2027年3月31日。みずほ食品の1期目が終わる。
第1章で、七海が2枚の紙を作る場面を見た。 損益計算書と貸借対照表。当期純利益800,000円がどちらにも現れる、あの2枚だ。 あのとき示したのは出来上がった姿だけで、そこへ至る作業は先送りにしてある。
この章で扱うのが、その作業になる。
出発点は第10章の試算表だ。 3月31日時点で総勘定元帳を集計すれば、すべての勘定の残高が出る。 借方と貸方も一致している。それなら、この残高をそのまま2枚の紙に振り分ければ 決算書ができそうに見える。
できない。理由は3つある。
1つ目は、帳簿に書かれていない事実があること。 倉庫に残っている小麦粉と麺は、まだどこにも記録されていない。 機械が1年ぶん古くなったことも、第7章で見たとおり誰も書いていない。
2つ目は、帳簿の数字が期間と合っていないこと。 3月に翌月分の家賃を払っていれば、その分は当期の費用ではない。 3月に使った電気の代金を4月に払うなら、その分は当期の費用なのに帳簿に無い。
3つ目は、利益が確定しないと決まらない金額があること。 第9章の法人税等がそれで、 1年の成績が出てからでないと計算できない。
この3つを埋める作業が決算整理で、それを1枚の表の上でやってしまうのが精算表になる。 そして最後に、帳簿そのものを締めて次の期へ渡す。 ch01からch11までに出てきた取引が、全部この章に集まってくる。
棚卸という言葉は、商家が蔵や店の棚から商品を下ろして数えた作業そのものを指していた。 江戸期の商家では、盆と暮れの年2回、店を閉めて棚卸をした記録が残っている。 番頭から丁稚まで総出で品物を数え、帳面と突き合わせ、 合わないものは理由を突き止めてから帳面を直す。
なぜここまでするかというと、三分法(第4章)を採っているかぎり、 期末にいくら残っているかは数える以外に知る方法がないからだ。 仕入れた金額は帳簿にあるが、売れた商品の原価はどこにも記録されていない。 だから残りを数えて、仕入から引く。 数えなければ売上原価が出ず、売上原価が出なければ利益が出ない。 棚卸は決算の付随作業ではなく、利益を計算するための必須の入力になる。
いまも実地棚卸は残っている。 小売や製造の現場では、決算日の前後に営業を止めて、 2人1組で数えて記録する。バーコードやハンディ端末を使っても、 最後は人が現物を見て数える工程が消えない。 帳簿在庫と実地棚卸の差は棚卸減耗といい、 盗難・破損・記帳漏れの合計として表に出る。この差の扱いは2級で扱う。
帳簿を疑って現物を見にいくという発想が、決算整理のいちばん最初に置かれている。 決算が机の上の計算作業ではなく、倉庫と金庫から始まるのは、このためになる。
決算のことを英語で closing という。帳簿を閉じる、という意味だ。
日本語の「締切」も同じ発想で、帳簿に線を引いて、
それより先は書けないようにする作業を指している。
手書きの帳簿では、この「線を引く」が文字どおりの作業だった。 勘定口座の最後の行の下に横線を1本引き(合計線)、 その下に借方と貸方の合計を書いて、さらにその下に二重線を引く(締切線)。 二重線から下には何も書かない。 書き足したければ、翌期のページに「前期繰越」と書いて始める。
なぜこれが必要かというと、後から書き足せてしまう帳簿は証拠にならないからだ。 決算が終わったあとに1行足せば、利益はいくらでも変えられる。 線を引き、合計を確定させ、その先を物理的に塞ぐことで、 「この期の記録はここで終わっている」ことを示していた。
電子帳簿になってからは、線の代わりに別の仕掛けが使われる。 電子帳簿保存法が求める要件の1つが訂正・削除の履歴を残すことで、 後から直した場合にその事実が記録に残るようになっている。 第11章の証ひょうの保存と同じで、 後から動かせないことが帳簿の価値を支えている。
締切の仕訳を書き、線を引き、翌期の1行目に前期繰越と書く。 この一連の動作は、1年という区切りを帳簿の上で実際に作る作業になる。
3月31日の夕方、七海の手元には決算整理前の残高試算表がある。
| 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
|---|---|---|
| 1,850,000 | 現金 | |
| 1,968,000 | 当座預金 | |
| 900,000 | 売掛金 | |
| 1,200,000 | 備品 | |
| 買掛金 | 600,000 | |
| 借入金 | 1,500,000 | |
| 資本金 | 3,000,000 | |
| 売上 | 11,500,000 | |
| 受取利息 | 5,000 | |
| 7,500,000 | 仕入 | |
| 2,600,000 | 支払家賃 | |
| 275,000 | 水道光熱費 | |
| 60,000 | 支払利息 | |
| 45,000 | 租税公課 | |
| 207,000 | その他費用 | |
| 16,605,000 | 合計 | 16,605,000 |
(「その他費用」は、この章の論点に関わらない小さな費用をまとめて置いた科目になる。 第1章の損益計算書と同じ扱いをしている。)
左右は16,605,000円で一致している。転記は崩れていない。 それでもこの表からは、まだ決算書が作れない。
【要請】 理由をいちばん分かりやすく示すのが、仕入7,500,000円という数字だ。
第4章で見たとおり、三分法では商品を買うたびに仕入という費用を立てる。
1年間で7,500,000円ぶん買った。だがそのうち、まだ売れていないものがある。
3月31日に倉庫を見ると、小麦粉と製品が300,000円分残っていた。
残っている300,000円は、この期の売上を生んでいない。 売上11,500,000円に対応する費用は、売れた分の原価だけになる。 だから 7,500,000 − 300,000 = 7,200,000円が当期の売上原価で、 残った300,000円は繰越商品という資産として翌期へ渡す。
