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第5章 手形と電子記録債権 — 支払いを紙と記録に載せる

boki3-ch05 / 幹 約50分・枝 約27分

第4章で、みずほ食品は麺を掛けで売り、小麦粉を掛けで買った。 掛けは「いつ払うか」を口頭と請求書だけで決めた約束で、 実際、みずほ食品と大垣屋商店の間ではそれで何の問題も起きていない。

ところが9月に入って、大垣屋商店の番頭が別の紙を持ってきた。 約束手形と印刷された、金額と期日が書き込まれた1枚の証券だった。 「今月から、うちも手形でお願いすることになりまして」。

掛けで足りているところに、なぜわざわざ紙を1枚挟むのか。 この章はその問いから始まる。答えが分かると、 そのあとに出てくる電子記録債権が「同じ狙いを、紙をやめて実現したもの」だと一直線に見えてくる。 3つの節で、紙の手形・電子の記録・そして手形を使った金の貸し借り、の順に進む。

小話:「手形」は、もともと手の形だった

手形という言葉は、支払いの証券を指す前に、文字どおり手の形を指していた。 中世の日本では、文字を書けない者が証文に指や掌に墨を塗って押し、 本人であることを示す習慣があった。これを手形と呼んだ。 そこから、本人が確かに約束したことを示す書きつけ全般が手形と呼ばれるようになる。 関所を通るための「通行手形」も、この系統の言葉になる。

江戸期に入ると、大坂の商人の間で「振手形」「為替手形」といった 支払いを約束する証券が広く使われるようになった。 米の取引が全国規模で行われるなかで、現物の貨幣を運ばずに決済する必要が生まれ、 両替商を介した信用の仕組みが発達したためだとされる。 明治以降、西洋の手形法制を取り入れる際に、 既にあったこの「手形」という語が billnote の訳語として引き継がれた。

英語の promissory note は「約束の書面」で、 約束と書面という要素をそのまま並べている。 日本語の「約束手形」も同じ2語の組み立てになっていて、 訳語として素直に対応している珍しい例になる。

だから約束手形が掛けより強い債権として扱われるのは、 書式が厳格だからというより、本人が確かに約束した証拠という出自を 制度が引き継いでいるからだと見ると、不渡りの重さも腑に落ちる。

col:boki3-ch05-c1
小話:紙をやめるのに、20年かかった

電子記録債権法が施行されたのは2008年、でんさいネットが動き出したのは2013年になる。 議論が始まったのはさらに前で、 売掛債権を資金調達に使いやすくする仕組みが必要だ、という問題意識は 1990年代の終わりごろから出ていた。

なぜそんなに時間がかかったのか。 手形や売掛債権を担保にした融資には、昔から2つの壁があった。 1つは、その債権が本当に存在するのかを貸し手が確かめにくいこと。 架空の売掛金を担保に融資を受ける事件が繰り返し起きていた。 もう1つは、同じ債権が複数の相手に二重に譲渡される危険があること。 紙の証券なら現物を押さえられるが、売掛金にはその現物がない。

電子記録債権は、この2つを記録原簿という1つの台帳に権利を載せることで解決した。 存在も帰属も台帳を見れば分かるので、二重譲渡が起こらない。 逆に言えば、全国の金融機関が同じ台帳を共有する仕組みを作るのに、それだけの年月がかかった。

3級で覚えるのは「電子記録債権・電子記録債務」という2つの科目名だけだが、 その背後には、紙という現物に頼らずに権利の所在を証明するという難題がある。 手形という古い仕組みが長く生き延びたのは、 紙の現物が持つこの証明力が、それだけ強かったからでもある。

col:boki3-ch05-c2

約束手形(受取手形・支払手形)

boki3-ch05-s01 / 幹 18分・枝 10分

9月30日、大垣屋商店から受け取った紙には、こう書いてあった。 「金額 300,000円。支払期日 12月31日。支払場所 大垣中央銀行大垣支店。 上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引換えにお支払いいたします」。 振出人の欄には大垣屋商店の代表者名と印。

七海が最初に思ったのは「売掛金のままでよかったのでは」だった。 どちらも後で300,000円もらえる約束で、金額も相手も同じ。 それでも科目を受取手形に替える理由が3つある。

【必然】 1つ目は、期日が動かせなくなること。 掛けの支払期日は、当事者どうしの了解にすぎない。 「今月は苦しいのでもう1か月待ってほしい」と言われれば、断りにくいのが実情になる。 手形は違う。期日に決済されなければ不渡りになり、 半年のうちに2回不渡りを出すと銀行取引停止処分を受け、当座取引も貸出も止まる。 事実上、会社が続けられなくなる。だから手形の期日は、払う側が何をおいても守る日になる。 覚え方の取っ掛かりは「掛けは約束、手形は最後通牒」。

【要請】 2つ目は、権利を他人に渡せること。 手形は証券なので、裏に署名して他人へ譲り渡したり、 銀行に買い取ってもらって期日前に現金化したりできる(裏書譲渡・手形の割引)。 掛け代金にはこの道がない。会計の側から見ると、 同じ「後でもらえる権利」でも、換金できる速さと確実さがまるで違うことになる。 残高を見ただけでその違いが分かるように、科目を分けておく必要が出てくる。

