ、この取引が賃借ではなく金融に近い証拠になっている。 逆にオペレーティング・リースは、貸手が物件のリスクを負っているので解約や交換ができる。
Q. 90%や75%という数字は、なぜ半端なのか。 A. 「ほぼ全部」という感覚を数字にしたもので、100%にすると1円の差で判定が変わり、 50%にすると半分しか負担していない取引まで購入扱いになる。 実務で線を引く必要があるところに置かれた目安なので、 この2つの基準はどちらか一方を満たせばよいという使い方も含めて、 「ほぼ全部を引き受けているか」を判定するための道具だと捉えるほうが早い。 試験では問題文に「割引現在価値は見積現金購入価額の95%である」のように書いてあるので、判定そのもので迷うことは少ない。
flowchart TD
A[リース契約を結んだ] --> B{中途解約できるか}
B -- できる --> C[オペレーティング・リース<br/>支払リース料だけ]
B -- できない --> D{代金をほぼ全部負担するか<br/>現在価値90%/期間75%}
D -- いいえ --> C
D -- はい --> E{所有権が移るか}
E -- 移る --> F[所有権移転FL<br/>経済的耐用年数で償却]
E -- 移らない --> G[所有権移転外FL<br/>リース期間・残存ゼロで償却]
G --> H[利子込み法/利子抜き法<br/>boki2-ch06-s02]
C --> I[未払・前払の決算整理<br/>boki3-ch12-s02]
G --> J[減価償却の方法<br/>boki2-ch05-s01]
分類が決まったところで、七海は次の壁にぶつかった。 包装機をリース資産として借方に立てる。では、いくらで立てるのか。 5年で払う総額は6,000,000円。同じ機械を現金で買えば5,400,000円。 契約書には両方の数字が載っている。どちらを資産の金額にするのか。
【必然】 600,000円の差は、機械の値打ちではない。
同じ包装機が、リースだと6,000,000円の値打ちになるわけがない。
この差は、5,400,000円を5年かけて払わせてもらうことへの対価、つまり利息にあたる。
借入金で買った場合を考えれば分かりやすい。銀行から5,400,000円借りて機械を買えば、
帳簿には備品5,400,000円と借入金5,400,000円が立ち、利息は毎年支払利息として費用になる。
機械の値段と利息は別のものとして扱われる。リースでも中身が同じなら、同じように分けられるはずだ。
だから原則は、利子相当額を抜いて資産と負債を立てる。これを利子抜き法という。 そのうえで、抜いた600,000円を5年に配り、各期の支払利息にする。
【要請】 ただし、簿記2級では利子込み法も認められている。
利子相当額を抜かずに、リース料総額6,000,000円のまま資産と負債を立てるやり方だ。
中小企業では、利息を分けるための計算が毎期発生することの負担が、
分けることで増える情報より大きい場合がある。
そのときは、簡便な方法で継続して処理するほうが、期間比較が保てるという判断になる。
覚え方の取っ掛かりは「込み=利息をリース料に込めたまま/抜き=利息を抜いてから載せる」。
名前がそのまま処理を言っている。
リース料の見積書には、たいてい月額または年額しか書かれていない。 包装機なら「年1,200,000円 × 5年」。ここから利子相当額を抜くには、 同じ物件を現金で買った場合の価格が要る。契約書や見積書の「見積現金購入価額」がそれにあたる。
6,000,000 − 5,400,000 = 600,000円。これを5年で割れば年120,000円。 元本5,400,000円に対する初年度の負担率は 120,000 ÷ 5,400,000 ≒ 2.2%。 定額法で配っているので、実際には残高が減るほど負担率は上がっていく(4年目の残高1,080,000円に対して 120,000円なら11%を超える)。利息法を使えばこのゆがみは消えるが、2級では定額法で扱う。
稟議書や設備投資の比較検討では、この分解ができると 「銀行から借りて買う」と「リースで入れる」を同じ土俵に乗せられる。 借入なら金利のほかに担保・保証の負担があり、リースなら固定資産税や保険料が リース料に含まれていることが多い。総額だけを比べると、含まれているものの違いで判断を誤る。
で、幹の話に戻ると、利子抜き法がやっているのは、まさにこの 「物件の代金」と「時間の対価」を分ける作業を、帳簿の上で毎期続けることだ。
600,000円の利子相当額を5年に配る計算は、この教材ですでに2回出てきた形と同じだ。
