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第12章 連結会計 — 親をまとめて1つの会社として見る

boki2-ch12 / 幹 約66分・枝 約35分

3期目の7月、みずほ食品は彦根の乾麺メーカー「湖北麺業株式会社」の株式の60%を4,800,000円で買った。 社長の水野久司は「これでうちも乾麺が作れる」と喜び、実際その通りになった。 湖北麺業の工場でみずほ食品のブランドの乾麺が焼き上がり、それがスーパーの棚に並ぶ。

年が明けて決算になったとき、七海はみずほ食品の貸借対照表を見て違和感を持った。 資産の欄には「子会社株式 4,800,000」という1行があるだけだ。 湖北麺業には工場があり、従業員が18人いて、7,000,000円の純資産と3,000,000円の借入金がある。 その全部が、4,800,000円という1行に押し込まれて見えなくなっている。

さらに気になることがあった。3期目、みずほ食品は湖北麺業に2,000,000円分の商品を売っている。 売上高が2,000,000円増え、利益も乗っている。だが湖北麺業は身内だ。 まだスーパーに並んでいない商品を、身内に渡しただけで売上と利益が立つなら、 決算前に湖北麺業へ大量に送り込めば、いくらでも売上を作れることになる。

この章は、その2つの引っかかりから始まる。 そして、前の章でやった本支店会計の考え方が、 他人の会社にまで広がったものが連結会計だと分かる。ここが2級商業簿記の最後の山になる。

なお、この章の金額は連結の手順を追うための設例で、法人税等と税効果は考慮していない。

小話:連結が主役になるまで

日本の会社が公表する決算書は、長いあいだ単体が主役だった。 連結財務諸表の制度が導入されたのは1977年(昭和52年)3月期からで、 当初は単体を主とし、連結はそれに添える位置づけだった。 その後、1997年に連結財務諸表原則が改訂され、 2000年3月期からは連結を主とする開示に切り替わった。

背景には、単体だけでは実態が見えないという問題があった。 業績の悪い事業を子会社に移し、親会社の決算書からは切り離す。 在庫を子会社に送って売上を立てる。子会社の借入に親が保証を付けても、 親の負債には載らない。どれも単体の決算書では見えない。 連結の範囲を、形式的な持株比率だけでなく実質的な支配で判定する 「支配力基準」が採られたのも、器を作って外す操作を防ぐためだった。

だから連結会計は、理論として整えられたというより、 単体だけでは分からなかったという経験の積み重ねから今の形になっている。 この章で消してきた内部取引は、どれも過去に数字を作るのに使われたものだ。

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小話:「連結」という言葉が指しているもの

連結は「連ねて結ぶ」と書く。英語の consolidation はラテン語の consolidare(固める、しっかりさせる)に由来し、 solidus(固い)という語が中に入っている。 ばらばらの数字を1つに固めて、堅い1枚の姿にする、という語感が原語にはある。

日本語の「連結」は、鉄道車両の連結器のように、 別々のものを繋いで一続きにするという印象が強い。 実際、連結の作業は繋ぐだけでは終わらない。 繋いだあとに、繋ぎ目で二重になっているもの(子会社株式と子会社の純資産)と、 内側だけで動いていたもの(親子間の売買や債権債務)を消す。 消して初めて、外から見て意味のある1つの姿になる。

※覚え方として、「連結=足し算」ではなく「連結=足してから引く」と置くと、 なぜ修正仕訳がこれほど出てくるのかが腹に落ちる。 消す作業のほうが本体で、足す作業はその準備にすぎない。

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なぜ連結するのか(支配と経済的単一体)

boki2-ch12-s01 / 幹 15分・枝 9分

七海はまず、みずほ食品単体の決算書で何が見えないかを書き出してみた。

湖北麺業の資産は10,000,000円、負債は3,000,000円、純資産は7,000,000円。 みずほ食品の帳簿に載っているのは、そのうち「子会社株式 4,800,000」の1行だけだ。 湖北麺業が3,000,000円の借入金を抱えていることも、 工場という設備を持っていることも、みずほ食品の決算書からは読めない。

【要請】 みずほ食品の株主や銀行が知りたいのは、 「水野社長が動かしている事業の全体で、どれだけ稼ぎ、どれだけ借りているか」だ。 乾麺を作る工場が自社の第2工場なのか、60%を握った別会社なのかは、 経済的な実態としてはほとんど変わらない。どちらも水野社長の判断で動く。 それなのに、自社工場なら資産と負債が丸ごと載り、子会社なら1行に縮む。 会社という法律上の器の切り方で決算書の見え方が変わるなら、 器を分けるだけで負債を見えなくできてしまう。

【必然】 だから、支配している会社の資産・負債・収益・費用を全部合算して、 1つの会社であるかのような決算書を作る。これが連結財務諸表で、 その考え方を経済的単一体という。合算するときに、 親子の間だけで完結している取引は消す。外の人から見れば、 みずほ食品から湖北麺業へ商品が移っただけでは、何も起きていないからだ。

【由来】 この「内側の取引を消して1つに見せる」やり方は、 すでに前の章で経験している。本店と支店の間の送金や商品発送を、 本支店合併財務諸表を作るときに相殺して消した。 支店は同じ会社の一部なので、内側の取引に意味がないからだった。 連結会計がやっているのは、その「内側」の範囲を、 同じ会社の中から、支配が及ぶ範囲へ広げることに尽きる。 覚え方の取っ掛かりは「支店の扱いを、他人名義の会社にも当てはめる」。

🔧 実務枝 — 与信で「単体しか見ない」とどうなるか(約8分)

取引先が親会社1社だけの決算書を出してきたとき、 その会社が子会社をいくつも持っているなら、単体の決算書には子会社の負債が載っていない。 子会社株式という1行があるだけだ。子会社が銀行から借りていても、単体からは見えない。

さらに厄介なのが、親会社が子会社の借入に保証を付けている場合だ。 保証は債務ではないので負債には載らず、注記で示されるにとどまる。 子会社が返せなくなれば親が払うので、実質的には親の債務に近い。 連結貸借対照表を見れば、子会社の借入金は連結の負債として載るので、 グループ全体でいくら借りているかが読める。

もう一つ、単体だけでは在庫の押し込みが見抜けない。 親が子会社に商品を送って売上を立て、子会社の倉庫に積んだままなら、 親の単体決算は好調に見える。連結すると、その売上も利益も消える。 単体の売上が伸びているのに連結の売上が伸びていない会社は、 グループ内での付け替えで数字を作っている可能性がある。