【由来】 3つ目は歴史の側にある。手形という言葉は、 もともと本人であることを示す手の形(掌紋)や署名を指した語で、 証拠として差し出す書きつけ全般を「手形」と呼んだ。 そこから、支払いを約束した書きつけだけがこの名前を引き継いだ、という説明が一般的だ。 経緯は小話で回収する。

🔧 実務枝 — 不渡り情報は、どこまで伝わるか(約6分)

手形が期日に決済できないことを不渡りという。 このとき何が起きるかは、営業の現場で知っておく価値がある。

手形交換所(現在は電子交換所)を通じて不渡りの事実が参加金融機関へ通知され、 6か月以内に2回目を出すと銀行取引停止処分になる。 当座取引ができなくなるので小切手も手形も振り出せず、 新規の借入も止まる。事業を続けるのが極めて難しくなるため、 実務では「2回目を出した時点で事実上の倒産」と受け止められている。

重要なのは、この情報が取引先にも伝わることだ。 金融機関は不渡り情報を共有しているので、 みずほ食品が大垣中央銀行から融資を受けている状態で 大垣屋商店の手形が不渡りになれば、その事実は銀行の側でも把握される。 与信の現場で「手形をもらっているか」を確認するのは、 金額の保全だけでなく、相手の状態を測る物差しとしての意味もある。

一方で、この仕組みは手形にしか働かない。 電子記録債権にも支払不能の制度はあるが、 掛け代金の遅れには、こうした外部への波及が存在しない。

で、幹の話に戻ると、手形が掛けより強い債権とされるのは書式のせいではなく、 払わなかったときの制裁が制度として用意されているからだと押さえておけばいい。

🔗 隣枝 — 為替手形と、3級で出てこなくなったもの(約5分)

手形には約束手形のほかに為替手形がある。 約束手形が「私があなたに払います」という2者の約束なのに対し、 為替手形は「私に代わって、この人があなたに払います」という3者の指図になる。 売掛金と買掛金を同時に消せるので、かつては商取引で広く使われた。

3級の出題範囲では、この為替手形は扱われなくなっている。 同じく、受け取った手形を他人へ譲り渡す裏書譲渡と、 期日前に銀行へ持ち込んで現金化する手形の割引も、いまは2級側の論点になる。 理由は使用実態で、為替手形も裏書も実務での利用が大きく減った。

3級で押さえるのは、約束手形を受け取ったとき・振り出したとき・期日に決済したときの3場面だけになる。 それ以外の形は、必要になったときに2級で足せばよい。

で、幹の話に戻ると、この節で覚えるのは受取手形と支払手形の2科目と、 発生・決済の2場面という、意外に狭い範囲だと見ておけばいい。

具体例:1期目に動いた2枚の手形

みずほ食品の1期目に関わった約束手形は2枚だけだった。

日付 出来事 相手 金額 期日
9/30 売掛金の一部を、先方振出の約束手形で受取 大垣屋商店 300,000 12/31
12/31 期日に当座預金へ入金 300,000
10/15 買掛金の支払として、約束手形を振り出す 西美濃製粉 400,000 1/31
1/31 期日に当座預金から引き落とし 400,000

大事なのは、9月30日に新しい収益が生まれていないことだ。 麺を売ったのは9月より前で、そのときに売上900,000円のうちの一部として計上済みになっている。 9月30日に起きたのは、売掛金という権利が受取手形という別の権利に姿を変えただけだ。 第1章で見た「現金が製麺機に姿を変えた」のと、まったく同じ構造をしている。

10月15日も同じで、買掛金という義務が支払手形という別の義務に姿を変えている。 新しい仕入が発生したわけではないので、仕入勘定は動かない。

2枚とも期日が3月31日より前なので、1期目の決算日には手形が1枚も残っていない。 だから第1章の貸借対照表に受取手形も支払手形も載っていない。 もし12月31日の入金がなく期日が4月にずれていたら、 期末の受取手形300,000円は第8章の貸倒引当金の計算に含める必要が出てくる。

なお、手形の明細は受取手形記入帳・支払手形記入帳という補助記入帳で追う。 総勘定元帳の受取手形勘定は残高しか教えてくれないので、 「どの手形が、いつ期日で、誰の振出か」はこちらを見る(第2章)。

用語カード

用語カード:約束手形 term:yakusokutegata
用語カード:受取手形 term:uketoritegata
用語カード:支払手形 term:shiharaitegata

手順

9月30日から1月31日までを、順に追う。

  1. 手形を受け取ったのか、振り出したのかを言う。 受け取ったなら資産(受取手形)、 振り出したなら負債(支払手形)。ここで「うちが払う側か、もらう側か」を確かめる。
  2. その手形が、何の代わりに動いたのかを言う。 大垣屋商店の手形は売掛金の代わり、 西美濃製粉へ振り出した手形は買掛金の代わり。代わりに消える科目が必ず1つある
  3. 反対側に、消える科目を書く。 受取手形が借方に増えたなら、貸方は売掛金の減少。 支払手形が貸方に増えたなら、借方は買掛金の減少。
  4. 期日が来たら、当座預金と振り替える。 受け取った手形は入金されるので当座預金が増え、 受取手形が減る。振り出した手形は引き落とされるので当座預金が減り、支払手形が減る。

