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第1章 3級から2級へ — 増えるのは「他社」「時間」「見積り」の3方向

boki2-ch01 / 幹 約35分・枝 約17分

2028年4月。みずほ食品は3期目に入った。創業からの2年で、揖斐川沿いの小さな製麺所は形が変わっている。 大垣の工場を増設して建物を持ち、彦根の乾麺メーカー「湖北麺業株式会社」の株式を買って子会社にし、 台湾のバイヤーに麺を輸出し始めた。従業員も増え、退職金の制度を作った。

七海(経理・28)は3級で覚えた仕訳のやり方で1期目・2期目を乗り切ったが、3期目に入ってから 「習ったどの型にも当てはまらない取引」が毎月出てくるようになった。台湾に売った代金は米ドルで入る。 湖北麺業とのあいだで麺を売り買いしている。工場のフォークリフトはリースで借りた。 どれも3級のテキストには書いていない。

この章では仕訳をほとんど書かない。書くのは地図だ。 2級で増える論点は、ばらばらの新ネタが40個あるのではなく、 3つの方向にしか増えていない。その3方向を先に押さえると、以降の11章が 「いま自分はどの方向の話をしているのか」で位置づけられるようになる。

小話:「経常」という言葉は、戦後の日本が発明した

損益計算書を段階に切る発想そのものは欧米にもあるが、 ordinary profit を「経常利益」という名前で決算書の中心に据えたのは日本の会計慣行の特徴だとされる。 戦後、企業会計原則が整えられていく過程で、企業の実力を測る指標として 「臨時の損益を除いた、毎期繰り返し発生する利益」を独立の段階として置いた。 新聞の決算記事がいまも「経常増益」「経常減益」という見出しを使うのは、この名残だ。

欧米の損益計算書では営業利益(operating income)と当期純利益が中心で、 経常利益に相当する段は必ずしも置かれない。国際会計基準を採用する日本企業の決算短信で 「経常利益 −」という表記を見かけるのは、様式そのものにその段が無いためで、 業績が悪いからではない。

経常という熟語自体は「経つねに常つねに」で、変わらず続くもの、という意味の古い言葉。 毎年繰り返すものだけを集めた利益、という命名は、 実は言葉の意味をそのまま使っている。

だから経常利益の位置を覚えるときは、段の順番を暗記するより 「ここから下は今年だけの話」というとして覚えるほうが早い。 その線の上にあるのが本業と財務、下にあるのが臨時と税金だ。

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小話:子会社の「子」は、いつから使われたか

親会社・子会社という言い方は、英語の parent company / subsidiary company の訳から来ている。 subsidiary はラテン語 subsidium(後方に控える予備の部隊)が語源で、 もとは援軍・補助を意味した。ローマ軍で前線の後ろに控えていた部隊のことを指し、 そこから「補助的なもの」「従属するもの」へ意味が広がった。 つまり英語の側は「支える側・従う側」という関係を名前にしている。

日本語の「子会社」は、この従属関係を親子にたとえた訳語で、 血縁のイメージが強い分、直感的ではある。ただしこの直感が誤解も生む。 親子は生涯変わらないが、親会社・子会社の関係は 議決権の過半数を持っているかどうかという条件で決まり、株を売れば翌日には他人になる。 支配していることが要件であって、生んだかどうかは関係しない。

※覚え方としては、「親会社は子会社の意思決定を握っている側」と押さえておくと、 第12章で出てくる「支配」の定義とずれない。

だから、みずほ食品が湖北麺業の株式を70%持った瞬間に決算書の作り方が変わるのは、 出資したからではなく、相手の経営を動かせる立場になったからだ。

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2級で何が増えるのか(全体地図)

boki2-ch01-s01 / 幹 16分・枝 8分

3期目の4月、七海は税理士から「そろそろ決算書の作り方が変わりますよ」と言われた。 理由を聞くと、返ってきたのは3つだった。子会社ができたこと、外貨と長期契約が入ってきたこと、 そして退職金や貸倒れのようにまだ起きていない支出を見積もる必要が出てきたこと

この3つが、そのまま2級で増える論点の3方向になっている。

方向1:他社が絡む。 3級のみずほ食品は、自社の帳面だけを閉じて見ていればよかった。 3期目は違う。湖北麺業という別法人の帳面が、みずほ食品の成績に影響する。 リースは相手の会社が持っている機械を使う。有価証券は他社の株や社債を持つ。 支店を出せば、同じ会社の中に2冊の帳簿ができる。 **「自社の外にある帳面をどう自分の数字に取り込むか」**が、この方向のテーマになる。