この「倉庫を見て数える」作業が実地棚卸で、 帳簿の中だけでは絶対に出てこない数字を持ち込む唯一の手段になる。 第10章で見たとおり、試算表は帳簿の中の検算しかしていない。 帳簿の外の事実と突き合わせる作業が、決算整理の入口に置かれているのはこのためだ。
【必然】 同じ構造の作業が、あと2つ続く。
第8章の貸倒引当金と、
第7章の減価償却だ。
どちらも、その期に起きた事実が帳簿に書かれていないという点で棚卸と同じになる。
売掛金の一部が焦げ付きそうだという事実も、機械が1年ぶん減ったという事実も、
現金が動いていないので期中に仕訳が起きなかった。
そしてもう1つ、期中には現れない科目がある。 租税公課として費用にしてある収入印紙のうち、 使わずに残っているものだ。3月31日に金庫を見ると15,000円分の印紙が未使用だった。 買った時点で費用にしてあるが、まだ使っていない以上、それは翌期に使う財産になる。 この置き場が貯蔵品になる。
覚え方の取っ掛かりは「決算整理は、期中に誰も書かなかったことを書く作業」。
棚卸という言葉は、文字どおり棚から商品を下ろして数える作業を指していた。
商家の蔵や店の棚に積んである品を、いったん全部下ろして数え、
帳面と突き合わせてから戻す。年に一度か二度、店を閉めてこれをやった。
英語の inventory はラテン語 invenire(見つけ出す)から来ていて、
こちらは「見つけ出したものの一覧」という意味になる。
日本語が作業のほうを、英語が結果のほうを名前にした違いがある。
なぜわざわざ下ろして数えるのかというと、 帳簿の在庫と実際の在庫は必ずずれるからだ。 盗難、破損、記帳漏れ、数え間違い、傷んで捨てたもの。 みずほ食品なら、湿気てしまった小麦粉や、 売れ残って賞味期限が切れた麺がこれにあたる。 帳簿の上ではまだ資産として残っているが、実際にはもう無い。
「棚卸資産」という科目名も、この作業から来ている。 数えて確かめるべき資産、という意味だ。 ※覚え方として、棚卸は「帳簿を疑って現物を見にいく作業」だと思っておくとよい。 決算整理のなかで唯一、机の上ではできない作業になる。
で、幹の話に戻ると、期末商品棚卸高300,000円という数字は計算で出したものではなく、 倉庫で実際に数えて出した数字だ。だから問題文で必ず与えられる。
決算整理には、金額を会社が決める余地のある項目が集まっている。 貸倒引当金の見積率、 減価償却を計上するかどうかとその金額、 期末の在庫をいくらで評価するか。 どれも期中の取引と違って、相手のいる取引ではない。
だから決算書を読む側は、この3つを重点的に見る。
在庫が前期より不自然に増えていれば、売れない商品を抱えているか、 在庫を高めに評価して原価を圧縮している可能性を疑う。 売上の伸び以上に在庫が伸びている期は特に見る。
減価償却費が固定資産の残高に対して極端に小さければ、 償却を見送っている可能性がある。 中小企業では税務上、償却額を任意に減らすことが認められる余地があるので、 赤字を避けるために使われることがある。 この場合、利益に減価償却費を足し戻した簡易キャッシュフロー (第7章)で比べ直すことになる。
貸倒引当金が長年ゼロのままなのに売掛金が膨らんでいる会社も同じで、 回収できていない債権が資産として残ったままになっている可能性がある。
つまり決算書の見方として、当期純利益より先に決算整理の3項目を見るという順番になる。 数字を作りたいときに手が入る場所が、そこに集まっているためだ。
で、幹の話に戻ると、決算整理は単なる計算作業ではなく、 会社が見積りで判断している部分が集中している工程になる。 だから根拠のある数字を、毎期同じやり方で置くことが求められる。
3月31日に、七海がやった作業を順に並べる。
| # | 決算整理事項 | 帳簿の外で確かめたこと | 金額 |
|---|---|---|---|
| ① | 期末商品棚卸高 | 倉庫で実地棚卸をした | 300,000 |
| ② | 貸倒引当金の設定(差額補充法・2%) | 売掛金の相手先と遅延の状況 | 18,000 |
| ③ | 備品の減価償却(定額法・間接法) | 取得原価と耐用年数 | 150,000 |
| ④ | 支払家賃の前払分(翌期4月分) | 3月に払った領収書 | 200,000 |
| ⑤ | 水道光熱費の未払分(3月分の電気代) | 4月に届く検針票 | 25,000 |
| ⑥ | 収入印紙の未使用分 | 金庫の中の印紙を数えた | 15,000 |
| ⑦ | 法人税等の計上 | 税理士の計算した申告額 | 340,000 |
この節で扱うのは①②③⑥で、④⑤は次の節、 ⑦は第9章で見たとおりになる。
① 売上原価の算定
みずほ食品は創業1年目なので、期首に商品が無い。 だから仕入7,500,000円から期末在庫300,000円を引くだけで売上原価が出る。
| 金額 | |
|---|---|
| 期首商品棚卸高 | 0 |
| 当期商品仕入高 | 7,500,000 |
| 合計 | 7,500,000 |
| 期末商品棚卸高 | △300,000 |
| 売上原価 | 7,200,000 |
2期目からは期首に商品がある。仮に2期目の期首300,000円・仕入7,800,000円・期末420,000円なら、 売上原価は 300,000 + 7,800,000 − 420,000 = 7,680,000円になる。 仕訳が2本になるのはこの形からで、1期目は1本目が要らない。
② 貸倒引当金
売掛金900,000円の2%で18,000円。決算整理前の貸倒引当金残高はゼロなので、 差額補充法でも18,000円をそのまま繰り入れる(第8章)。
③ 減価償却
備品1,200,000円 ÷ 8年 = 150,000円。間接法なので貸方は累計額(第7章)。
⑥ 貯蔵品への振替