一般化すると、手形の仕訳は必ず2段構えになる。 発生の場面(債権債務が別の形に載り替わる)と、決済の場面(現預金と入れ替わる)の2つだけだ。 売上や仕入が動くのは、その前の商品の受渡しの時点で終わっている。

なお、商品を売ったその場で手形を受け取ることもある。 その場合は売掛金を経由せず「借方 受取手形/貸方 売上」となり、 発生の場面が売上の計上と重なるだけで、考え方は変わらない。

仕訳の型

9/30  (借) 受取手形 300,000   (貸) 売 掛 金 300,000
12/31 (借) 当座預金 300,000   (貸) 受取手形 300,000
10/15 (借) 買 掛 金 400,000   (貸) 支払手形 400,000
 1/31 (借) 支払手形 400,000   (貸) 当座預金 400,000

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:手形も掛けも同じ「後払い」なので、売掛金・買掛金のままにする

貸借は合うし、期日に入金されれば残高も同じになる。 壊れるのは、回収の確実さと期日の性格が消える点だ。 みずほ食品の期末の売掛金は900,000円で、第8章ではその2%を貸倒引当金として積んだ。 もし手形300,000円を売掛金に混ぜていたら、残高は1,200,000円になり、 同じ2%で引当金は24,000円。6,000円だけ余計に積むことになる。

金額の大小以上に問題なのは、期日の管理ができなくなることだ。 支払手形は、期日に当座預金の残高が足りなければ不渡りになる。 だから経理は「1月31日に400,000円を用意する」という予定を持っていなければならない。 買掛金に混ぜてしまうと、いつまでに何を用意すべきかが帳簿から読めなくなる。 科目を分けるのは、資金繰りの期限を帳簿に刻むためでもある。

対抗案2:手形を受け取ったときに売上を計上する

代金が確実になったのだから、そこで売上でよさそうに見える。 数字で追うと二重計上になる。大垣屋商店への麺の納品はすでに売上として計上済みで、 その代金が売掛金として残っている状態だった。 9月30日に売上300,000円を立てると、1期目の売上は11,500,000円ではなく11,800,000円になる。 実際に納めた麺は1袋も増えていないのに、である。 しかも売掛金300,000円が消えないまま残るので、期末の売掛金は1,200,000円に膨らむ。 売上を立てるのは商品を引き渡した1回だけという線を、第4章から引き続き守る必要がある。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 手形を受け取る側にとっては期日が固定されて有利だが、振り出す側に何の得があるのか。 A. 期日を先に延ばせるのが振出人の利点になる。 掛けなら翌月末払いのところを、手形なら3か月先・4か月先の期日で振り出せることが多い。 その間、手元の資金を仕入や設備に回せる。 受け取る側は期日が固定される代わりに回収が遅くなるので、 どちらが有利かは一方的には決まらない。 実務では、力関係の強い側が支払サイトを長く取る形になりやすく、 だからこそ支払期日の長期化は取引条件の問題として扱われる。

Q. 手形に収入印紙を貼るのはなぜか。仕訳ではどう扱うのか。 A. 約束手形は印紙税法上の課税文書で、記載金額が10万円を超えると 金額に応じた収入印紙を貼る必要がある。振り出す側の負担になる。 仕訳では、収入印紙を買った時点で租税公課(費用)として処理する。 決算日に未使用の印紙が残っていれば貯蔵品という資産へ振り替える(第12章)。 手形1枚を振り出すたびに実費がかかる、という点が、 次の節の電子記録債権が広まった理由の1つになっている。

Q. 期日に相手が払えなかったら、帳簿ではどうなるのか。 A. 3級では踏み込まないが、考え方は第8章と同じになる。 回収できないことが確定すれば、受取手形を消して貸倒引当金を取り崩すか貸倒損失にする。 不渡りになった手形は「不渡手形」という別の科目に振り替えて、 償還請求の手続きを進めながら回収を追う扱いを取ることもあるが、これは2級の論点になる。 3級では期日に決済される前提の2場面を確実に書けるようにしておけば足りる。

関連マップ

flowchart LR
  A[商品を引き渡す<br/>boki3-ch04-s02] --> B[売掛金]
  B -- 手形を受け取る --> C[受取手形]
  B -- 電子記録 --> D[電子記録債権<br/>boki3-ch05-s02]
  C -- 期日 --> E[当座預金<br/>boki3-ch03-s02]
  F[商品を受け取る] --> G[買掛金]
  G -- 手形を振り出す --> H[支払手形]
  H -- 期日 --> E
  C --> I[貸倒引当金の対象<br/>boki3-ch08-s01]
  C -.明細.-> J[受取手形記入帳<br/>boki3-ch02-s03]

電子記録債権・電子記録債務

boki3-ch05-s02 / 幹 17分・枝 9分

1月のはじめ、大垣中央銀行の担当者が事務所に来て、こう切り出した。 「でんさいに切り替えませんか。手形と同じことが、紙なしでできます」。

七海は前の節で手形の便利さを理解したばかりだった。 期日が固定され、譲渡もできる。それでいて、大垣屋商店との2枚のやりとりで 不便だった点も、はっきり数えられる。 印紙を貼るのに600円かかった。金庫に保管して期日まで失わないよう気を配った。 そして300,000円の手形を、200,000円と100,000円に分けて使うことはできなかった。