方向2:時間のズレを扱う。 3級でも前払費用・未払費用という形で時間のズレは出てきたが、 ズレるのは1年以内の家賃や利息くらいだった。2級では、代金をもらう権利が段階的に生まれたり (契約資産)、為替レートが取引の日と決済の日と決算の日で3回変わったり、 会計の利益と税金の所得が数年かけて一致していったり(税効果会計)と、 ズレが年をまたぎ、金額そのものを変える

方向3:見積りが増える。 3級で見積もったのは貸倒引当金だけだった。2級では 退職給付・賞与・修繕・商品保証と引当金が4種類に増え、貸倒れの見積り方も相手の状態で3通りに分かれ、 売った商品のうち返品されそうな分まで見積もる(返金負債)。

【要請】 なぜ2級でこの3方向が増えるのか。3級の帳面は「1人の商人が、自分の財布の出入りを、 確定した金額で記録する」道具だった。会社が大きくなり、株主・銀行・取引先という 自分以外の読み手が決算書を使って判断を始めた瞬間、それでは足りなくなる。 グループ全体でいくら稼いだのか、来年以降にいくら払う約束を抱えているのか、 確定していなくてもいま分かる範囲で見せることが要請される。2級で増えるのは技法ではなく、 「誰に何を見せるか」の水準だと考えるといい。

【必然】 ただし、増えても壊れないものが1つある。借方合計=貸方合計は最後まで変わらない。 連結だろうと外貨だろうと、1つの出来事を原因と結果の2面で書く構造は同じで、 これは論理で閉じている(boki3-ch01-s01)。 新しい論点で手が止まったときは、まず「何が増えて何が減ったか」の2面に戻す。

🔧 実務枝 — 与信の現場でも「3方向」で決算書を見ている(約5分)

金融機関やリース会社が取引先の決算書を読むとき、実は同じ3方向を見ている。 1つ目は「他社」。関係会社との取引がどれだけあるか、グループ内で売上を回していないか。 単体の決算書だけを見て評価すると、グループ内取引で膨らませた売上を実力と誤認する。 だから連結決算書がある会社では、単体と連結の両方を並べて見る。

2つ目は「時間」。売掛金の回収サイトが伸びていないか、長期の前受けを取り崩して 売上に立てていないか。利益は出ているのに現金が増えない会社は、たいてい時間のズレのところで 無理をしている。

3つ目は「見積り」。ここがいちばん経営者の意思が入る。貸倒引当金を積まない、 退職給付の見積りを甘くする、といった操作は、利益をその年だけ良く見せる。 審査で「引当は十分か」を必ず聞かれるのは、見積りが利益の調整弁になりうるからだ。

で、幹の話に戻ると、2級で増える3方向は試験のための分類ではなく、 決算書を外から読む人が実際に見ている3か所とそのまま重なっている。

具体例:3期目に起きた「3級では書けない」3件

みずほ食品の3期目に実際に起きたことを、方向ごとに並べる。

日付 出来事 方向 3級で困る点 扱う章
2028/4/1 湖北麺業の株式の70%を 4,000,000円で取得 他社 買っただけなのに、相手の売上や利益をどう見るのか分からない 第12章
2028/7/10 台湾のバイヤーへ 10,000米ドルで輸出、代金は9月入金 時間 売った日と入金日でレートが違い、いくらの売上か決まらない 第8章
2029/3/31 従業員6名分の退職金 300,000円を当期負担分として計上 見積り 誰にいつ払うか未確定の金額を、なぜ今年の費用にできるのか分からない 第7章

3件とも、3級の道具では「仕訳が切れない」のではなく、切ってよいかどうかの判断がつかない。 2級で学ぶのは新しい仕訳の形よりも、この判断の基準のほうだ。

参考までに、3期目のみずほ食品はこの規模になっている(詳しい様式は次の節)。

項目 1期目 3期目
売上高 11,500,000 34,000,000
当期純利益 800,000 1,750,000
資産合計 5,900,000 21,250,000
従業員 2名 8名