1年間に買った収入印紙は45,000円で、買うたびに租税公課という費用にしてある。 3月31日に金庫を見ると15,000円分が未使用だった。 使っていない以上それは翌期に使う財産なので、費用から資産へ振り替える。 当期の租税公課は 45,000 − 15,000 = 30,000円になる。
supplies(貯蔵品・備品類)と呼ばれる。3月31日の決算整理を、順番に通す。
一般化すると、決算整理は **「期中に記録されなかった事実を書き足し、期間に合っていない金額を直す」**作業になる。
順番に意味があるのは7だけで、
【由来】 法人税等が最後に来るのは、その年の利益が確定しないと金額が出ないからだ。
1から6を先に終えて税引前当期純利益を出し、それから税額を計算して7本目を書く。
損益計算書で法人税等がいちばん下に置かれているのも同じ理由になる。
残りの1から6は、どの順番でやっても結果は変わらない。
2027/3/31 ① 売上原価の算定(期首商品なし)
(借) 繰越商品 300,000 (貸) 仕 入 300,000
(2期目以降なら、この前にもう1本入る)
(借) 仕 入 300,000 (貸) 繰越商品 300,000 ← 期首分を仕入へ戻す
(借) 繰越商品 420,000 (貸) 仕 入 420,000 ← 期末分を資産へ
2027/3/31 ② 貸倒引当金(差額補充法・売掛金900,000の2%、残高0)
(借) 貸倒引当金繰入 18,000 (貸) 貸倒引当金 18,000
2027/3/31 ③ 減価償却(備品1,200,000・耐用年数8年・定額法・間接法)
(借) 減価償却費 150,000 (貸) 備品減価償却累計額 150,000
2027/3/31 ⑥ 収入印紙の未使用分を貯蔵品へ
(借) 貯 蔵 品 15,000 (貸) 租税公課 15,000
2027/3/31 ⑦ 法人税等の計上
(借) 法人税等 340,000 (貸) 未払法人税等 340,000
対抗案1:期末に商品が残っていても、仕入7,500,000円をそのまま費用にする
期中の記録をそのまま使うので、実地棚卸をする必要がなくなる。 みずほ食品の1期目と2期目を並べる(2期目の期末在庫は420,000円とする)。
| 棚卸をする(正) | 仕入をそのまま費用に | |
|---|---|---|
| 1期目の売上原価 | 7,200,000 | 7,500,000 |
| 1期目の当期純利益 | 800,000 | 500,000 |
| 1期目末の資産(商品) | 300,000 | 0 |
| 2期目の売上原価 | 7,680,000 | 7,800,000 |
| 2期目の当期純利益(仮に売上が同じなら) | — | 300,000円多く出る |
1期目の利益が300,000円少なく出て、そのぶん2期目の利益が多く出る。 麺の売れ行きは変わっていないのに、期をまたぐたびに在庫の増減が利益を揺らすことになる。 さらに1期目末の貸借対照表から、倉庫にある300,000円分の小麦粉と麺が消える。 実際には財産として存在しているものが帳簿に無い状態で、 銀行が総資産を見ても実態と合わない。
在庫が増え続ける会社なら毎期利益が過小に、 在庫を減らしている会社なら毎期利益が過大に出る。 どちらも本業の成績とは関係のない要因で数字が動く。
対抗案2:決算整理を、翌期首の日付で仕訳する
実際に作業をするのは4月以降なのだから、作業した日で記録するほうが自然に見える。 問題は、決算書が3月31日時点の姿を示すものだという点にある。
| 3月31日で仕訳(正) | 4月の日付で仕訳 | |
|---|---|---|
| 1期目の減価償却費 | 150,000 | 0 |
| 1期目の当期純利益 | 800,000 | 1,238,000 |
| 1期目末の備品(帳簿価額) | 1,050,000 | 1,200,000 |
| 1期目末の貸倒引当金 | 18,000 | 0 |
| 2期目に持ち越される費用 | 0 | 508,000 |
1期目の利益が438,000円も多く出る(減価償却費150,000+貸倒引当金繰入18,000+ 売上原価の調整△300,000+租税公課△15,000+法人税等340,000などの差の合計)。 そして2期目には、1期目に属する費用が乗ってくる。 どちらの期の損益計算書も、その期の成績を示していないことになる。
そもそも決算整理は「作業の記録」ではなく「決算日の状態に帳簿を合わせる作業」になっている。 3月31日に倉庫に300,000円分の商品があったという事実は、 数えたのが4月2日でも3月31日の事実として書く。 第9章で法人税等の仕訳を決算日の日付にするのも同じ理由だ。
Q. 期末商品棚卸高300,000円は、なぜ計算で出せないのか。仕入と売上から逆算できそうに見える。 A. 三分法では、売った商品の原価を記録していないからだ。 第4章で見たとおり、4月12日に900,000円で麺を売ったとき、 その麺の原価がいくらだったかは仕訳のどこにも出てこない。 だから「いくら売れたか」から「いくら残っているか」を逆算することができない。 逆算できるようにするには、売るたびに原価を記録する方法(売上原価対立法)を採ることになり、 そちらは2級で扱う(boki2-ch02-s01)。 三分法が期末の棚卸を必要とするのは、期中に原価を追わない代わりに期末に数える という設計になっているためになる。
Q. 決算整理の順番は、本当にどうでもよいのか。 A. 法人税等以外は順番を変えても結果が同じになる。 ただし実務では、現物を確かめる作業を最初に固めるのが普通だ。 棚卸も現金の実査も、日が経つと状況が変わってしまうので、 決算日当日か翌日に済ませる必要がある。 計算だけで済む減価償却や貸倒引当金は後回しにできる。 また、貸倒引当金の見積りは棚卸や残高確認の結果を踏まえて決めることがあるので、 情報が揃ってからのほうが判断しやすい。 つまり理論上は自由だが、実務上は現物確認が先になる。