【要請】 電子記録債権は、この3つの不便をまとめて外すために作られた。 2008年に電子記録債権法が施行され、2013年に全国銀行協会が運営する「でんさいネット」が動き出した。 権利を紙ではなく電子債権記録機関の記録原簿に載せることで、 印紙税がかからず、紛失も盗難もなく、金額を分割して譲渡できるようになる。 覚え方の取っ掛かりは「手形の中身はそのまま、紙をやめた」。

【必然】 会計の扱いが手形とほぼ同じ形になるのは、権利の中身が同じだからだ。 発生記録によって「期日にいくら払う・もらう」という関係が成立し、 期日には銀行口座の間で自動的に決済される。 だから仕訳も、発生の場面で売掛金・買掛金から載り替え、 決済の場面で当座預金と入れ替わるという2段構えがそのまま踏襲される。

【由来】 科目名が長いのは、法律の名前をほぼそのまま持ってきているためだ。 電子記録債権法の定める「電子記録債権」を資産の科目名に、 その裏返しを「電子記録債務」として負債の科目名にしている。 手形が商慣習から生まれて名前が付いたのに対し、こちらは制度が先にあって名前が決まった科目になる。

🔧 実務枝 — でんさいが「手形の代わり」以上のものになる場面(約6分)

電子記録債権が手形と決定的に違うのは、分割できる点にある。

みずほ食品が大垣屋商店に対して300,000円の債権を持っているとする。 紙の手形なら、この300,000円は1枚の証券として一体になっていて、 100,000円分だけを仕入先への支払いに回すことはできない。 電子記録債権なら、100,000円と200,000円に分割して、 片方だけを譲渡したり、片方だけを金融機関に買い取ってもらったりできる。

資金調達の面でこれが効いてくる。売掛金を担保に融資を受けるのは、 債権の存在を証明する手間がかかるが、電子記録債権は記録原簿に権利が明示されているので、 金融機関が内容を確認しやすい。 中小企業が持つ売掛債権を資金化する手段として制度が整えられてきた背景には、 不動産担保に頼らない資金調達を広げるという政策的な狙いもある。

一方で、導入には取引先も同じネットワークに参加している必要がある。 自社だけが電子化しても、相手が紙の手形しか使わなければ切り替えられない。 普及が取引先の広がりに依存する点は、いまも残る制約になる。

で、幹の話に戻ると、電子記録債権は単なるペーパーレス化ではなく、 債権を分けて使えるようにしたところに本質がある、と押さえておけばいい。

🔗 隣枝 — 「発生記録」を誰が請求するか — 債務者請求方式と債権者請求方式(約4分)

電子記録債権は、記録原簿に発生記録がされて初めて生まれる。 この請求を誰がするかで2つの方式がある。

債務者請求方式は、払う側(債務者)が「私は誰にいくら、いつ払います」と請求する形で、 手形を振り出す動きにいちばん近い。でんさいネットの利用の大半はこちらになる。 債権者請求方式は、もらう側が請求し、債務者が5営業日以内に承諾して初めて成立する。 承諾がなければ発生しないので、一方的に債務を負わされることはない。

3級の出題では、どちらの方式かが問われることはまずない。 「発生記録が行われた」という事実があれば、 債権者側は電子記録債権、債務者側は電子記録債務を計上する、という点だけを押さえればよい。

で、幹の話に戻ると、仕訳を書くうえで必要なのは請求した人が誰かではなく、 自社が受け取る側か、払う側かの一点だけになる。

具体例:1期目の1月から3月

みずほ食品が電子記録に載せ替えたのは、次の2件だった。

日付 出来事 相手 金額 期日
1/20 売掛金について発生記録(債権者側) 大垣屋商店 200,000 3/20
3/20 期日に当座預金へ入金 200,000
2/10 買掛金について発生記録(債務者側) 西美濃製粉 250,000 3/10
3/10 期日に当座預金から引き落とし 250,000

見比べてほしいのは、前の節の手形の表とほとんど同じ形をしていることだ。 違うのは科目名だけで、動きは完全に対応している。 売掛金が電子記録債権に載り替わり、期日に当座預金へ。 買掛金が電子記録債務に載り替わり、期日に当座預金から。

そして手形と同じく、この2件も期日が3月31日より前なので、 1期目の決算日には残高がゼロになっている。 第1章の貸借対照表に電子記録債権・債務が載っていないのはそのためだ。

コストの面も見ておく。手形400,000円を振り出したときは 収入印紙400円分(10万円超100万円以下)を貼っている。 電子記録債務250,000円には印紙税がかからない。 その代わり、でんさいネットの利用手数料が発生する。 どちらが安いかは金額と件数で変わるが、印紙のように額面に比例して増えることはないので、 金額が大きくなるほど電子記録が有利になる。

用語カード

用語カード:電子記録債権 term:denshikirokusaiken
用語カード:電子記録債務 term:denshikirokusaimu

手順

3月20日の入金までを追う。前の節の手形と、手順が1対1で対応していることを確かめてほしい。

  1. 自社は受け取る側か、払う側かを言う。 大垣屋商店の件は受け取る側なので電子記録債権(資産)。 西美濃製粉の件は払う側なので電子記録債務(負債)。
  2. 何の代わりに載り替わったのかを言う。 大垣屋商店の件は売掛金、西美濃製粉の件は買掛金。 必ず、消える科目が1つある
  3. 反対側に、消える科目を書く。 借方に電子記録債権が増えるなら、貸方は売掛金の減少。
  4. 期日が来たら、当座預金と振り替える。