用語カード

用語カード:会計上の見積り term:kaikeijomitsumori

手順

新しい論点に出会ったとき、どの方向の話かを判定する。順に3つ聞けばよい。

  1. 自社以外の帳面が出てくるか。 出てくるなら方向1(他社)。 子会社・支店・リース会社・株式の発行会社。処理の目的は「相手の数字をどう自分に取り込むか」。
  2. 金額が決まる時点と、お金が動く時点がずれているか。 ずれているなら方向2(時間)。 契約資産・外貨・税効果・リース料の利息部分。処理の目的は「どの時点の金額で測るか」。
  3. 金額がまだ確定していないのに計上するか。 するなら方向3(見積り)。 引当金・貸倒見積・返金負債。処理の目的は「何を根拠に置くか」。

例で通す。「ファイナンス・リースで借りた機械を自社の資産に載せる」は、 相手(リース会社)の資産を自分の帳面に取り込む話なので方向1。同時に、 リース料に含まれる利息を期間に配分するので方向2でもある。 2つの方向にまたがる論点ほど、本試験で問われる。リース・収益認識・連結がその代表だ。

仕訳の型

3方向を、それぞれ1本の仕訳で見ておく。いまは意味が分からなくてよい。形だけ見る。

方向1(他社) 湖北麺業の株式70%を取得
     (借) 子会社株式 4,000,000   (貸) 当座預金 4,000,000

方向2(時間) 2品のうち1品だけ納品、代金請求はまだできない
     (借) 契約資産    500,000   (貸) 売   上   500,000

方向3(見積り) 当期に負担すべき退職金を見積計上
     (借) 退職給付費用 300,000   (貸) 退職給付引当金 300,000

3本とも、左は「何になったか」、右は「どこから来たか/何を負ったか」で揃っている。 2級でも、この足場は動かない。

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:子会社の数字は無視して、自社の決算書だけ作る

みずほ食品単体の3期目は売上 34,000,000、当期純利益 1,750,000。 だが湖北麺業は同じ期に売上 18,000,000、当期純損失 △2,000,000 を出していたとする。 株式の70%を持っている以上、その損失の大半は最終的にみずほ食品の株主の負担になる。 単体だけを見せると、グループとしては 1,750,000 − 2,000,000×70% = 350,000 しか 残っていないのに、1,750,000 稼いだ会社に見える。 さらに悪いのは、みずほ食品が湖北麺業に麺を 5,000,000 売っていた場合で、 グループ内で右から左に動かしただけの 5,000,000 が売上に混ざる。 外部の読み手が実力を測れなくなるので、連結という手続きが要る(第12章)。

対抗案2:見積りはやめて、確定した金額だけ計上する

退職給付 300,000 を計上しないとすると、3期目の当期純利益は 1,750,000 + 300,000 = 2,050,000 になる。 きれいな数字に見えるが、8年後に退職者が出て 2,400,000 をまとめて払う年が来る。 その年だけ費用が 2,400,000 積み上がり、単年で赤字になる。 8年かけて発生していた負担を、1年に押し込んだことになり、 どの年の成績も実態とずれる。3級で減価償却を習った理由(買った年だけ赤字にしない)と まったく同じ理屈が、支払い側にも当てはまる。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 3方向のうち、どれから手をつけるべきか。 A. 「時間」から入るのが早い。収益認識(第2章)は本試験の第1問で毎回出るうえ、 契約資産・契約負債の考え方がリース・外貨・税効果の下地になる。 「他社」(連結)は配点が大きいが手続きが多く、時間の感覚がないと途中で迷う。 「見積り」は各章に散らばっているので、他の2方向を進めながら拾えばいい。

Q. 確定していない金額を決算書に載せてよいのか。それは嘘の数字ではないのか。 A. 嘘にならない条件が2つある。①金額を合理的に見積もれること、 ②その原因となる事実がすでに当期までに起きていること。 退職給付は、今年働いてもらった事実がすでにあるので条件を満たす。 逆に「来年新しい機械を買う予定だから費用を積む」は、原因となる事実が起きていないので載せられない。 条件を整理したものが引当金の4要件で、第7章で正面から扱う。

Q. 工業簿記もあるのに、商業簿記だけでこんなに増えて間に合うのか。 A. 本試験は商業簿記60点・工業簿記40点で、工業簿記のほうが範囲が狭く点が安定する。 商業簿記は「第1問の仕訳15点」「第2問の個別論点20点」「第3問の財務諸表25点」に分かれていて、 第1問と第3問はこの12章の内容が直接効く。まず第3問で使う財務諸表の様式(次の節)を押さえると、 以降の各章の処理が「最後にどこに載るか」で結び付く。