で、幹の話に戻ると、連結が必要なのは会計の理屈というより、 外から読む人が判断を誤らないためで、その読む人には与信をする側も含まれている。

🔗 隣枝 — 持分法 — 連結しないが放っておかない会社(約5分)

支配までは及ばないが、重要な影響を与えられる会社(関連会社)については、 資産・負債を合算せずに、投資の金額だけを毎期修正するやり方がある。持分法という。

たとえば議決権の25%を持つ会社が当期に1,000,000円の利益を出したなら、 持分の250,000円だけを「持分法による投資損益」として取り込み、 関連会社株式の帳簿価額を250,000円増やす。 資産も負債も合算しないので、貸借対照表は膨らまない。 1行だけで子会社の成果を反映するので「一行連結」とも呼ばれる。

日商簿記2級の出題範囲では、持分法そのものの計算は問われない。 ただ、第4章で有価証券を分類したときの 「支配(子会社株式)」と「重要な影響(関連会社株式)」の線引きが、 連結の側でも扱いを分けていることは押さえておくとよい。

で、幹の話に戻ると、支配しているかどうかで扱いが変わるという構造は、 有価証券の分類も連結の範囲も同じ考え方に立っている。

具体例:湖北麺業を子会社にした3期目

支配獲得日は3期目の期首(2028年4月1日)とする。 実際の株式取得は7月1日だが、期の途中の取得を扱うと計算が煩雑になるので、 みなし取得日を期首に置いて説明する。

支配獲得日の湖北麺業の貸借対照表(単位:円)

資産 金額 負債・純資産 金額
諸資産 10,000,000 諸負債 3,000,000
資本金 5,000,000
利益剰余金 2,000,000
合計 10,000,000 合計 10,000,000

みずほ食品は、この純資産7,000,000円の会社の60%を4,800,000円で買った。 持分にあたる金額は 7,000,000 × 60% = 4,200,000円。 実際に払ったのは4,800,000円なので、600,000円多く払っている

単純に合算すると何が起きるか。みずほ食品の資産に「子会社株式4,800,000」があり、 湖北麺業の純資産に「資本金5,000,000」「利益剰余金2,000,000」がある。 このまま足すと、同じ出資が二重に数えられる。 みずほ食品が持っている子会社株式は、湖北麺業の純資産の一部を表しているので、 両方を残すと、1つの財産を2回数えたことになる。だから相殺する。これが次の節の資本連結になる。

用語カード

用語カード:支配 term:shihairyoku
用語カード:連結修正仕訳 term:renketsushuseishiwake

手順

連結の作業を、全体としてどう進めるかを先に置く。数字は次の節から入れる。

  1. 連結の範囲を決める。 議決権の過半数を持っているか、実質的に支配しているかで判定する。 湖北麺業は60%なので子会社。
  2. 各社の個別財務諸表を単純に合算する。 資産・負債・収益・費用を、 科目ごとに足すだけ。ここではまだ何も消さない。
  3. 資本連結の修正をする。 親の子会社株式と、子の純資産を相殺し、 差額をのれん、子会社の純資産のうち親のものでない部分を非支配株主持分にする。
  4. 成果連結の修正をする。 親子間の売上・仕入、債権・債務、 在庫に残っている利益(未実現利益)を消す。
  5. 連結財務諸表を作る。 合算した数字に3と4の修正を当てて、 連結貸借対照表・連結損益計算書を作る。

一般化すると、連結は**「足す → 内側を消す」の2段階**でできている。 足すのは機械的な作業で、試験で問われるのは消す部分の仕訳になる。 消す対象は「二重に数えているもの」と「内側だけで完結しているもの」の2種類しかない。

仕訳の型

連結修正仕訳の書き方そのものを、先に確認しておく。

(連結修正仕訳は、親会社・子会社どちらの帳簿にも書かない)
 資本連結の例
      (借) 資 本 金 5,000,000   (貸) 子会社株式    4,800,000
      (借) 利益剰余金 2,000,000  (貸) 非支配株主持分 2,800,000
      (借) の れ ん   600,000

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:親会社の単体決算書に、子会社の情報を注記で書き添える

決算書そのものは変えずに済むので、作る側の手間は軽い。 だが、みずほ食品の単体の貸借対照表には湖北麺業の借入金3,000,000円が載らない。 みずほ食品単体の負債が4,000,000円だとすれば、注記を読まない人には負債4,000,000円の会社に見え、 実際にはグループで7,000,000円借りている。 注記は本表と違って、比率の計算に自動では入らない。 自己資本比率も、有利子負債の額も、単体の数字で計算されてしまう。 数字として並ぶかどうかは、読み手の判断に大きく効く。

対抗案2:子会社の資産・負債を、持株比率の60%だけ合算する

一見、公平に見える。40%は他人のものだから、その分は入れないという発想だ。 湖北麺業の諸資産10,000,000円のうち6,000,000円、諸負債3,000,000円のうち1,800,000円を合算する。 壊れるのは、その資産が実際には丸ごと使われているという事実だ。 湖北麺業の工場は60%だけ動いているのではない。全部が動いて乾麺を作っている。 借入金3,000,000円も、60%だけ返せばよいわけではない。 支配しているということは、その事業の全部を動かせるということなので、 資産と負債は全部合算し、他人の取り分は純資産の側で「非支配株主持分」として1本にまとめる。 こうすれば、動いている事業の規模と、そのうち親会社株主の取り分がいくらかを、両方表せる。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 湖北麺業は法律上まったく別の会社なのに、資産を合算してよいのか。 A. 法律上の器と、経済的な実態を分けて考える。 連結財務諸表は法律上の1社の財産目録ではなく、 水野社長が支配している事業のまとまりについての報告書という位置づけになる。 みずほ食品の株主は、湖北麺業の資産を直接処分できるわけではないが、 その資産が生む利益は最終的にみずほ食品の株主に流れてくる。 だから、法律上の所有ではなく支配の範囲で括る。 リース資産を所有していないのに資産計上したのと同じで、 帳簿が見ているのは名義ではなく、誰が動かしているかのほうだ。