1つは償却原価法。 額面1,000,000円の社債を970,000円で買ったときの差30,000円を、 5年で割って年6,000円ずつ有価証券利息にした。 あちらは受け取る側の利息を配り、こちらは払う側の利息を配る。向きが逆なだけで発想は同じ。
もう1つは減価償却。 一度に払った(あるいは払う)金額を、使う期間に配る。 リース資産5,400,000円を5年で割って年1,080,000円にするのは、まさに減価償却そのものだ。
つまりリースの1年分の処理は、償却原価法と減価償却を同時にやっていると言える。 利子相当額の配分がリース債務の側、減価償却がリース資産の側で、左右で別々に動く。
で、幹の話に戻ると、新しい計算を覚えているのではなく、 すでに知っている2つの配り方を、資産と負債の両側で同時に使っているだけだ。
条件をもう一度置く。 リース料 年1,200,000円 × 5年(毎年3月31日に当座預金から後払い)、 リース料総額6,000,000円、見積現金購入価額5,400,000円、 所有権移転外なのでリース期間5年・残存価額ゼロ・定額法で償却。 利子相当額の配分は定額法(600,000 ÷ 5 = 年120,000円)。 話を単純にするため、契約日は3期目の期首(2028年4月1日)とする。
① 利子抜き法
| 年度 | 期首リース債務 | 支払額 | うち利息 | うち元本返済 | 期末リース債務 | 減価償却費 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3期目 | 5,400,000 | 1,200,000 | 120,000 | 1,080,000 | 4,320,000 | 1,080,000 |
| 4期目 | 4,320,000 | 1,200,000 | 120,000 | 1,080,000 | 3,240,000 | 1,080,000 |
| 5期目 | 3,240,000 | 1,200,000 | 120,000 | 1,080,000 | 2,160,000 | 1,080,000 |
| 6期目 | 2,160,000 | 1,200,000 | 120,000 | 1,080,000 | 1,080,000 | 1,080,000 |
| 7期目 | 1,080,000 | 1,200,000 | 120,000 | 1,080,000 | 0 | 1,080,000 |
② 利子込み法
| 年度 | 期首リース債務 | 支払額 | 期末リース債務 | 減価償却費 |
|---|---|---|---|---|
| 3期目 | 6,000,000 | 1,200,000 | 4,800,000 | 1,200,000 |
| 4期目 | 4,800,000 | 1,200,000 | 3,600,000 | 1,200,000 |
| 5期目 | 3,600,000 | 1,200,000 | 2,400,000 | 1,200,000 |
| 6期目 | 2,400,000 | 1,200,000 | 1,200,000 | 1,200,000 |
| 7期目 | 1,200,000 | 1,200,000 | 0 | 1,200,000 |
損益計算書に出る金額を比べる。
| 利子抜き法 | 利子込み法 | |
|---|---|---|
| 減価償却費(販売費及び一般管理費) | 1,080,000 | 1,200,000 |
| 支払利息(営業外費用) | 120,000 | ― |
| 費用の合計 | 1,200,000 | 1,200,000 |
| 営業利益への影響 | −1,080,000 | −1,200,000 |
| 経常利益への影響 | −1,200,000 | −1,200,000 |
費用の合計はどちらも1,200,000円で同じになる。定額法どうしで配っているからだ。 違うのは、その1,200,000円が営業利益の上で引かれるか、下で引かれるか。 利子抜き法のほうが営業利益が120,000円多く出る。そして貸借対照表では、 利子抜き法のリース資産・リース債務が利子込み法より600,000円小さく立つ。
利子抜き法で、3期目の1年分を数字で通す。
一般化すると、当期の利息は (リース料総額 − 見積現金購入価額)÷ リース期間 × 当期の月数 ÷ 12、 当期の減価償却費は 見積現金購入価額 ÷ リース期間 × 当期の月数 ÷ 12。 利子込み法なら手順3・4が消え、手順5の分子がリース料総額に変わるだけで、残りは同じ形になる。
利子抜き法(原則)