関連マップ

flowchart TD
  R[3級<br/>自社だけ・確定額だけ] --> A[方向1 他社が絡む]
  R --> B[方向2 時間のズレ]
  R --> C[方向3 見積りが増える]
  A --> A1[有価証券 ch04]
  A --> A2[リース ch06]
  A --> A3[本支店 ch11]
  A --> A4[連結 ch12]
  B --> B1[収益認識 ch02]
  B --> B2[固定資産 ch05]
  B --> B3[外貨建取引 ch08]
  B --> B4[税効果会計 ch09]
  C --> C1[債権の貸倒見積 ch03]
  C --> C2[引当金 ch07]
  A --> D[財務諸表の様式 ch01-s02]
  B --> D
  C --> D

財務諸表の様式(報告式・区分表示)

boki2-ch01-s02 / 幹 19分・枝 9分

3期目の決算を終えて、七海は大垣中央銀行に決算書を持っていった。 支店の担当者が最初に開いたのは損益計算書で、指で追ったのは いちばん下の当期純利益ではなく、上から3段目だった。 「営業利益が 2,700,000 ですね。ここが本業の力です」。

3級の損益計算書は、左に費用を全部並べ、右に収益を全部並べて、差額を当期純利益とする形だった。 それでも「1年でいくら儲かったか」は分かる。分からないのは、その儲けがどこから来たのかだ。 麺を作って売って稼いだのか、たまたま持っていた株が値上がりしたのか、 工場の土地を売った利益なのか。1,750,000 という1つの数字では区別がつかない。

【要請】 そこで2級の損益計算書は、上から順に 売上総利益 → 営業利益 → 経常利益 → 税引前当期純利益 → 当期純利益と、 利益を5段階に切って並べる。切る位置には意味がある。 売上総利益までが「商品そのものの儲け」、営業利益までが「本業の儲け」、 経常利益までが「毎年繰り返し起きること全部の儲け」、その先が「今年だけの特殊事情」。 外の読み手が「来年も同じだけ稼げそうか」を判断するために、 繰り返すものと繰り返さないものを分けて見せることが要請される。

【由来】 この上から順に積み下ろしていく形を報告式という。 3級の左右に並べる形は勘定式で、こちらは帳簿の勘定口座(借方・貸方)の形をそのまま 紙に写したもの。もともとは帳簿の写しだったので左右に並んだ。 外部への報告書として独立した書類になるにつれ、 帳簿の形をなぞる必要がなくなり、読み手が上から読める報告式が主流になった。 貸借対照表は残高の対照という性質上、いまも勘定式で示されることが多いが、 損益計算書はほぼ報告式で作られる。

🔧 実務枝 — 営業利益と経常利益、与信ではどちらを見るか(約6分)

リースや融資の審査でよく聞かれるのが「営業利益は出ているか」だ。理由は単純で、 営業利益は本業だけの成績だからだ。売上総利益から販売費及び一般管理費(人件費・家賃・ 減価償却費・広告費)を引いた残りで、ここがマイナスなら、商売の仕組みそのものが赤字ということになる。 持っている土地を売って穴を埋めても、来年また同じ穴があく。

では経常利益は何を足しているのか。営業外収益(受取利息・受取配当金・為替差益)と 営業外費用(支払利息・手形売却損・為替差損)だ。ここに入るのは 本業ではないが毎年繰り返し起きること、実質的にはほぼ財務活動の損益になる。 だから経常利益は「本業+資金繰りの実力」を示す。

見方の使い分けはこうなる。営業利益が黒字で経常利益が赤字なら、 商売は回っているが借入が重すぎる。金利負担を減らせば助かる可能性がある。 逆に営業利益が赤字で経常利益が黒字なら、本業が沈んでいるのを 一時的な受取配当などで埋めている状態で、こちらのほうが深刻に見る。 みずほ食品は営業利益 2,700,000、支払利息 180,000 なので、 利息を営業利益で 15倍カバーできている。インタレスト・カバレッジ・レシオと呼ばれる見方で、 一般に2倍を下回ると返済余力が薄いとされる。

で、幹の話に戻ると、段階利益をわざわざ5つに切るのは表を整えるためではなく、 どの段階で稼いでいるかによって、外の読み手の判断が変わるからだ。

具体例:みずほ食品 第3期の報告式損益計算書

損益計算書
みずほ食品株式会社   2028年4月1日 〜 2029年3月31日        (単位:円)