Q. 「その他費用」のようにまとめた科目を使ってよいのか。 A. この教材では、決算整理の手順を追うために科目の数を絞っている。 実際の会社では、給料・水道光熱費・通信費・修繕費・消耗品費・旅費交通費のように 性質ごとに科目を分けて記録する。 分ける理由は第6章で見たものと同じで、 残高を見ただけで中身が判断できるようにするためだ。 損益計算書に「その他費用 955,000」とだけ書かれていても、 それが人件費なのか水道光熱費なのかが分からなければ、前期と比べる意味が薄くなる。 試験では科目が指定されるので、指定されたとおりに書く。
flowchart TD A[決算整理前残高試算表<br/>boki3-ch10-s01] --> B[帳簿の外を見る<br/>棚卸・実査・残高証明] B --> C[売上原価の算定<br/>繰越商品と仕入] B --> D[貸倒引当金<br/>boki3-ch08-s01] B --> E[減価償却<br/>boki3-ch07-s02] B --> F[貯蔵品への振替] C --> G[見越し・繰延べ<br/>boki3-ch12-s02] D --> G E --> G F --> G G --> H[法人税等<br/>boki3-ch09-s02] H --> I[精算表<br/>boki3-ch12-s03]
決算整理の④と⑤は、性格がほかと違う。
棚卸も減価償却も貸倒引当金も、帳簿に無かった事実を書き足す作業だった。 ④と⑤は逆で、帳簿にある金額が、当期のものではないという問題になる。
みずほ食品の支払家賃を見る。決算整理前の残高は2,600,000円。 工場の家賃は月200,000円なので、12か月なら2,400,000円のはずだ。 200,000円多い。理由は、3月末に4月分を前払いしていたからだった。 大家との契約が「翌月分を前月末までに払う」という形になっていて、 4月から翌年3月まで13回払っている。
【要請】 4月分の家賃は、4月に工場を使う対価だ。
1期目は3月31日で終わるので、その200,000円は当期の費用ではない。
払ってはいるが、まだサービスを受け取っていない。
受け取る権利が残っている状態なので、これは資産になる。
これが前払費用で、当期の費用から取り除いて翌期へ渡す。
この操作を繰延べという。
水道光熱費は逆になる。決算整理前の残高は275,000円。 3月分の電気代25,000円は、4月20日に口座から引き落とされる。 まだ払っていないので帳簿に無いが、3月に電気は使っている。 使った以上、それは当期の費用になる。 そして払う義務が残っているので負債が立つ。 これが未払費用で、当期の費用に加える。この操作を見越しという。
【必然】 この2つが必要になる理由は1つに絞れる。
現金が動いた日と、サービスを受けた期間がずれるからだ。
家賃も電気代も利息も保険料も、時間の経過に対して発生する。
その時間が決算日をまたぐと、払った日で費用にするか、経過した時間で費用にするかで金額が変わる。
簿記は後者を採る。これを発生主義といい、
第4章で「掛けで売った時点で売上を立てる」と決めたのと同じ考え方になる。
覚え方の取っ掛かりは「前は資産か負債、未は費用か収益」ではなく、 払ったか受け取ったかではなく、時間が経過したかで決める、と覚えるほうが事故が少ない。
第6章で、前払金と前払費用の違いを見た。 ここでもう一度確かめておく。どちらも「先に払った」資産だが、 先に払った相手から何を受け取る権利なのかが違う。
前払金は、物やサービスそのものを受け取る権利。 西美濃製粉に100,000円の手付金を払えば、100,000円分の小麦粉を受け取る権利が残る。 1か月経とうが3か月経とうが、届くまでは100,000円のままで、時間では減らない。
前払費用は、時間の経過に対して払った分の未経過部分。 家賃200,000円を前払いすれば、4月が過ぎた時点で権利は消える。 1年分2,400,000円を前払いしていれば、1か月経つごとに200,000円ずつ減っていく。
判定は「按分できるか」で付く。 時間で切り分けられるなら前払費用、物の引渡しを待っているだけなら前払金になる。 同じ関係が、未収入金と未収収益、未払金と未払費用、前受金と前受収益にもある。
| 1回きりの取引 | 時間の経過 | |
|---|---|---|
| こちらが受け取る側(資産) | 未収入金 | 未収収益 |
| こちらが払う側(負債) | 未払金 | 未払費用 |
| 先に払った(資産) | 前払金 | 前払費用 |
| 先に受け取った(負債) | 前受金 | 前受収益 |
左の列は期中の取引でその場で立つ。右の列は決算日に計算して初めて姿を現す。 この違いが、経過勘定という呼び名の由来になっている。
で、幹の話に戻ると、決算整理で出てくるのは右の列の4つだけで、 左の列は第6章ですでに扱っている。
経過勘定には、決算整理仕訳とセットで行う後始末がある。 翌期首の日付で、決算整理と反対の仕訳を書く。これを再振替仕訳という。
みずほ食品の未払水道光熱費25,000円で考える。 3月31日に「水道光熱費25,000/未払費用25,000」と書いた。 そして4月20日、3月分の電気代25,000円が口座から引き落とされる。 このとき経理担当が引落しの明細を見て、いつもどおり 「水道光熱費25,000/当座預金25,000」と仕訳したらどうなるか。 同じ25,000円が2回費用になる。
これを防ぐには、4月20日の仕訳で借方を未払費用にする必要がある。 だが引落しの明細を見ただけで「これは前期に未払計上した分だ」と気づくのは難しい。 毎月同じ電気代が引き落とされているので、4月分と見分けが付かない。
そこで、4月1日の時点で「未払費用25,000/水道光熱費25,000」と反対仕訳を書いておく。 水道光熱費の残高が一時的にマイナス25,000円になるが、 4月20日に通常どおり「水道光熱費25,000/当座預金25,000」と書けば相殺されてゼロになる。 期中は何も考えずいつもの仕訳をすればよい状態を作るのが、再振替の目的になる。