4/ 1 (借) リース資産 5,400,000 (貸) リース債務 5,400,000
3/31 (借) リース債務 1,080,000 (貸) 当座預金 1,200,000
(借) 支 払 利 息 120,000
3/31 (借) 減価償却費 1,080,000 (貸) リース資産減価償却累計額 1,080,000
利子込み法(簡便法)
4/ 1 (借) リース資産 6,000,000 (貸) リース債務 6,000,000
3/31 (借) リース債務 1,200,000 (貸) 当座預金 1,200,000
3/31 (借) 減価償却費 1,200,000 (貸) リース資産減価償却累計額 1,200,000
対抗案1:利子抜き法をやめて、全部を利子込み法にそろえる
計算は確かに簡単になる。壊れるのは営業利益の意味だ。 包装機のリースを利子込み法で処理すると、減価償却費が1,200,000円になり、 本来は営業外費用である利息120,000円が販売費及び一般管理費に混ざる。 みずほ食品の営業利益が仮に2,000,000円だとすると、 利子抜き法なら2,000,000円、利子込み法なら1,880,000円になる。 麺を作って売る力は何も変わっていないのに、営業利益が120,000円少なく出る。 同業の会社が借入金で機械を買っていれば、そちらは利息が営業外費用に入るので、 営業利益どうしを比べると、リースを使った会社だけが不利に見える。 利益の段階を分けている意味は、こういう比較をするためにある。
対抗案2:利子込み法をやめて、常に利子抜き法だけにする
こちらのほうが理屈は正しい。それでも簡便法が残っているのは、 利子相当額の配分が毎期・契約ごとに発生するからだ。 みずほ食品のような会社が、複合機・フォークリフト・配送車・冷凍庫と リース契約を10本持てば、10本それぞれで見積現金購入価額を取り、 利子相当額を計算し、毎期の按分表を作り続けることになる。 1本あたりの利子相当額が数万円のとき、その数万円を正しく分けるために 経理担当者が何日も使うのは、得られる情報に見合わない。 金額が小さく、契約が短く、会社の規模から見て重要でないものは、 簡便な方法で継続処理するほうが、決算が期限内に上がるという実利がある。 どちらを使うかは会社が選び、いったん選んだら毎期同じ方法を続ける。 期ごとに切り替えると、期間比較ができなくなるからだ。
Q. 利子抜き法と利子込み法で、5年間の合計はどうなるのか。 A. 費用の合計はどちらも6,000,000円で完全に一致する。 利子抜き法は減価償却費5,400,000 + 支払利息600,000、利子込み法は減価償却費6,000,000。 配り方と置き場所が違うだけで、総額は同じだ。 これは有価証券の洗替法と切放法の関係と同じで、 通算では一致し、各期への配り方だけが違うという形の論点になる。
Q. リース資産の減価償却は、なぜ残存価額をゼロにするのか。 A. 所有権移転外のリースでは、期間が終われば物件を貸手に返す。 みずほ食品の手元には何も残らないので、残しておくべき価値がない。 逆に所有権が移るタイプなら、期間終了後も自分の資産として使い続けるので、 自社所有の固定資産と同じく経済的耐用年数で償却し、残存価額の扱いも自社基準に合わせる。 返すか、残るかが、償却の条件を決めている。
Q. リース料を前払いする契約だったら、どこが変わるのか。 A. 契約日にいきなり1回目を払うので、その分だけリース債務が即座に減る。 利子抜き法なら、契約日に立てた5,400,000円から初回支払額のうちの元本相当が引かれ、 残高に対して利息を配ることになる。 試験では「毎年3月31日に後払い」のように支払時期が明示されるので、 後払いか前払いかを最初に確認するのが、金額を合わせる近道になる。
flowchart TD
A[所有権移転外ファイナンス・リース] --> B{利子相当額を抜くか}
B -- 抜く(原則) --> C[利子抜き法<br/>資産・負債=見積現金購入価額]
B -- 抜かない(簡便) --> D[利子込み法<br/>資産・負債=リース料総額]
C --> E[支払利息<br/>営業外費用]
C --> F[減価償却費<br/>リース期間・残存ゼロ]
D --> F
F --> G[固定資産の減価償却<br/>boki2-ch05-s01]
E --> H[損益計算書の区分<br/>boki2-ch01-s02]
C --> I[利息の期間配分は償却原価法と同じ形<br/>boki2-ch04-s03]
正解: 2
正解: 3
正解: 1
正解: 4