Q. 連結財務諸表を作ると、親会社の単体の決算書は要らなくなるのか。 A. どちらも作る。連結はグループ全体の実態を示すが、 配当をいくら出せるか、株主総会で何を承認するかは、法律上の会社ごとに決まる。 みずほ食品が配当を出す原資は、みずほ食品単体の繰越利益剰余金であって、 連結の利益ではない。目的が違う2つの書類が並行して存在する形になる。

Q. 子会社が赤字でも合算するのか。 A. 合算する。支配している以上、その赤字もグループの成績だからだ。 むしろ、赤字の子会社を連結から外せるようにすると、 都合の悪い事業だけ別会社にして外に出すという使い方ができてしまう。 連結の範囲を支配の有無という客観的な基準で決めているのは、 そこに会社の判断が入らないようにするためでもある。

関連マップ

flowchart TD
  A[議決権の過半数を取得] --> B{支配しているか}
  B -- はい --> C[子会社<br/>連結の範囲]
  B -- 重要な影響のみ --> D[関連会社<br/>持分法]
  C --> E[単純合算]
  E --> F[資本連結<br/>boki2-ch12-s02]
  E --> G[成果連結<br/>boki2-ch12-s03]
  F --> H[連結財務諸表<br/>boki2-ch12-s04]
  G --> H
  I[本支店の内部取引相殺<br/>boki2-ch11-s02] -.同じ発想.-> G
  J[子会社株式<br/>boki2-ch04-s01] --> F

資本連結(投資と資本の相殺・のれん・非支配株主持分)

boki2-ch12-s02 / 幹 18分・枝 9分

七海が最初に手が止まったのは、600,000円の差額だった。 湖北麺業の純資産7,000,000円の60%は4,200,000円。払ったのは4,800,000円。 600,000円多い。社長に聞くと「あそこの乾麺の技術と、滋賀の得意先が欲しかったんだ」と言う。

【必然】 その600,000円は、湖北麺業の貸借対照表に載っている財産に対して払ったものではない。 帳簿に載っていない何か——技術、取引先との関係、職人の腕——に対して払っている。 買った側から見れば、確かに600,000円分の値打ちを手に入れた。 だが自分で育てた信用は資産にできない(第7章)。 外から買ったときだけ、支払った金額と受け取った純資産の差として金額が確定するので、 そのときに限りのれんとして資産に計上できる。

【要請】 もう一つ、残りの40%をどう扱うかという問題がある。 湖北麺業の純資産7,000,000円のうち、2,800,000円は彦根の別の株主のものだ。 資産と負債は全額合算しているので、この2,800,000円分の財産も連結の資産に入っている。 その財産の持ち主が親会社株主ではないことを示さないと、 連結の純資産が親会社株主の取り分だと誤読される。 そこで純資産の部に非支配株主持分という区分を置き、そこに寄せる。

覚え方の取っ掛かりは「払った金額 − もらった純資産の持分 = のれん」、 「もらわなかった残りの持分 = 非支配株主持分」。 1つの純資産7,000,000円を、親の取り分4,200,000円と他人の取り分2,800,000円に割り、 親が余分に払った600,000円をのれんに立てる。それだけの作業になる。

🔧 実務枝 — M&Aの値段はどう決まるか — のれんの正体(約8分)

会社を買うときの値段は、貸借対照表の純資産額では決まらない。 将来どれだけ稼ぐかで決まる。湖北麺業が毎年1,000,000円の利益を出し続けるなら、 純資産が7,000,000円でも、それ以上の値段が付く。

差額として出てくるのれんは、その「稼ぐ力への上乗せ」を金額にしたものだ。 そして、上乗せ分は永久に価値が続くとは限らない。 職人が辞めれば技術は消え、得意先は他社に流れる。 だから、のれんは20年以内の期間で規則的に償却し、費用にしていく。 みずほ食品は10年と決めたので、毎期60,000円ずつ費用になる。

与信の場でこれが効くのは、買収を繰り返している会社の決算書を読むときだ。 のれんが総資産の大きな割合を占めている会社は、 その資産の裏付けが「将来稼ぐ見込み」しかない。 見込みが崩れれば減損として一気に費用化され、純資産が大きく減る。 繰延税金資産と並んで、 「悪化局面で消えやすい資産」として押さえておく項目になる。

で、幹の話に戻ると、のれんが償却されるのは、 それが確実な財産ではなく、時間とともに薄れていく期待だからだ。

🌿 由来枝 — 非支配株主持分は、昔は「少数株主持分」と呼ばれていた(約5分)

連結の純資産に置くこの区分は、かつて「少数株主持分」と呼ばれていた。 2013年に改正された連結の会計基準で「非支配株主持分」に改称され、 2015年4月1日以後開始する連結会計年度から適用された。

呼び名が変わった理由は、実態と合わなくなったからだとされる。 議決権の40%を持っていても、株数としては少数とは限らない。 逆に、持株比率が過半数に届かなくても、役員派遣や契約によって支配が認められる場合があり、 そのとき残りの株主は「多数派なのに支配していない」ことになる。 数の多寡ではなく、支配していないことが本質なので、 「非支配」という言い方に改めた。

古い問題集や実務書には少数株主持分という表記が残っていることがある。 指しているものは同じで、損益計算書の「少数株主損益」も 現在は「非支配株主に帰属する当期純利益」に対応する。

で、幹の話に戻ると、名前が「支配していない株主の取り分」に変わったことで、 連結の範囲を決めているのが持株比率ではなく支配だ、という筋が名前からも読めるようになった。

具体例:投資と資本の相殺から、当期の按分まで

支配獲得日(3期目の期首)の数字をもう一度置く。

① 投資と資本の相殺

親の持分 = 7,000,000 × 60% = 4,200,000円 のれん = 4,800,000 − 4,200,000 = 600,000円 非支配株主持分 = 7,000,000 × 40% = 2,800,000円

② のれんの償却

600,000 ÷ 10年 = 年60,000円。連結損益計算書に「のれん償却」として販売費及び一般管理費に並ぶ。

③ 子会社の当期純利益の按分

湖北麺業の3期目の当期純利益は1,000,000円。 このうち40%の400,000円は非支配株主のものなので、 連結損益計算書の末尾で「非支配株主に帰属する当期純利益」として差し引く。 同時に、その分だけ非支配株主の取り分が増えるので、非支配株主持分を400,000円増やす。