貯蔵品も同じで、翌期首に「租税公課15,000/貯蔵品15,000」と戻す。 そうしておけば、その印紙を使ったときに何も書かなくてよい。
3級では再振替仕訳そのものが問われる場面は限られるが、 なぜ翌期首に戻すのかを押さえておくと、経過勘定が期をまたぐ道具だと腑に落ちる。
で、幹の話に戻ると、見越しと繰延べは決算日だけの操作ではなく、 翌期首の再振替までを含めて1組の手続きになっている。
みずほ食品の1期目に出てきた経過勘定は、前払費用と未払費用の2つだけだった。
④ 前払費用(費用の繰延べ)
| 金額 | |
|---|---|
| 決算整理前の支払家賃 | 2,600,000 |
| 契約 | 翌月分を前月末に支払(月200,000円) |
| 当期に対応する分(4月〜3月の12か月) | 2,400,000 |
| 翌期分(4月分) | 200,000 |
| 決算整理後の支払家賃 | 2,400,000 |
⑤ 未払費用(費用の見越し)
| 金額 | |
|---|---|
| 決算整理前の水道光熱費 | 275,000 |
| 3月分の電気代(4月20日引落し) | 25,000 |
| 決算整理後の水道光熱費 | 300,000 |
1期目に前受収益と未収収益が出てこなかったのは、 みずほ食品が誰かに時間を貸す取引をしていなかったからだ。 第6章の揖斐川フーズへの貸付は 9月1日から3月1日までで、利息5,000円は3月1日に受け取っている。 決算日をまたいでいないので、未収の利息が生じなかった。
2期目には両方が出てくる。
| # | 出来事 | 決算日(2028/3/31)での扱い | 金額 |
|---|---|---|---|
| ⑧ | 2027/12/1、揖斐川フーズへ600,000円を貸付(年利2%、1年、利息は返済時に一括受取) | 12月〜3月の4か月分が未収 | 4,000 |
| ⑨ | 2028/1/1、資材置場の一部を月20,000円で貸し、1月〜6月の6か月分120,000円を受取 | 4月〜6月の3か月分が翌期 | 60,000 |
⑧の未収収益は、600,000 × 2% × 4/12 = 4,000円。 まだ受け取っていないが、4か月分の時間は経過しているので当期の収益になる。 受け取る権利が資産として立つ。
⑨の前受収益は、120,000 × 3/6 = 60,000円。 受け取ってはいるが、4月〜6月の3か月分はまだ場所を貸していない。 貸す義務が残っているので負債が立ち、当期の収益から取り除く。
4つを表にすると、こうなる。
| 費用 | 収益 | |
|---|---|---|
| 繰延べ(帳簿にあるが当期のものでない) | 前払費用(資産) | 前受収益(負債) |
| 見越し(当期のものだが帳簿に無い) | 未払費用(負債) | 未収収益(資産) |
prepaid expenses も同じ構成になっている。
科目名は内容に応じて「前払家賃」「前払保険料」のように具体的に書くこともある。accrued expenses で、
accrue(発生して積み上がる)が、時間とともに増えていく性質を表している。accrued revenues で、accrue は未払費用と同じ「発生して積み上がる」。支払家賃の繰延べで1回通す。
未払の場合は3と4で「まだ帳簿に無い期間」を数えることになり、 5で費用に加えて負債を立てる。方向が逆になるだけで、手順は同じになる。
一般化すると、経過勘定の金額は その項目の1か月(または1日)あたりの金額 × ずれている月数(日数)。
この手順で事故が起きるのは、2を飛ばして「1か月分」と決めつけたときだ。 問題文が「保険料は8月1日に向こう1年分を支払った」であれば、 翌期分は4か月分になる。何か月分が帳簿に乗っているかを、 契約の内容から必ず数え直す。 日付を書き出して、決算日で線を引くのが確実になる。
4/1 3/31(決算日) 4/30
|----------当期 12か月----------|--翌期--|
支払家賃 2,600,000(13か月分)が乗っている
↑この200,000が前払費用
2027/3/31 ④ 支払家賃のうち翌期4月分を繰り延べる
(借) 前払家賃 200,000 (貸) 支払家賃 200,000
2027/3/31 ⑤ 3月分の水道光熱費を見越す
(借) 水道光熱費 25,000 (貸) 未払費用 25,000
2027/4/1 再振替(翌期首)
(借) 支払家賃 200,000 (貸) 前払家賃 200,000
(借) 未払費用 25,000 (貸) 水道光熱費 25,000
2028/3/31 ⑧ 貸付金の利息を見越す(2期目)
(借) 未収利息 4,000 (貸) 受取利息 4,000
2028/3/31 ⑨ 受取地代のうち翌期分を繰り延べる(2期目)
(借) 受取地代 60,000 (貸) 前受地代 60,000
対抗案1:現金が動いた日で費用にする(現金主義)
記録が単純になる。払った日に費用、受け取った日に収益と決めれば、 決算整理そのものが要らなくなる。 みずほ食品の1期目と2期目を並べる(2期目も同じ条件が続くとする)。
| 発生主義(正) | 現金主義 | |
|---|---|---|
| 1期目の支払家賃 | 2,400,000 | 2,600,000 |
| 1期目の水道光熱費 | 300,000 | 275,000 |
| 1期目の当期純利益 | 800,000 | 625,000 |
| 2期目の支払家賃 | 2,400,000 | 2,400,000 |
| 2期目の水道光熱費 | 300,000 | 325,000 |
1期目の利益が175,000円少なく出る。 しかも、みずほ食品は工場を1年間ずっと同じ条件で借りていて、 電気の使い方も変わっていない。契約も使い方も同じなのに、 支払日がいつかというだけで期の費用が動く。