一般化すると、電子記録債権・債務の仕訳は 手形の仕訳の科目名だけを置き換えたものになる。 新しく覚えるのは科目名2つだけで、考え方は前の節がそのまま使える。

この「同じ形が科目を変えて繰り返される」構造は、 第4章の売掛金・買掛金から数えて3回目になる。 掛け・手形・電子記録の3つは、同じ権利義務を載せる器が違うだけだと見ると、 覚える量が一気に減る。

仕訳の型

1/20 (借) 電子記録債権 200,000   (貸) 売 掛 金 200,000
3/20 (借) 当座預金   200,000   (貸) 電子記録債権 200,000
2/10 (借) 買 掛 金   250,000   (貸) 電子記録債務 250,000
3/10 (借) 電子記録債務 250,000   (貸) 当座預金   250,000

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:電子記録に載せても、売掛金・買掛金のまま処理する

紙をやり取りしていないのだから科目を変える必要はない、という発想はありうる。 実際、貸借は合うし、期日に決済されれば残高も同じになる。 壊れるのは、期日の性格が消える点だ。

みずほ食品の2月10日の件で確かめる。 西美濃製粉への買掛金250,000円は、掛けのままなら「今月末までに払う」という了解にとどまる。 発生記録がされた瞬間、それは記録原簿に載った債務になり、 期日の3月10日に口座から自動的に引き落とされる。 残高が足りなければ支払不能となり、手形の不渡りと同様に、 一定回数を重ねると電子記録債権の利用が停止される。

つまり買掛金250,000円と電子記録債務250,000円は、 金額が同じでも資金繰りの上での重さがまったく違う。 3月10日に250,000円を用意しなければならない、という予定を帳簿に残すために科目を分ける。 前の節で支払手形を買掛金と分けたのと、同じ理由になる。

対抗案2:電子記録債権を受取手形として処理する

期日が固定され、譲渡もでき、決済も口座間で行われる。 性質がほとんど同じなのだから、既存の受取手形勘定に入れてしまえば科目を増やさずに済む。 これも残高としては成り立つ。

壊れるのは、外に見せたときになる。 受取手形の残高が並んでいれば、読む人は「手形を保有している」と読む。 手形には、期日前に銀行へ持ち込んで現金化する(割引)という換金手段があり、 裏書譲渡という支払手段もある。 電子記録債権には分割譲渡という別の手段があるが、紙の手形とは扱いが違う。 また、印紙税の有無や、不渡り時の手続きも異なる。 同じに見えるものを同じ科目にまとめると、違う点を説明できなくなる。 科目を分けておけば、貸借対照表を見た人が「この会社は電子記録に移行している」と読める。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 手形と電子記録債権、処理がほぼ同じなら科目を1つにまとめてもよかったのではないか。 A. 帳簿を作る側から見ればそのとおりで、実際に処理はほとんど変わらない。 分けている理由は、外の読み手に違いを伝えるためになる。 手形と電子記録債権では、期日前に現金化する手段も、 支払われなかったときの手続きも、印紙税の有無も違う。 残高が同じ100万円でも、どちらの形で持っているかで換金の道筋が変わる。 科目名は「中でどう処理するか」だけでなく「外にどう見えるか」で決まっている、 という点は第4章のクレジット売掛金と同じ考え方になる。

Q. 電子記録債権が分割できるのなら、期末の残高が半端な金額になることがあるのか。 A. ある。300,000円の債権のうち100,000円だけを譲渡すれば、 残る200,000円が期末の電子記録債権になる。 ただし3級の出題では、譲渡や割引を扱わないので、 発生した金額がそのまま期日に決済される形しか出てこない。 分割できるという性質は、なぜこの制度が作られたのかを理解するための背景として押さえておけば足りる。

Q. 「でんさい」と「電子記録債権」は同じものか。 A. 厳密には違う。電子記録債権は法律上の制度の名前で、 その記録を扱う電子債権記録機関は複数ある。 「でんさいネット」は全国銀行協会が設立した記録機関の1つで、 参加金融機関が多いため通称として広く使われている。 簿記で使う勘定科目は制度の名前のほうなので、 問題文にどちらの言葉が出てきても、計上する科目は電子記録債権・電子記録債務になる。

関連マップ

flowchart TD
  A[売掛金・買掛金<br/>boki3-ch04-s02] --> B{どの器に載せるか}
  B -- 掛けのまま --> C[売掛金・買掛金]
  B -- 紙の証券 --> D[受取手形・支払手形<br/>boki3-ch05-s01]
  B -- 記録原簿 --> E[電子記録債権・債務]
  D --> F[期日に当座預金で決済<br/>boki3-ch03-s02]
  E --> F
  C --> G[期末残高は貸倒引当金の対象<br/>boki3-ch08-s01]
  D --> G
  E --> G

手形貸付金・手形借入金

boki3-ch05-s03 / 幹 15分・枝 8分

2027年6月、2期目に入ったみずほ食品に、揖斐川フーズの専務がまた顔を出した。 第6章で見たとおり、1期目には500,000円を半年貸して、 3月1日に利息5,000円を付けて返してもらっている。今回は800,000円だという。