④ 子会社の配当の修正

湖北麺業は3期目に300,000円の配当を出した。 そのうち60%の180,000円はみずほ食品が受け取り、単体の損益計算書に受取配当金として載っている。 だが連結で見れば、グループの内側でお金が移動しただけで、外から入ってきた収益ではない。 だから受取配当金180,000円を消す。 残りの120,000円は非支配株主に出ていったので、非支配株主持分を120,000円減らす。

用語カード

用語カード:非支配株主持分 term:hishihaikabunushimochibun

手順

資本連結の4本の仕訳を、順に数字で通す。

  1. 子会社の純資産を、支配獲得日の金額で消す。 資本金5,000,000と利益剰余金2,000,000を借方に書く。
  2. 親が持っている子会社株式を消す。 4,800,000を貸方に書く。
  3. 非支配株主の取り分を出す。 7,000,000 × 40% = 2,800,000を貸方に書く。
  4. 差額をのれんにする。 借方合計7,000,000、貸方合計7,600,000。差の600,000を借方に置くとのれんになる。 貸方に差が出た場合は「負ののれん発生益」という収益になる。
  5. のれんを償却する。 600,000 ÷ 10年 = 60,000。のれん償却(費用)を借方、のれんを貸方。
  6. 子会社の当期純利益を按分する。 1,000,000 × 40% = 400,000。 非支配株主に帰属する当期純利益を借方、非支配株主持分を貸方。
  7. 子会社の配当を消す。 親が受け取った180,000は受取配当金を借方で消し、 非支配株主へ出た120,000は非支配株主持分を借方で減らす。貸方は剰余金の配当300,000。

一般化すると、資本連結は 子の純資産 × 親の持分比率払った金額 の比較から始まり、 残りの比率分をすべて非支配株主持分に寄せる作業になる。 子会社の利益も配当も、比率で親と非支配株主に割り振る。比率で割るという1点で全部が繋がっている。

仕訳の型

① 投資と資本の相殺(支配獲得日)
   (借) 資 本 金        5,000,000   (貸) 子会社株式      4,800,000
   (借) 利益剰余金       2,000,000   (貸) 非支配株主持分   2,800,000
   (借) の れ ん         600,000

② のれんの償却(毎期)
   (借) の れ ん 償 却      60,000   (貸) の れ ん          60,000

③ 子会社当期純利益の按分
   (借) 非支配株主に帰属する当期純利益 400,000
                                    (貸) 非支配株主持分     400,000

④ 子会社の配当の修正
   (借) 受取配当金        180,000   (貸) 剰余金の配当      300,000
   (借) 非支配株主持分     120,000

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:のれんを計上せず、差額600,000円をその期の費用にする

支配獲得日に600,000円を一括で費用にすると、3期目の連結の利益がその分減る。 みずほ食品の連結当期純利益が仮に2,950,000円なら、2,350,000円になる。 翌期以降は費用がゼロなので、利益は元に戻る。 買収した年だけ利益が沈み、翌年から回復したように見える。 実際には、技術や得意先という買った値打ちは翌期以降も使われて売上を生んでいる。 費用は、その値打ちが使われる期間に配るほうが、期間比較ができる。 減価償却償却原価法と同じ理屈がここでも働く。

対抗案2:のれんを償却せず、資産として持ち続ける

国際的な会計基準にはこの扱いを取るものもあり、理屈が通らないわけではない。 それでも日本の基準が償却を求めているのは、償却しないと減損の判断だけが頼りになるからだ。 湖北麺業の職人が辞め、得意先が離れて、のれんの値打ちが実際には失われていったとする。 償却していれば、10年かけて少しずつ費用になり、10年後には帳簿から消える。 償却しなければ、600,000円が資産として残り続け、 「もう価値がない」と会社が判断した年に一度に費用化される。 判断を先送りできる分、悪い知らせが遅れて、しかもまとめて出る。 毎期少しずつ配るほうが、決算書の変動は小さく、読み手にとって読みやすい。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. のれんが借方に出るのは分かったが、貸方に出たらどうするのか。 A. 純資産の持分より安く買えた場合で、負ののれんという。 資産の減少ではなく、その期の収益(負ののれん発生益)として一度に計上する。 のれんが償却されるのに、負ののれんは一括で収益になるのは扱いが対称でないように見えるが、 安く買えたということは、その事業に見えないリスクがあるか、 売り手が急いでいたかのどちらかで、将来にわたって続く値打ちではない。 将来に配る根拠がないので、その期の成果として処理する。

Q. 子会社の当期純利益を按分するのに、なぜ非支配株主持分が増えるのか。 A. 子会社が1,000,000円稼げば、湖北麺業の純資産は1,000,000円増える。 その40%は非支配株主のものなので、彼らの取り分も400,000円増える。 連結貸借対照表の非支配株主持分は、 支配獲得日の持分+その後の利益の取り分−配当で出ていった分で動いていく。 3期目末なら 2,800,000 + 400,000 − 120,000 = 3,080,000円になる。

Q. 連結損益計算書の一番下は、何という利益になるのか。 A. 当期純利益をいったん出したあと、非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いて、 親会社株主に帰属する当期純利益で終わる。 新聞などで「最終利益」と呼ばれるのはこれで、 みずほ食品の株主の取り分として最後に残る金額を指す。 1株当たり利益の計算にも、この金額を使う。

関連マップ

flowchart TD
  A[子会社株式 4,800,000] --> B[投資と資本の相殺]
  C[子の純資産 7,000,000] --> B
  B --> D[のれん 600,000<br/>親持分との差]
  B --> E[非支配株主持分 2,800,000<br/>40%分]
  D --> F[のれん償却 年60,000<br/>20年以内]
  E --> G[+当期純利益の40%<br/>−配当の40%]
  F --> H[連結損益計算書<br/>boki2-ch12-s04]
  G --> I[連結貸借対照表<br/>boki2-ch12-s04]
  D -.外から買ったときだけ計上.-> J[無形固定資産<br/>boki2-ch07-s02]

成果連結(内部取引の相殺と未実現利益)

boki2-ch12-s03 / 幹 18分・枝 9分

七海が最初に気持ち悪いと思ったほうの話が、ここに来る。 みずほ食品は3期目に、湖北麺業へ2,000,000円分の商品を売った。 原価は1,500,000円なので、500,000円の利益が乗っている。 みずほ食品の帳簿では、売上高が2,000,000円増え、その分だけ利益も出ている。