Ⅰ 売上高                                     34,000,000
Ⅱ 売上原価                                   21,600,000
      売上総利益                              12,400,000
Ⅲ 販売費及び一般管理費
      給料           5,200,000
      支払家賃       2,400,000
      減価償却費       800,000
      貸倒引当金繰入     60,000
      その他         1,240,000   合計          9,700,000
      営業利益                                 2,700,000
Ⅳ 営業外収益
      受取利息           5,000
      為替差益         120,000                  125,000
Ⅴ 営業外費用
      支払利息         180,000
      手形売却損        45,000                  225,000
      経常利益                                 2,600,000
Ⅵ 特別利益   固定資産売却益                      150,000
Ⅶ 特別損失   固定資産除却損                      250,000
      税引前当期純利益                          2,500,000
      法人税、住民税及び事業税                     750,000
      当期純利益                               1,750,000

同じ会社の貸借対照表は、資産を流動/固定に、負債を流動/固定に区分して並べる。

資産の部 金額 負債・純資産の部 金額
Ⅰ 流動資産 Ⅰ 流動負債
現金預金 4,200,000 支払手形 900,000
受取手形 1,100,000 買掛金 2,300,000
売掛金 3,900,000 短期借入金 1,000,000
貸倒引当金 △100,000 未払法人税等 400,000
商品 1,800,000 流動負債合計 4,600,000
流動資産合計 10,900,000 Ⅱ 固定負債
Ⅱ 固定資産 長期借入金 6,000,000
建物 6,000,000 退職給付引当金 1,150,000
減価償却累計額 △600,000 固定負債合計 7,150,000
備品 1,200,000 負債合計 11,750,000
減価償却累計額 △750,000 資本金 5,000,000
子会社株式 4,000,000 資本準備金 1,000,000
長期貸付金 500,000 利益準備金 200,000
固定資産合計 10,350,000 繰越利益剰余金 3,300,000
資産合計 21,250,000 負債・純資産合計 21,250,000

流動と固定の線引きは2つの基準を順に当てる。まず正常営業循環基準: 仕入 → 在庫 → 売上 → 回収というふだんの商売の輪の中にあるものは、 回収まで何か月かかっても全部流動(売掛金・受取手形・商品・買掛金・支払手形)。 輪の外にあるものだけ、次に**1年基準(ワン・イヤー・ルール)**を当て、 決算日の翌日から1年以内に決済されるなら流動、1年を超えるなら固定にする。 だから、みずほ食品の長期貸付金 500,000 は商売の輪の外で回収が1年超なので固定資産、 短期借入金 1,000,000 は輪の外だが1年以内なので流動負債になる。

用語カード

用語カード:報告式 term:hokokushiki
用語カード:経常利益 term:keijorieki

手順

決算整理後の残高から、報告式の損益計算書を組む。3期目の数字で1回通す。

  1. 売上高を置く。 34,000,000。値引・返品を引いた純額で置く。
  2. 売上原価を引いて売上総利益を出す。 21,600,000 を引いて 12,400,000。 三分法なら「期首商品+当期仕入−期末商品」で計算した金額がここに来る。
  3. 販売費及び一般管理費を引いて営業利益を出す。 給料・支払家賃・減価償却費・ 貸倒引当金繰入・その他の合計 9,700,000 を引いて 2,700,000。 ここに入るのは本業を回すためにかかった費用だけ。支払利息は入らない。
  4. 営業外収益を足し、営業外費用を引いて経常利益を出す。 2,700,000 + 125,000 − 225,000 = 2,600,000。
  5. 特別利益を足し、特別損失を引いて税引前当期純利益を出す。 2,600,000 + 150,000 − 250,000 = 2,500,000。
  6. 法人税等を引いて当期純利益を出す。 2,500,000 − 750,000 = 1,750,000。

一般化すると、判断は毎回この2問で足りる。 ①本業か。 本業なら売上高・売上原価・販売費及び一般管理費のどれか。 ②毎年繰り返すか。 本業ではないが繰り返すなら営業外、繰り返さないなら特別。 迷いやすいのは受取家賃で、不動産賃貸を本業にしていない会社なら営業外収益に入る。