決定的なのは、大家との契約を「当月分を当月末に払う」に変えた瞬間、 支払家賃が2,400,000円になって利益が200,000円増えることだ。 支払条件を変えるだけで利益を作れるなら、決算書は成績表として機能しなくなる。 第4章で「掛けで売っても売上は立つ」と決めたのと同じ理由で、 時間に対する費用も、時間の経過で認識する。
どちらも資産・負債の側は同じなので、貸借対照表の合計額は変わらない。 それでも科目を分ける理由は、決算のたびに計算し直す必要があるかどうかにある。
| 前払費用 | 前払金 | |
|---|---|---|
| 発生の原因 | 時間の経過 | 物の引渡しを待っている |
| 決算での作業 | 経過月数を数えて按分する | 何もしない(届くまでそのまま) |
| 残高が減る理由 | 時間が経つ | 物が届く |
| 翌期首の再振替 | する | しない |
前払金として処理すると、翌期首の再振替をしない扱いになる。 みずほ食品の200,000円が前払金のまま残っていると、 4月に工場を使ったのに支払家賃が計上されず、 4月分の費用が200,000円少なくなる。翌期の月次損益がそこだけ歪む。
さらに、貸借対照表を見る側から見た意味も違う。 前払金150,000円は「小麦粉が届く予定がある」ことを示すが、 前払費用200,000円は「翌期の家賃を払い済み」を示す。 どちらも資産だが、読み取れる情報が違う。 第6章で科目を細かく分ける理由として挙げたことが、そのまま当てはまる。
Q. 前払費用は資産だというが、家賃を払ってしまった以上、手元には何も残っていないように見える。 A. 残っているのは物ではなく権利になる。 4月分の家賃を払った時点で、みずほ食品は4月に工場を使う権利を手に入れている。 もし大家が4月に工場を貸さなければ、200,000円を返してもらえる。 第6章の差入保証金と同じ構造で、 返ってくる(または使える)ものは資産になる。 逆に、3月分の家賃はすでに工場を使い切っているので、権利は何も残っていない。だから費用になる。
Q. 「前払費用」と「前払家賃」は、どちらの科目名を書けばよいのか。 A. どちらも使われる。試験では問題文や答案用紙の指定に従う。 実務では、内容が分かるように「前払家賃」「前払保険料」と具体的に書くことが多く、 貸借対照表に載せるときに「前払費用」としてまとめる。 未払費用も同じで、「未払家賃」「未払利息」と書いておいて、 決算書では「未払費用」に集約する。 科目名が違っても、性格(経過勘定)は同じだと押さえておけばよい。
Q. 未収収益を計上すると、まだ受け取っていない金を収益にすることになる。貸倒引当金と同じで気持ちが悪い。 A. 引っかかる場所は似ているが、確実性がまったく違う。 未収収益は、契約で決まった時間がすでに経過しているぶんの収益になる。 2期目の貸付なら、12月から3月までの4か月間、実際に600,000円を貸していた。 その4か月分の利息4,000円を請求する根拠は契約書にあり、金額も計算で一意に決まる。 これに対して貸倒引当金は、これから焦げ付くかどうかという見積りになる。 未収収益は「起きた事実の記録」、貸倒引当金は「起きるかもしれないことの見積り」で、 帳簿への載せ方は似ていても中身の性格は逆になる。
flowchart TD
A[時間に対する費用・収益] --> B{決算日をまたぐか}
B -- またぐ・すでに払った/受け取った --> C[繰延べ]
B -- またぐ・まだ払っていない/受け取っていない --> D[見越し]
C --> E[前払費用<br/>資産]
C --> F[前受収益<br/>負債]
D --> G[未払費用<br/>負債]
D --> H[未収収益<br/>資産]
E --> I[翌期首に再振替]
F --> I
G --> I
H --> I
E -.物を待つなら.-> J[前払金<br/>boki3-ch06-s02]
決算整理仕訳を7本書いた。次にやることは、その結果を決算書の形に組み直す作業になる。
正式な手順を踏むなら、7本を仕訳帳に書き、総勘定元帳へ転記し、 もう一度残高を集計して決算整理後残高試算表を作り、 そこから損益計算書と貸借対照表へ振り分ける。 帳簿を何度も行き来することになる。
【要請】 そこで、この行き来を1枚の紙の上で済ませてしまう表が使われる。
左端に決算整理前の残高試算表を置き、その右に決算整理の金額を書き込み、
さらに右で損益計算書と貸借対照表に振り分ける。
横に列が並ぶので、1行を左から右へたどれば1つの勘定の運命が全部見える。
これが精算表で、列が8つあるので8桁精算表と呼ばれる。
| 残高試算表 | 修正記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 |
|---|---|---|---|
| 借方・貸方 | 借方・貸方 | 借方・貸方 | 借方・貸方 |
【必然】 精算表の要点は、行の左から右への計算が1つのルールで決まることにある。
残高試算表の金額に修正記入を足し引きして、その結果を損益計算書か貸借対照表のどちらかへ移す。
足すか引くかは、同じ側なら足す・反対側なら引く、それだけになる。
どちらの表へ移すかは、その科目が収益・費用なら損益計算書、
資産・負債・純資産なら貸借対照表と決まっている。
そして最後に、損益計算書の左右の差額と貸借対照表の左右の差額が、 必ず同じ金額になる。それが当期純利益で、 第1章で見た「2枚の紙が同じ利益を指す」という話が、 1枚の表の上で目に見える形になる。
覚え方の取っ掛かりは「精算表は、横に読む表」。
精算表は英語で work sheet という。「作業用紙」で、
決算書を作るための下書きという位置づけがそのまま名前になっている。
日本語の「精算表」は、決算を精(くわ)しく算(かぞ)える表、という当て方になる。