【必然】 グループを1つの会社として見ると、この2,000,000円は 自分の右の倉庫から左の倉庫へ商品を移しただけになる。 外の誰かに売ったわけではないので、売上でも仕入でもない。 だから連結では、みずほ食品の売上高2,000,000円と、 湖北麺業の仕入(売上原価)2,000,000円を、両方消す。 売上と原価を同額消すので、利益は変わらない。ここまでは形の整理にすぎない。

問題は、その商品が期末にまだ売れ残っている場合だ。 湖北麺業の期末在庫のうち400,000円が、みずほ食品から仕入れたものだったとする。 その400,000円の中には、みずほ食品が乗せた利益が含まれている。 利益率が25%なら、100,000円は身内から身内へ移しただけで生まれた利益だ。 グループの外には、まだ1円も売れていない。

【要請】 外に売れていない利益を残すと、決算前に子会社へ大量に送り込むことで いくらでも利益を作れることになる。 利益は、グループの外の誰かがお金を払って初めて実現するという線を引かないと、 連結財務諸表が成績表として機能しない。 そこで、期末在庫に含まれる内部利益を消す。これが未実現利益の消去になる。 覚え方の取っ掛かりは「外に出て初めて利益」。

同じ理屈で、親子間の売掛金と買掛金も消す。 自分が自分に対して持っている債権は、グループの外から見れば存在しない。 売掛金に積んだ貸倒引当金も、 消えた債権に対するものなので一緒に戻す。

🔗 隣枝 — 本支店会計の内部利益と、まったく同じ形(約6分)

前の章で、本店が支店へ商品を送るときに原価に利益を付けていると、 期末に支店に残っている商品の中にその利益が含まれるので、 繰延内部利益として控除した。やっていることは、この節の未実現利益の消去と同じだ。

違うのは範囲だけになる。本支店会計は同じ会社の中の話なので、 外の人から見れば内部利益は最初から存在しない。 連結は別の法人どうしなので、それぞれの帳簿では正しく売上と利益が立っている。 その正しい帳簿を持ち寄って、グループとしては存在しない利益を消す。

もう一つ違うのが、子会社が親会社に売った場合(アップストリーム)の扱いだ。 本支店会計では誰の取り分かを考える必要がないが、連結では、 消した未実現利益のうち非支配株主の持分にあたる部分を、 非支配株主持分からも減らす処理が入る。ただし日商簿記2級では、 親から子へ売る場合(ダウンストリーム)を中心に問われる。

で、幹の話に戻ると、内部利益を消すという発想は本支店会計で一度通った道で、 連結ではその範囲が別会社にまで広がっただけだ。

🔧 実務枝 — 押し込み販売を決算書から見抜く(約7分)

決算期末に、親会社が子会社や販売会社へ大量に商品を送り、売上を立てる。 商品は倉庫に積まれたままで、消費者には届いていない。 単体の決算書では売上も利益も伸びるので、目標を達成したように見える。

連結の決算書では、この売上は消える。 だから、単体の売上が伸びているのに連結の売上が伸びないという形で表に出る。 決算書だけを見て気づく手がかりとしては、 売上の伸びに比べて売掛金や棚卸資産の伸びが大きい、という並べ方がある。 売上が10%伸びているのに売掛金が40%伸びていれば、 売った先で滞留している可能性を疑う。

与信の場面では、この見方は取引先の月次の動きにも当てはまる。 期末月だけ売上が跳ね上がり、翌期首に返品や値引きで戻る会社は、 数字を期末に寄せている。連結の未実現利益の消去は、 この操作をグループの内側については機械的に無効化する仕組みでもある。

で、幹の話に戻ると、未実現利益を消すのは会計の潔癖さではなく、 数字を作れる余地をあらかじめ塞ぐためだと考えると、消す理由が腹に落ちる。

具体例:3期目の親子間取引

① 内部売上高の相殺

みずほ食品の売上高2,000,000円と、湖北麺業の売上原価(仕入)2,000,000円を消す。 売上高が2,000,000円減り、売上原価も2,000,000円減るので、利益への影響はゼロ

② 未実現利益の消去

期末在庫400,000円に含まれる利益 = 400,000 × 25% = 100,000円。 この分だけ商品(棚卸資産)を減らし、同額を売上原価に足す。 売上原価が増えるので、連結の利益は100,000円減る

③ 債権債務の相殺

みずほ食品の売掛金500,000円と、湖北麺業の買掛金500,000円を消す。 資産と負債が同額減るだけで、利益は動かない。

④ 貸倒引当金の修正

消えた売掛金500,000円に対して積んでいた引当金 = 500,000 × 2% = 10,000円を戻す。 貸倒引当金(資産のマイナス)を10,000円減らし、 貸倒引当金繰入(費用)を10,000円減らす。連結の利益は10,000円増える

3期目の成果連結による利益への影響は、−100,000 + 10,000 = 90,000円の減少になる。

用語カード

用語カード:未実現利益 term:mijitsugenrieki

手順

成果連結の4本を、順に数字で通す。

  1. 親子間の売上と仕入を突き合わせる。 どちらも2,000,000円。 金額が違っていたら、未達取引を先に整理する(本支店会計と同じ)。
  2. 売上高と売上原価を同額消す。 売上高を借方、売上原価を貸方に2,000,000円。
  3. 期末在庫に含まれる利益を出す。 在庫400,000 × 利益率25% = 100,000円。 原価率75%で示されている場合は 400,000 × (1 − 0.75) で同じ答えになる。
  4. その分だけ商品を減らし、売上原価を増やす。 売上原価を借方、商品を貸方に100,000円。
  5. 親子間の債権債務を消す。 買掛金を借方、売掛金を貸方に500,000円。
  6. 消した債権に対する貸倒引当金を戻す。 500,000 × 2% = 10,000円。 貸倒引当金を借方、貸倒引当金繰入を貸方。

一般化すると、消すものは「内側で完結した収益と費用」「内側で完結した債権と債務」 「外に出ていない利益」の3種類になる。 最初の2つは利益に影響しない付け替えで、利益が動くのは3つ目だけ。 この見分けができると、金額を答える問題で迷わなくなる。