仕訳の型

同じ仕訳でも、相手の債権が何かによって載る区分が変わる。ここが2級らしいところだ。

3/31 売掛金・受取手形に対する貸倒引当金の設定
     (借) 貸倒引当金繰入 60,000   (貸) 貸倒引当金 60,000   → 販売費及び一般管理費

3/31 長期貸付金に対する貸倒引当金の設定
     (借) 貸倒引当金繰入 10,000   (貸) 貸倒引当金 10,000   → 営業外費用

3/31 法人税等の計上
     (借) 法人税等   750,000   (貸) 未払法人税等 750,000  → 税引前当期純利益の下

同じ仕訳でも表示区分が違うという現象は、2級の第3問(財務諸表作成)で 毎回どこかで問われる。仕訳を切ったら「これはP/Lのどの段に載るか」を必ずセットで考える。

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:3級と同じ勘定式のまま、段階を分けずに1つの利益だけ示す

みずほ食品の3期目を勘定式で書くと、費用の合計 32,250,000、収益の合計 34,275,000、 差額 1,750,000 が当期純利益、で終わる。数字は正しい。 だが、この年は固定資産売却益 150,000 と固定資産除却損 250,000 という 今年限りの出来事が混ざっている。読み手はこれを取り除けない。 仮に翌期の当期純利益が 1,600,000 に落ちたとき、本業が落ちたのか、 今年は売る資産がなかっただけなのかが判断できない。 経常利益で比べれば 2,600,000 → いくら、と繰り返す部分だけを並べられる。

対抗案2:貸借対照表で流動・固定を分けず、金額の大きい順に並べる

見た目は読みやすい。壊れるのは支払能力の判定だ。 みずほ食品は流動資産 10,900,000、流動負債 4,600,000 なので、 1年以内に用意すべき 4,600,000 に対して1年以内に現金化できる資産が 10,900,000 ある (流動比率 237%)。区分せずに「資産 21,250,000、負債 11,750,000」とだけ示すと、 資産の中身の 4,000,000 が子会社株式ですぐには売れないことが見えない。 1年以内に返す金と、1年以内に現金にできる資産を突き合わせられなくなる。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 販売費及び一般管理費は、なぜ「販売費」と「一般管理費」を1つの区分にまとめているのか。 A. どちらも本業を回すためにかかる費用で、営業利益を出すという目的では同じ扱いだから。 販売費は売るためにかかる費用(運賃・広告費・販売手数料)、一般管理費は 会社を維持するための費用(本社の給料・家賃・減価償却費)で、性格は違う。 だが分けても営業利益は変わらないので、表示は1つにまとめ、内訳で示す形が定着した。 なお、費用の性格を細かく分けたいときは注記や内訳書で示す。

Q. 為替差益が営業外収益なのは分かるが、輸出が本業なら営業収益ではないのか。 A. 輸出で麺を売った金額(円換算した売上高)は営業収益に入る。 為替差益は、その代金を回収するまでにレートが動いたことで生じた差額で、 麺を売って稼いだ分ではない。商品の儲けと為替の儲けを混ぜると、 売上総利益率が為替相場で上下してしまい、商売の実力が測れなくなる。 だから第8章の為替差損益は営業外に置く。

Q. 貸借対照表の子会社株式が固定資産なのはなぜか。株なのだから売ればすぐ現金になるのでは。 A. 売る目的で持っていないから。子会社株式は湖北麺業を支配し続けるために持つもので、 売ってしまえば子会社ではなくなる。何のために持っているかで区分が変わるのが 有価証券の考え方で、第4章の中心になる。 同じ株式でも、値上がり益を狙って持つ売買目的有価証券なら流動資産に入る。

関連マップ

flowchart TD
  S[決算整理後残高試算表] --> P[損益計算書 報告式]
  S --> B[貸借対照表 区分表示]
  P --> P1[売上総利益<br/>商品の儲け ch02]
  P1 --> P2[営業利益<br/>本業の儲け ch07]
  P2 --> P3[経常利益<br/>財務まで含む ch08]
  P3 --> P4[税引前当期純利益<br/>臨時損益 ch05]
  P4 --> P5[当期純利益 ch09]
  B --> B1[流動 / 固定<br/>正常営業循環基準と1年基準]
  B --> B2[純資産の部 ch10]
  P5 --> B2