手書きで帳簿を作っていた時代、この表には実務上の必然があった。 決算整理仕訳を元帳へ転記してしまうと、 結果を見てから「やはり違う」と気づいたときに元帳を書き直すことになる。 インクで書いた帳簿を訂正するのは大ごとで、訂正の跡が残る。 そこで、まず精算表という下書きの上で全部を通してみて、 左右が合い、利益が出てから、正式に仕訳帳と元帳へ書く。 帳簿を汚さずに決算を試せるのが精算表の役割だった。
会計ソフトを使えば、決算整理を入力した瞬間に損益計算書も貸借対照表も出る。 やり直しも一瞬で、帳簿が汚れることもない。 だから実務で精算表を作る場面はほとんど無くなった。
それでも試験で問われ続けているのは、 決算の全体像を1枚で見渡せる形が、ほかに無いからだろう。 決算整理がどの科目をどう動かし、それが最終的に利益のどこに効くのか。 これを一望できるのは精算表だけになる。
で、幹の話に戻ると、精算表は決算書そのものではなく下書きで、 正式な記録は仕訳帳と元帳のほうにある。だから精算表に書いただけでは決算は終わらない。
精算表の損益計算書欄も貸借対照表欄も、最後に左右が一致する。 一致したときに「決算が正しくできた」と思いたくなるが、 第10章で見たのと同じ限界がここにもある。
精算表が一致するのは、もとの残高試算表が一致していて、 修正記入も貸借同額で書かれているからにすぎない。 決算整理の金額そのものが間違っていても、借方と貸方に同じ金額を書けば左右は合う。
減価償却費を150,000円ではなく15,000円と書いたとする。 借方の減価償却費が15,000円、貸方の累計額が15,000円。左右は完全に一致する。 損益計算書も貸借対照表も釣り合ったまま完成し、当期純利益は135,000円多く出る。 試算表でも仕訳日計表でも同じで、 貸借が一致する形の誤りは、どの表でも捕まらない。
だから決算整理の金額は、表の一致ではなく計算の根拠のほうで確かめる。 取得原価と耐用年数、債権残高と見積率、棚卸表の集計、契約書の月数。 前の節で「机の上で始めない」と書いたのは、この意味でもある。
で、幹の話に戻ると、精算表の左右が合うことは必要条件であって十分条件ではない。 合わなければ確実に間違っているが、合ったからといって正しいとは言えない。
決算整理前残高試算表(第1節)に、7つの決算整理を書き込む。
修正記入の内訳
| # | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| ① | 繰越商品 | 300,000 | 仕入 | 300,000 |
| ② | 貸倒引当金繰入 | 18,000 | 貸倒引当金 | 18,000 |
| ③ | 減価償却費 | 150,000 | 備品減価償却累計額 | 150,000 |
| ④ | 前払家賃 | 200,000 | 支払家賃 | 200,000 |
| ⑤ | 水道光熱費 | 25,000 | 未払費用 | 25,000 |
| ⑥ | 貯蔵品 | 15,000 | 租税公課 | 15,000 |
| ⑦ | 法人税等 | 340,000 | 未払法人税等 | 340,000 |
| 合計 | 1,048,000 | 合計 | 1,048,000 |
精算表(2027年3月31日)
| 勘定科目 | 試算表・借 | 試算表・貸 | 修正・借 | 修正・貸 | P/L・借 | P/L・貸 | B/S・借 | B/S・貸 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 現金 | 1,850,000 | 1,850,000 | ||||||
| 当座預金 | 1,968,000 | 1,968,000 | ||||||
| 売掛金 | 900,000 | 900,000 | ||||||
| 繰越商品 | 300,000 | 300,000 | ||||||
| 備品 | 1,200,000 | 1,200,000 | ||||||
| 買掛金 | 600,000 | 600,000 | ||||||
| 借入金 | 1,500,000 | 1,500,000 | ||||||
| 資本金 | 3,000,000 | 3,000,000 | ||||||
| 売上 | 11,500,000 | 11,500,000 | ||||||
| 受取利息 | 5,000 | 5,000 | ||||||
| 仕入 | 7,500,000 | 300,000 | 7,200,000 | |||||
| 支払家賃 | 2,600,000 | 200,000 | 2,400,000 | |||||
| 水道光熱費 | 275,000 | 25,000 | 300,000 | |||||
| 支払利息 | 60,000 | 60,000 | ||||||
| 租税公課 | 45,000 | 15,000 | 30,000 | |||||
| その他費用 | 207,000 | 207,000 | ||||||
| 小計 | 16,605,000 | 16,605,000 | ||||||
| 貸倒引当金繰入 | 18,000 | 18,000 | ||||||
| 貸倒引当金 | 18,000 | 18,000 | ||||||
| 減価償却費 | 150,000 | 150,000 | ||||||
| 備品減価償却累計額 | 150,000 | 150,000 | ||||||
| 前払家賃 | 200,000 | 200,000 | ||||||
| 未払費用 | 25,000 | 25,000 | ||||||
| 貯蔵品 | 15,000 | 15,000 | ||||||
| 法人税等 | 340,000 | 340,000 | ||||||
| 未払法人税等 | 340,000 | 340,000 | ||||||
| 1,048,000 | 1,048,000 | 10,705,000 | 11,505,000 | 6,433,000 | 5,633,000 | |||