仕訳の型

① 内部売上高の相殺
   (借) 売 上 高      2,000,000   (貸) 売 上 原 価   2,000,000

② 未実現利益の消去
   (借) 売 上 原 価     100,000   (貸) 商 品         100,000

③ 債権債務の相殺
   (借) 買 掛 金        500,000   (貸) 売 掛 金       500,000

④ 貸倒引当金の修正
   (借) 貸倒引当金       10,000   (貸) 貸倒引当金繰入   10,000

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:内部売上は消すが、在庫に残った利益はそのままにする

売上高と売上原価だけ消せば、形は整う。 だが、みずほ食品が3期目の期末に、湖北麺業へさらに1,600,000円分を送り込んだとする。 利益率25%なので400,000円の利益が乗る。湖北麺業の倉庫に積まれたままでも、 在庫の利益を消さなければ、連結の利益が400,000円増える。 グループの外には1円も売れていないのに、社内で商品を動かしただけで利益が出る。 翌期に湖北麺業がその商品を外に売れば、そこでもう一度利益が計上される。 同じ商品で2回稼いだことになってしまう。

対抗案2:親子間の売掛金・買掛金は残しておく

利益に影響しないので、消さなくても最終利益は変わらない。 壊れるのは、貸借対照表の規模と比率になる。 みずほ食品の売掛金500,000円と湖北麺業の買掛金500,000円を残すと、 連結の総資産と総負債が500,000円ずつ膨らむ。 グループの外から見れば、存在しない債権と存在しない債務が両方載っている状態だ。 自己資本比率も、売上債権回転期間も、実態より悪く出る。 親子間の取引が大きい会社ほどこの膨らみは大きくなり、 規模を水増ししようと思えばできてしまう。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 未実現利益を消すと、湖北麺業の帳簿の在庫と連結の在庫がずれる。それでよいのか。 A. ずれてよい。湖北麺業の帳簿では、みずほ食品から400,000円で買ったのだから400,000円で正しい。 連結では、グループの外から見た仕入原価は300,000円なので、そちらで載せる。 連結修正仕訳は帳簿に書かないので、両方が並存する。 同じ商品に、立場によって2つの正しい金額があるという状態は、 本支店会計の内部利益でも同じことが起きていた。

Q. 翌期になると、消した未実現利益はどうなるのか。 A. 翌期の期首在庫に含まれる利益として、開始仕訳で引き継ぐ。 そして、その商品が翌期に外へ売れた時点で、利益が実現する。 実務では「期首在庫の未実現利益を戻し、期末在庫の未実現利益を消す」という 2本の仕訳を毎期行う形になる。3級の繰越商品の 「しーくり・くりしー」と同じく、前期分を戻して当期分を立てるという往復の形をしている。

Q. 子会社から親会社へ売った場合も、同じように消すのか。 A. 消す点は同じだが、消した利益の負担者が変わる。 子会社が計上した利益なので、その40%は非支配株主のものだった。 だから未実現利益を消すときに、非支配株主持分もその分だけ減らす処理が加わる。 日商簿記2級では親から子へのケースが中心で、 そちらでは利益の全額が親会社株主の負担になるため、この追加の処理は出てこない。

関連マップ

flowchart TD
  A[親子間の取引] --> B{何が動いたか}
  B -- 売上と仕入 --> C[売上高と売上原価を同額消去<br/>利益は動かない]
  B -- 売掛金と買掛金 --> D[債権債務を相殺<br/>利益は動かない]
  B -- 期末に残った在庫 --> E[未実現利益を消去<br/>利益が減る]
  D --> F[貸倒引当金を戻す<br/>利益が増える]
  E --> G[連結損益計算書<br/>boki2-ch12-s04]
  F --> G
  H[本支店の内部利益<br/>boki2-ch11-s02] -.同じ発想.-> E
  I[貸倒引当金の設定<br/>boki2-ch03-s02] --> F

連結精算表と連結財務諸表

boki2-ch12-s04 / 幹 15分・枝 8分

ここまでの仕訳を全部当てて、実際の連結財務諸表を作る。 七海がやったのは、大きな表を1枚用意して、 左に2社の個別の数字、真ん中に修正、右に連結の数字を並べる作業だった。

【必然】 連結修正仕訳は帳簿に書かないので、 仕訳を積み上げていく総勘定元帳のような場所がない。 どこかに1枚、個別の数字と修正と結果を並べる作業用紙が要る。それが連結精算表になる。 3級で習った精算表が、 試算表と決算整理と財務諸表を横に並べた作業用紙だったのと、役割はまったく同じだ。

【要請】 連結損益計算書の末尾の形にも理由がある。 合算した利益から非支配株主の取り分を引いて、親会社株主の取り分で終わる。 みずほ食品の株主が知りたいのは、グループ全体の利益ではなく、 そのうち自分たちに帰属する部分だからだ。 グループの規模は当期純利益で、株主の取り分は親会社株主に帰属する当期純利益で、 2つとも表示することで両方の問いに答えている。

🔧 実務枝 — 連結の数字を、与信のどこで使うか(約7分)

上場企業が公表する決算短信や有価証券報告書の主役は連結財務諸表で、 単体はその後ろに参考として載る。ニュースで報じられる売上高も最終利益も連結の数字になる。

与信で連結を見るときの勘所は3つある。 1つ目は有利子負債。子会社の借入まで含めた総額が読める。 2つ目は営業利益と当期純利益の開き。子会社の損失やのれんの減損は、 営業利益より下で出ることがある。 3つ目は非支配株主に帰属する当期純利益の大きさ。 これが大きい会社は、稼いでいる事業の一部が実は他人のものだということになる。

一方、契約の相手が子会社1社であれば、支払うのはその子会社なので、 単体の決算書を見なければ意味がない。親が保証を付けるかどうかで話がまったく変わる。 連結はグループの実力、単体は目の前の相手の支払能力という使い分けになる。

で、幹の話に戻ると、連結財務諸表が何を答えるための書類なのかが分かっていれば、 どの数字をどの場面で使うかも自然に決まる。

具体例:3期目の連結精算表(損益計算書の部分)

みずほ食品と湖北麺業の個別の損益計算書を並べ、 これまでの修正を当てる。単位は円、修正欄はプラスが増加、マイナスが減少を表す。

科目 みずほ食品 湖北麺業 単純合算 連結修正 連結
売上高 20,000,000 8,000,000 28,000,000 −2,000,000 26,000,000
売上原価 14,000,000 5,600,000 19,600,000 −2,000,000+100,000 17,700,000
売上総利益 6,000,000 2,400,000 8,400,000 −100,000 8,300,000
販売費及び一般管理費 3,900,000 1,400,000 5,300,000 −10,000+60,000 5,350,000
営業利益 2,100,000 1,000,000 3,100,000 −150,000 2,950,000
受取配当金 180,000 0 180,000 −180,000 0
当期純利益 2,280,000 1,000,000 3,280,000 −330,000 2,950,000
非支配株主に帰属する当期純利益 400,000 400,000
親会社株主に帰属する当期純利益 2,550,000