社長は貸すことにしたが、条件を1つ足した。 「今度は手形を書いてもらってええか」。 金額と期日を書いた約束手形を、借りる側が振り出して貸す側に渡す。 返済されれば手形は戻り、返済されなければ不渡りになる。

【要請】 金の貸し借りに手形を使うのは、回収の確実さを一段上げるためだ。 1期目のように借用証書だけで貸すと、返済が遅れたときに打つ手は督促と交渉しかない。 手形なら、期日に決済できなければ不渡りとなり、 この節の前半で見たとおり銀行取引停止処分につながる。 借りた側にとって、返済の優先順位が跳ね上がることになる。

【必然】 ところが、ここで科目の問題が起きる。 受け取った手形を受取手形に入れてしまうと、 商品を売った代金の手形と、金を貸した手形が同じ箱に混ざる。 性格はまったく違う。売上債権は本業の取引から生まれ、通常は数か月で回収される。 貸付は資金を融通したもので、相手の資金繰りが行き詰まれば真っ先に焦げ付く。 だから手形貸付金手形借入金という別の科目を用意する。 覚え方の取っ掛かりは「手形を受け取っても、中身が貸金なら貸付金の家」。

🔧 実務枝 — 手形貸付は、金融機関の融資の基本形だった(約5分)

銀行が事業者に短期の運転資金を貸すとき、長く使われてきたのが手形貸付という形式になる。 借りる側が銀行あてに約束手形を振り出し、銀行がそれを受け取って資金を渡す。 返済期日が来たら手形を決済し、必要なら新しい手形を振り出して借り換える。

この形が使われたのは、手続きが軽いからだ。 金銭消費貸借契約書を作る証書貸付に比べ、手形1枚で完結するので、 短期の資金を繰り返し出し入れするのに向いていた。 一方で、期日ごとに借り換えの判断が入るため、 銀行の側は取引先の状況を定期的に確かめる機会を持てる。

近年は手形を使わない証書貸付や当座貸越に置き換わってきているが、 「短期は手形、長期は証書」という言い方はいまも残っている。 第3章で見た当座借越も、機能としてはこの短期資金の枠にあたる。

で、幹の話に戻ると、手形貸付金・手形借入金という科目は 特殊な例外ではなく、短期資金のやりとりの標準的な形を映したものだと押さえておけばいい。

具体例:2期目の貸し借り

みずほ食品の2期目(2027/4/1〜2028/3/31)に起きた2件を追う。

日付 出来事 相手 元本 条件
6/1 手形を受け取って貸付(現金) 揖斐川フーズ 800,000 年2%・6か月・利息は返済時に受取
11/30 元利合計を現金で回収 揖斐川フーズ 808,000 受取利息 8,000
11/1 手形を振り出して借入 大垣中央銀行 1,500,000 年4%・1年・利息は差引かれて入金

貸付のほうから見る。800,000円を1年貸したら利息は 800,000 × 2% = 16,000円。 6か月なので半分の8,000円になる。11月30日に受け取るのは 800,000 + 8,000 = 808,000円。 考え方は第6章の500,000円の貸付とまったく同じで、 違うのは受け取った証拠が借用証書か約束手形かという点だけになる。

借入のほうは形が違う。1,500,000円に年4%で1年なので利息は60,000円。 この60,000円を先に差し引いて1,440,000円が当座預金に入金される。 返済は1年後に1,500,000円。 手元に入るのは1,440,000円なのに帳簿に立つ債務は1,500,000円で、 差の60,000円が最初から支払利息として費用になる。

なお、この2件はどちらも2期目の出来事なので、 第1章で見た1期目の貸借対照表には出てこない。 1期目の借入金1,500,000円は、4月8日に大垣中央銀行から証書で借りた2,000,000円の残りになる。

用語カード

用語カード:手形貸付金 term:tegatakashitsuke
用語カード:手形借入金 term:tegatakariire

手順

2件を、数字を追いながら通す。

  1. 手形が動いたら、まず「何の代わりか」を聞く。 商品売買の代金なら受取手形・支払手形。 金の貸し借りなら手形貸付金・手形借入金。ここで箱が決まる。
  2. 自社が貸した側か、借りた側かを言う。 貸した=資産、借りた=負債。
  3. 利息を計算する。 元本 × 年利率 × 月数 ÷ 12。 揖斐川フーズなら 800,000 × 2% × 6/12 = 8,000円。 大垣中央銀行なら 1,500,000 × 4% × 12/12 = 60,000円。
  4. 利息をいつ受け取る・払うのかを確かめる。 返済時にまとめてなら、返済の仕訳で利息を書く。 先に差し引かれるなら、借入の仕訳で支払利息を借方に立てる。

一般化すると、手形を使った貸し借りは 第6章の貸付金・借入金の処理の、科目名だけを置き換えたものになる。 利息の計算式も、元本と利息を分けて書くという原則も、そのまま同じだ。 新しいのは「利息を先に差し引かれる形がある」という1点だけになる。