確認問題

ある会社の当期の資料は次のとおりであった。売上高 34,000,000円、売上原価 21,600,000円、
販売費及び一般管理費 9,700,000円、受取利息 5,000円、為替差益 120,000円、支払利息 180,000円、
手形売却損 45,000円、固定資産売却益 150,000円、固定資産除却損 250,000円。
このとき、経常利益はいくらか。
  1. 2,700,000円
  2. 2,600,000円
  3. 2,500,000円
  4. 2,850,000円
答えと解説

正解: 2

正解の根拠: 売上総利益 12,400,000 − 販売費及び一般管理費 9,700,000 = 営業利益 2,700,000。これに営業外収益 125,000 を加え、営業外費用 225,000 を差し引いて 2,600,000 が経常利益。固定資産売却益・除却損は特別損益なので経常利益より下に置く。
誤答1: 2,700,000円は営業利益。営業外収益・営業外費用をまだ加減していない。
誤答3: 2,500,000円は税引前当期純利益。特別利益150,000と特別損失250,000まで加減してしまっている。
誤答4: 2,850,000円は営業利益に固定資産売却益150,000を足した数字。売却益は営業外ではなく特別利益で、しかも経常利益より下。

参照: boki2-ch01-s02 term:keijorieki

損益計算書の「販売費及び一般管理費」の区分に記載する項目として、正しいものはどれか。
  1. 支払利息
  2. 為替差損
  3. 貸倒引当金繰入(売掛金に対するもの)
  4. 固定資産除却損
答えと解説

正解: 3

正解の根拠: 売掛金は本業の商品売買から生まれた営業債権なので、その貸倒れの見積額は本業を回すための費用として販売費及び一般管理費に入る。営業利益を計算する段でこれを引く。
誤答1: 支払利息は資金調達に伴う費用で、本業の費用ではない。毎期繰り返すので営業外費用に入る。
誤答2: 為替差損も本業の商品の儲けではなく、決済までのレート変動による損失なので営業外費用。
誤答4: 固定資産除却損は毎期繰り返すとは限らない臨時の損失なので、特別損失に入る。

参照: boki2-ch01-s02 term:hokokushiki

貸借対照表における流動・固定の区分について、正しい説明はどれか。
  1. 商品や売掛金は、回収までに1年を超えても通常の営業の循環の中にあるため流動資産とする
  2. 回収期間にかかわらず、金額が大きい債権はすべて固定資産とする
  3. 貸付金は本業の外にある債権なので、期間にかかわらずすべて固定資産とする
  4. 支配目的で保有する子会社株式は、株式であるためすべて流動資産とする
答えと解説

正解: 1

正解の根拠: まず正常営業循環基準を当て、仕入から回収までの通常の営業の輪の中にあるものは期間を問わず流動とする。輪の外にあるものだけ、次に1年基準で流動か固定かを決める。
誤答2: 流動・固定の区分は金額の大小では決まらない。判断するのは営業の循環の中か外か、次に決済までの期間。
誤答3: 貸付金は営業の輪の外なので1年基準を当てる。1年以内に回収するものは短期貸付金として流動資産になる。
誤答4: 子会社株式は支配を続けるために保有するもので、売る前提がないため固定資産(投資その他の資産)に入る。

参照: boki2-ch01-s02

まだ支出が確定していない金額を当期の費用として計上できる場合の考え方として、最も適切なものはどれか。
  1. 経営者が来期の支出を予定していれば、金額にかかわらず当期の費用にできる
  2. 支出額が確定していない限り、いかなる場合も当期の費用にはできない
  3. 支出が翌期以降であれば、当期の費用ではなく翌期の費用として扱う
  4. 費用の原因となる事実が当期までに発生しており、かつ金額を合理的に見積もれる場合に計上する
答えと解説

正解: 4

正解の根拠: 会計上の見積りが認められるのは、原因となる事実がすでに当期までに起きていて、金額を合理的に見積もれるときに限られる。退職給付は当期の労働という事実が原因なので、支払いが将来でも当期の費用になる。
誤答1: 来期に予定しているだけでは、原因となる事実が当期に発生していない。将来の計画を当期の費用にはできない。
誤答2: 確定額しか計上できないとすると、支払いが起きた年だけ費用が集中し、各期の成績が実態とずれる。減価償却と同じ問題が起きる。
誤答3: 支出の時点ではなく原因の発生時点で費用を認識する。現金の動きに合わせると期間比較ができなくなる。

参照: boki2-ch01-s01 term:kaikeijomitsumori