修正欄の中身を確認する。 売上原価の+100,000は未実現利益、販売費の−10,000は貸倒引当金の戻し、 +60,000はのれん償却、受取配当金の−180,000は内部配当の消去になる。

検算:みずほ食品の個別の当期純利益2,280,000円から出発しても同じ数字に着く。

2,280,000 − 180,000(内部配当)− 60,000(のれん償却)− 100,000(未実現利益) + 10,000(貸倒引当金)+ 600,000(子会社利益の親持分 1,000,000×60%)= 2,550,000円

2つの道が同じ数字に着くので、計算が合っていることが確かめられる。

連結貸借対照表の主な行

用語カード

用語カード:連結精算表 term:renketsuseisanhyo

手順

連結精算表を、左から右へ埋める。

  1. 個別財務諸表の欄を埋める。 親と子の金額をそのまま写す。
  2. 単純合算の欄を作る。 科目ごとに足す。ここまでは計算作業だけ。
  3. 連結修正仕訳を1本ずつ、修正欄に書き込む。 借方はその科目を増やす向き、 貸方は減らす向き(費用・資産の場合)で入れる。
  4. 修正欄の縦計が、借方合計=貸方合計になっているか確かめる。 合わなければ、どこかの仕訳が片側しか書けていない。
  5. 合算+修正で連結欄を出す。
  6. 当期純利益から非支配株主に帰属する当期純利益を引く。 残りが親会社株主に帰属する当期純利益になる。
  7. 検算する。 親の個別純利益から、内部配当・のれん償却・未実現利益などを加減し、 子会社利益の親持分を足す。同じ数字になれば正しい。

一般化すると、精算表は合算 → 修正 → 結果の3列で、 どの行も「左の2つを足したものが右」という関係になっている。 埋め方そのものは3級の精算表と同じで、 違うのは修正欄に入るのが決算整理ではなく連結修正だという点だけだ。

仕訳の型

連結財務諸表の並びを、金額とともに確認する。

連結損益計算書(3期目・抜粋)
  売上高                          26,000,000
  売上原価                        17,700,000
  売上総利益                       8,300,000
  販売費及び一般管理費(のれん償却60,000を含む)  5,350,000
  営業利益                         2,950,000
  当期純利益                       2,950,000
  非支配株主に帰属する当期純利益        400,000
  親会社株主に帰属する当期純利益      2,550,000

連結貸借対照表(3期目末・抜粋)
  のれん(無形固定資産)              540,000
  純資産の部
    資本金・利益剰余金など(親会社株主に帰属)
    非支配株主持分                  3,080,000

なぜ他ではダメなのか

対抗案1:連結修正仕訳を、親会社の帳簿に書いてしまう

作業用紙を作る手間が省けそうに見える。だが、みずほ食品の帳簿に 「資本金5,000,000 / 子会社株式4,800,000」と書けば、 みずほ食品の資本金3,000,000円がマイナスになり、単体の決算書が壊れる。 みずほ食品が配当を出せるかどうかは、単体の繰越利益剰余金で決まるので、 帳簿を壊すと配当可能額の計算までできなくなる。 連結は報告のための組み替えで、法律上の会社の帳簿とは別の層にある。 だから毎期、前期までの修正をやり直す開始仕訳から始めることになる。

対抗案2:非支配株主に帰属する当期純利益を、費用として営業利益の前で引く

他人に渡る分なので費用に見える。だが、これを販売費に入れると、 みずほ食品の連結営業利益が2,950,000円から2,550,000円に下がる。 営業利益は事業がどれだけ稼いだかを示す段階なので、 稼いだ利益を誰にどう分けるかという話が混ざると、事業の実力が読めなくなる。 株主への配当を費用にしないのと同じ理屈で、 利益の分配は利益を計算し終えた後に置く。 だから当期純利益をいったん出してから、その下で分ける形になっている。

よくある間違い

ここで引っかかるはず

Q. 連結精算表は、試験でどこまで書かされるのか。 A. 第2問や第3問で、連結精算表の空欄を埋める形や、 連結財務諸表の金額を答える形で問われる。 全部の行を埋めさせることは少なく、修正が入る行だけが問われることが多い。 だから、どの科目に修正が入るかを先に把握しておくと速くなる。 売上高・売上原価・商品・売掛金・買掛金・貸倒引当金・のれん・受取配当金・ 非支配株主持分。この9つが定番になる。

Q. 翌期の連結では、また支配獲得日の仕訳からやり直すのか。 A. やり直す。連結修正仕訳は帳簿に残らないので、 毎期、過去の修正を積み上げた形の「開始仕訳」を最初に置く。 2年目なら、支配獲得日の相殺に加えて、 1年目ののれん償却・利益の按分・配当の修正を反映した状態から始める。 このとき、過去の損益項目は利益剰余金にまとめて置き換える。 過去の損益はもう当期の損益ではないからだ。

Q. 連結の利益が個別の合計より小さくなるのは、いつもそうなのか。 A. そうなることが多いが、必ずではない。 のれん償却と未実現利益の消去は利益を減らす方向に働き、 貸倒引当金の修正は増やす方向に働く。 内部取引が少なく、のれんも小さければ、差はほとんど出ない。 みずほ食品の3期目は、合算3,280,000円に対して連結2,950,000円で、 差の330,000円は内部配当180,000+のれん償却60,000+未実現利益100,000−貸倒引当金10,000で説明できる。 説明できない差がある場合は、どこかの修正を落としている。

関連マップ

flowchart LR
  A[親の個別F/S] --> C[単純合算]
  B[子の個別F/S] --> C
  C --> D[連結修正欄]
  E[資本連結<br/>boki2-ch12-s02] --> D
  F[成果連結<br/>boki2-ch12-s03] --> D
  D --> G[連結財務諸表]
  G --> H[当期純利益]
  H --> I[非支配株主に帰属する当期純利益]
  H --> J[親会社株主に帰属する当期純利益]
  K[3級の精算表<br/>boki3-ch12-s03] -.同じ作り.-> D