仕訳の型

2027/6/1   (借) 手形貸付金 800,000   (貸) 現   金 800,000
2027/11/30 (借) 現   金 808,000   (貸) 手形貸付金 800,000
                                    (貸) 受取利息    8,000
2027/11/1  (借) 当座預金 1,440,000   (貸) 手形借入金 1,500,000
           (借) 支払利息   60,000

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:手形を受け取ったのだから、受取手形で処理する

証券としては同じ約束手形なので、素直な発想に見える。 壊れるのは、売上債権の指標と貸倒れの見積りになる。

みずほ食品の2期目で確かめる。 第8章によれば、2期目末の売掛金は1,200,000円で、 その2%にあたる24,000円を貸倒引当金のあるべき残高としていた。 もし6月1日の手形貸付800,000円を受取手形として計上し、 仮に期末まで残っていたとすると、売上債権は2,000,000円になる。 同じ2%を掛ければ40,000円で、16,000円だけ引当金が増える。

さらに、売上債権の回転期間も狂う。 2期目の売上を仮に13,000,000円とすると、 売上債権1,200,000円なら回収まで約33.7日、2,000,000円なら約56.2日。 麺の回収条件は1日も変わっていないのに、指標だけが22日悪化する。 第4章で売掛金と未収入金を分けたのと、完全に同じ理由になる。

対抗案2:利息を先に差し引かれた借入を、入金額1,440,000円で計上する

実際に入ってきたのは1,440,000円なのだから、それを負債にすればよいという発想はありうる。 数字で追うと、2つのことが同時に壊れる。

1つ目は、返済額と合わなくなること。1年後に返すのは1,500,000円で、 帳簿の手形借入金が1,440,000円しかなければ、返済時に60,000円の差が宙に浮く。 そこで60,000円を返済時の支払利息にすると、 費用が発生する期が1年ずれる。借りて使ったのは今期からなのに、費用は翌期に落ちる。

2つ目は、負債の額が実態より小さく見えること。 銀行に返す義務は1,500,000円であって1,440,000円ではない。 貸借対照表の負債が60,000円過少に出れば、 返済負担を測る指標もその分だけ甘く出る。 負う義務は額面で、受け取った現金との差は費用という切り分けが要る。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 利息を先に差し引く形は、実質の金利が表示より高くなるのではないか。 A. そのとおりで、手元に入るのは1,440,000円なのに1,500,000円を返すので、 実際に使えた金額に対する負担率は 60,000 ÷ 1,440,000 ≒ 4.17% になる。 表示の年4%より高い。これは割引方式と呼ばれる利息の取り方で、 借りる側から見れば、同じ表示金利でも後払いより負担が重くなる。 簿記の処理としては、額面を負債に立てて差額を支払利息にするだけだが、 表示金利と実質負担は一致しないという点は、資金調達を判断する場面で効いてくる。

Q. 1期目に揖斐川フーズへ貸したときは貸付金で、2期目は手形貸付金になる。同じ相手なのに科目が変わるのか。 A. 変わる。科目を決めているのは相手ではなく、権利をどの形で持っているかだからだ。 1期目は借用証書だけだったので貸付金、2期目は約束手形を受け取ったので手形貸付金になる。 同じ構図は第4章から続いていて、 同じ大垣屋商店に対する権利が、掛けなら売掛金、手形なら受取手形、 電子記録なら電子記録債権と、器に応じて名前を変えている。 相手で決まるのではなく、器で決まるという点は、この章を通じて一貫している。

Q. 手形で貸したほうが有利なら、なぜ1期目は証書だけで貸したのか。 A. 手形を振り出すには、借りる側が当座取引を持っている必要があり、 印紙税の負担も生じる。500,000円を半年という規模なら、 手間とコストに見合わないという判断はありうる。 また、取引先に手形を求めること自体が「信用していない」という合図になりかねず、 関係を優先して証書にとどめる場面も実際にある。 2期目に金額が800,000円に上がり、しかも2回目の融通になったところで 形式を一段固めた、という流れだと読むと、この変化は自然に見える。

関連マップ

flowchart TD
  A[約束手形を受け取った] --> B{何の代わりの手形か}
  B -- 商品を売った代金 --> C[受取手形<br/>boki3-ch05-s01]
  B -- 金を貸した証拠 --> D[手形貸付金]
  E[約束手形を振り出した] --> F{何の代わりの手形か}
  F -- 商品の仕入代金 --> G[支払手形<br/>boki3-ch05-s01]
  F -- 金を借りた証拠 --> H[手形借入金]
  D --> I[受取利息<br/>boki3-ch06-s01]
  H --> J[支払利息<br/>boki3-ch06-s01]
  C --> K[貸倒引当金の対象<br/>boki3-ch08-s01]

確認問題

得意先に対する売掛金 300,000円について、得意先が振り出した約束手形を受け取った。
このときの仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借) 受取手形 300,000 / (貸) 売上 300,000
  2. (借) 受取手形 300,000 / (貸) 売掛金 300,000
  3. (借) 売掛金 300,000 / (貸) 受取手形 300,000
  4. (借) 支払手形 300,000 / (貸) 売掛金 300,000
答えと解説