確認問題

P社は支配獲得日にS社の発行済株式の60%を4,800,000円で取得した。
同日のS社の純資産は、資本金5,000,000円、利益剰余金2,000,000円である。
投資と資本の相殺消去仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借)資本金 5,000,000、利益剰余金 2,000,000 /(貸)子会社株式 4,800,000、非支配株主持分 2,200,000
  2. (借)資本金 5,000,000、利益剰余金 2,000,000、のれん 600,000 /(貸)子会社株式 4,800,000、非支配株主持分 2,800,000
  3. (借)資本金 3,000,000、利益剰余金 1,200,000、のれん 600,000 /(貸)子会社株式 4,800,000
  4. (借)資本金 5,000,000、利益剰余金 2,000,000 /(貸)子会社株式 4,800,000、のれん 600,000、非支配株主持分 1,600,000
答えと解説

正解: 2

正解の根拠: 子会社の純資産7,000,000円を全額消し、そのうち40%の2,800,000円を非支配株主持分とする。親の持分4,200,000円に対して4,800,000円を支払っているので、差額600,000円が借方にのれんとして立つ。
誤答1: 非支配株主持分が2,200,000円になっており、7,000,000×40%=2,800,000円と合わない。差額のれんも計上されていないため貸借が一致しない。
誤答3: 子会社の純資産を持株比率60%だけ消している。資産・負債は全額合算するので、純資産も全額消して残りを非支配株主持分に振り替える。
誤答4: のれんが貸方に立っている。支払額が親の持分を上回る場合、のれんは資産として借方に立つ。

参照: boki2-ch12-s02 term:hishihaikabunushimochibun

P社はS社(持株比率60%)に対し、当期に商品2,000,000円を売り上げた。
P社がS社に販売する際の利益率は25%である。
S社の期末商品のうち400,000円はP社から仕入れたものであった。
未実現利益の消去に関する連結修正仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借)売上原価 100,000 /(貸)商品 100,000
  2. (借)商品 100,000 /(貸)売上原価 100,000
  3. (借)売上原価 500,000 /(貸)商品 500,000
  4. (借)売上高 400,000 /(貸)商品 400,000
答えと解説

正解: 1

正解の根拠: 消すのは期末に残っている在庫に含まれる利益だけ。400,000×25%=100,000円。期末商品を減らすと、その分だけ売上原価が増えるので、売上原価が借方、商品が貸方になる。
誤答2: 借方と貸方が逆。未実現利益の消去は連結の利益を減らす方向に働くので、費用である売上原価が借方に立つ。
誤答3: 内部売上高2,000,000円全体に利益率を掛けた金額。外部に売れた分の利益は実現しているので消さない。
誤答4: 在庫の金額そのものを売上高から消している。内部売上高の相殺は売上高と売上原価を同額で消す別の仕訳で、未実現利益の消去とは分けて行う。

参照: boki2-ch12-s03 term:mijitsugenrieki

連結決算にあたり、支配獲得時に計上したのれん600,000円について、
10年間の定額法により償却する。当期分の連結修正仕訳として正しいものはどれか。
  1. (借)のれん 60,000 /(貸)のれん償却 60,000
  2. (借)のれん償却 600,000 /(貸)のれん 600,000
  3. (借)のれん償却 60,000 /(貸)のれん 60,000
  4. 仕訳なし(のれんは償却しない)
答えと解説

正解: 3

正解の根拠: 600,000 ÷ 10年 = 60,000円。のれん償却は費用なので借方、無形固定資産であるのれんを直接減らすので貸方に置く。のれん償却は販売費及び一般管理費に表示する。
誤答1: 借方と貸方が逆。費用が貸方に立っており、のれんが増えてしまう。
誤答2: 取得したのれんの全額を当期の費用にしている。効果の及ぶ期間にわたって配分するので、当期分は10分の1。
誤答4: 日本の会計基準では、のれんは20年以内の期間で規則的に償却する。償却しない扱いを取る基準もあるが、簿記2級では償却する。

参照: boki2-ch12-s02 term:noren

P社の当期純利益は2,280,000円、S社(持株比率60%)の当期純利益は1,000,000円である。
連結上、のれん償却60,000円、未実現利益の消去100,000円、貸倒引当金の修正による費用の減少10,000円、
S社からP社への配当に係る受取配当金の消去180,000円を反映する。
親会社株主に帰属する当期純利益はいくらか。
  1. 3,280,000円
  2. 2,950,000円
  3. 2,880,000円
  4. 2,550,000円
答えと解説

正解: 4

正解の根拠: 2,280,000 − 180,000 − 60,000 − 100,000 + 10,000 +(1,000,000×60%=600,000)= 2,550,000円。子会社の利益のうち親の持分だけが親会社株主に帰属する。
誤答1: 両社の当期純利益を単純に合算した金額で、連結修正を何も反映していない。
誤答2: 連結上の当期純利益(グループ全体の利益)であり、ここから非支配株主に帰属する当期純利益400,000円を差し引く前の金額。
誤答3: 子会社の当期純利益を全額取り込んだうえで一部の修正を落としている。取り込むのは持分60%分。

参照: boki2-ch12-s04 term:renketsuseisanhyo

連結財務諸表に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  1. 子会社の資産と負債は、親会社の持株比率に応じて按分して合算する
  2. 連結修正仕訳は親会社・子会社いずれの帳簿にも記入せず、連結財務諸表を作成するためだけに行う
  3. 親会社が保有する子会社株式は、連結貸借対照表に投資有価証券として表示する
  4. 子会社が当期に赤字であった場合、その子会社は連結の範囲から除外する
答えと解説

正解: 2

正解の根拠: 連結修正仕訳は各社の帳簿には記入しない。連結財務諸表を作るための組み替えなので、翌期には効果が残らず、毎期あらためて開始仕訳から積み直す。
誤答1: 資産と負債は全額を合算する。持株比率に応じて按分するのではなく、親会社株主以外の取り分は純資産の非支配株主持分としてまとめて表示する。
誤答3: 子会社株式は子会社の純資産と相殺消去されるため、連結貸借対照表には表示されない。
誤答4: 連結の範囲は支配の有無で決まる。業績によって範囲を出し入れできるなら、都合の悪い事業を外す操作が可能になってしまう。

参照: boki2-ch12-s01 term:shihairyoku