正解: 2

正解の根拠: 商品を引き渡した時点で売上と売掛金は計上済み。ここで起きたのは、売掛金という権利が受取手形という別の権利に姿を変えたことだけなので、売掛金を貸方で消して受取手形を借方に立てる。
誤答1: 売上は商品を引き渡したときに計上済み。ここで再び売上を立てると同じ代金を二重に計上し、売掛金も消えないまま残る。
誤答3: 借方と貸方が逆。これでは売掛金が増え、受取手形がマイナス残高になる。
誤答4: 支払手形は自社が手形を振り出したときの負債。ここは受け取った側なので資産の受取手形になる。

参照: boki3-ch05-s01 term:uketoritegata

仕入先に対する買掛金 400,000円の支払いのため、約束手形を振り出した。
その後、支払期日に当座預金から決済された。期日の仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借) 買掛金 400,000 / (貸) 当座預金 400,000
  2. (借) 仕入 400,000 / (貸) 当座預金 400,000
  3. (借) 当座預金 400,000 / (貸) 支払手形 400,000
  4. (借) 支払手形 400,000 / (貸) 当座預金 400,000
答えと解説

正解: 4

正解の根拠: 手形を振り出した時点で買掛金は支払手形へ振り替わっている。期日には支払義務を果たして支払手形を借方で消し、実際に引き落とされた当座預金を貸方に書く。
誤答1: 買掛金は手形の振出時にすでに消えている。ここで再び減らすと買掛金がマイナス残高になる。
誤答2: 仕入を計上するのは商品を受け取ったときの1回だけ。決済時に仕入を立てると同じ商品を2回買ったことになる。
誤答3: 借方と貸方が逆。これでは当座預金が増え、支払手形も増えてしまう。

参照: boki3-ch05-s01 term:shiharaitegata

仕入先に対する買掛金 250,000円について、取引銀行を通じて電子記録債務の発生記録を行った。
このときの仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借) 買掛金 250,000 / (貸) 電子記録債務 250,000
  2. (借) 電子記録債務 250,000 / (貸) 買掛金 250,000
  3. (借) 買掛金 250,000 / (貸) 電子記録債権 250,000
  4. (借) 仕入 250,000 / (貸) 電子記録債務 250,000
答えと解説

正解: 1

正解の根拠: 発生記録によって、掛けとしての支払義務が電子記録された債務に載り替わる。買掛金を借方で消し、新たに負った電子記録債務を貸方に立てる。負債の総額は変わらない。
誤答2: 借方と貸方が逆。これでは買掛金が増え、電子記録債務がマイナス残高になる。
誤答3: 電子記録債権は自社が受け取る側に立つときの資産。ここは支払う側なので債務になる。
誤答4: 仕入を計上するのは商品を受け取ったとき。発生記録は支払方法が変わっただけで、新たな仕入は生じていない。

参照: boki3-ch05-s02 term:denshikirokusaimu

取引先へ 800,000円を貸し付け、同額の約束手形を受け取った(年利率2%、期間6か月、利息は返済時に受け取る)。
6か月後、元利合計を現金で受け取ったときの仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借) 現金 816,000 / (貸) 手形貸付金 800,000、受取利息 16,000
  2. (借) 現金 808,000 / (貸) 受取手形 800,000、受取利息 8,000
  3. (借) 現金 808,000 / (貸) 手形貸付金 800,000、受取利息 8,000
  4. (借) 現金 808,000 / (貸) 手形貸付金 808,000
答えと解説

正解: 3

正解の根拠: 利息は 800,000 × 2% × 6/12 = 8,000円。受け取った手形は商品売買ではなく貸付の証拠なので科目は手形貸付金。元本 800,000円の回収と、新たに生まれた収益 8,000円を分けて書く。
誤答1: 16,000円は1年分の利息。貸したのは6か月なので半分になる。
誤答2: 受取手形は商品を売った代金として手形を受け取ったときの科目。貸付の証拠として受け取った手形は手形貸付金で処理する。混ぜると売上債権の指標と貸倒れの見積りが狂う。
誤答4: 全額を手形貸付金の回収にすると残高が 8,000円のマイナスになり、受取利息が計上されない。

参照: boki3-ch05-s03 term:tegatakashitsuke

銀行から 1,500,000円を借り入れ、同額の約束手形を振り出した。
年利率4%・期間1年分の利息が差し引かれ、残額が当座預金に入金された。
借入時の仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借) 当座預金 1,500,000 / (貸) 手形借入金 1,500,000
  2. (借) 当座預金 1,440,000、支払利息 60,000 / (貸) 手形借入金 1,500,000
  3. (借) 当座預金 1,440,000 / (貸) 手形借入金 1,440,000
  4. (借) 当座預金 1,440,000、支払利息 60,000 / (貸) 支払手形 1,500,000
答えと解説

正解: 2

正解の根拠: 利息は 1,500,000 × 4% × 12/12 = 60,000円。実際に入金されるのは差引後の 1,440,000円だが、返済すべき額面は 1,500,000円なので負債は額面で立て、差額を支払利息として当期の費用にする。
誤答1: 差し引かれた 60,000円が入金されていないのに全額を当座預金の増加としており、実際の預金残高と合わなくなる。
誤答3: 返済するのは 1,500,000円なので、負債を 1,440,000円にすると返済時に 60,000円の差が宙に浮き、費用の計上される期がずれる。
誤答4: 支払手形は商品の仕入代金として手形を振り出したときの科目。金を借りた証拠として振り出した手形は手形借入金になる。

参照: boki3-ch05-s03 term:tegatakariire