| 当期純利益 | 800,000 | 800,000 | ||||||
| 合計 | 11,505,000 | 11,505,000 | 6,433,000 | 6,433,000 |
損益計算書欄の差 11,505,000 − 10,705,000 = 800,000円。 貸借対照表欄の差 6,433,000 − 5,633,000 = 800,000円。 両方が800,000円で一致する。これが当期純利益になる。
損益計算書欄では利益を借方に、貸借対照表欄では貸方に書く。 借方に書くのは、収益のほうが大きいので左が足りないからで、 貸方に書くのは、利益が純資産の増加として右側に積まれるからだ (第1章)。
なお、費用の合計10,705,000円は第1章の損益計算書と一致している。 あちらの「その他費用 955,000」は、 貸倒引当金繰入18,000 + 支払利息60,000 + 租税公課30,000 + その他費用207,000 + 法人税等340,000 の合計になっている。
work sheet(作業用紙)で、日本語が作業の中身を、
英語が位置づけ(下書き)を名前にしている。列が8つなので8桁精算表と呼ぶ。
修正記入の欄を省いた6桁精算表、
決算整理後残高試算表の欄を加えた10桁精算表もある。仕入の行で1回通す。精算表は1行ずつ、左から右へ進めるのが鉄則になる。
一般化すると、精算表の各行は 残高試算表 ± 修正記入 → 損益計算書または貸借対照表という1本の流れになる。
この手順で事故が起きるのは、4を勘で決めたときだ。 繰越商品は資産なので貸借対照表、貸倒引当金繰入は費用なので損益計算書、 貸倒引当金は資産のマイナスなので貸借対照表の貸方。 名前が似ている科目ほど行き先が分かれるので、 その科目が5要素のどれかを毎回言葉にするのが確実になる。
精算表そのものに仕訳はないが、修正記入の欄は決算整理仕訳を1本ずつ写したものになる。 対応を確かめておく。
決算整理仕訳 ③
(借) 減価償却費 150,000 (貸) 備品減価償却累計額 150,000
↓ 精算表の修正記入欄へ
減価償却費の行 … 修正記入の借方に 150,000
備品減価償却累計額の行 … 修正記入の貸方に 150,000
↓ 左から右へ
減価償却費(費用)… 損益計算書欄の借方に 150,000
備品減価償却累計額(資産のマイナス)… 貸借対照表欄の貸方に 150,000
対抗案1:精算表を作らず、決算整理仕訳を直接元帳へ転記して決算書を作る
精算表は下書きなので、省いても決算書は作れる。実際、会計ソフトはこの経路をとる。 手で作業する場合に何が起きるかを比べる。
| 精算表を通す | 直接元帳へ | |
|---|---|---|
| 決算整理を書き込む場所 | 鉛筆で1枚の紙 | インクで元帳 |
| 途中で誤りに気づいたとき | 消して書き直す | 訂正の記録が元帳に残る |
| 左右の一致を確かめる時点 | 決算書を作る前 | 元帳へ転記した後 |
| 利益が見えるまでの手数 | 1枚で完結 | 元帳を集計し直す |
決定的なのは3行目になる。 直接元帳へ転記した場合、左右が合わないと分かるのは転記を全部終えた後だ。 そこから誤りを探して元帳を訂正することになる。 精算表なら、決算書を作る前の段階で一致を確かめられる。
さらに、みずほ食品の例で言えば決算整理は7本だが、 実際の会社なら数十本になる。 その全部を元帳へ転記してから「利益がマイナスだ」と気づくのと、 1枚の紙の上で気づくのとでは、やり直しの手間がまったく違う。
対抗案2:損益計算書欄だけを作って、貸借対照表欄は省く
利益さえ分かればよい、という考え方になる。 省いた場合、検算する手段が無くなる。
| 両方作る | 損益計算書欄だけ | |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 800,000(2通りで一致) | 800,000(1通りだけ) |
| 誤りの検出 | 2つの差額が食い違えば分かる | 分からない |
| 貸借対照表 | 精算表から作れる | 別途、元帳を集計し直す |
第1章で見たとおり、当期純利益は 「収益 − 費用」(損益法)でも「期末純資産 − 期首純資産」(財産法)でも計算できる。 精算表が両方の欄を持っているのは、この2通りの計算を並べて突き合わせるためになる。
たとえば繰越商品300,000円を、貸借対照表欄へ移すのを忘れたとする。 損益計算書欄の当期純利益は800,000円のままだが、 貸借対照表欄の差額は500,000円になる。 2つが食い違うので、その時点で誤りが分かる。 損益計算書欄だけを作っていたら、この誤りは決算書まで残ることになる。
Q. 損益計算書欄では当期純利益を借方に書くのに、貸借対照表欄では貸方に書くのはなぜか。 A. どちらも「少ないほうの側に書いて釣り合わせる」という同じ操作をしている。 損益計算書欄は収益(貸方11,505,000)が費用(借方10,705,000)より大きいので、借方が800,000円足りない。 貸借対照表欄は資産(借方6,433,000)が負債・純資産(貸方5,633,000)より大きいので、貸方が800,000円足りない。 意味としても筋が通っていて、 利益が出るとは「収益が費用を上回ること」であり、同時に「純資産が増えること」でもある。 純資産は貸方にあるので、増えれば貸方に立つ。 同じ800,000円を、片方は差額として、片方は純資産の増加として書いていることになる。
Q. 決算整理で初めて出てくる科目は、精算表のどこに書けばよいのか。 A. 残高試算表の欄が空欄の行として、表の下に追加していく。 みずほ食品なら、貸倒引当金繰入・貸倒引当金・減価償却費・備品減価償却累計額・ 前払家賃・未払費用・貯蔵品・法人税等・未払法人税等の9つが増える。 試験の答案用紙にはあらかじめ行が印刷されていることが多いので、 印刷された科目名を先に見て、どの決算整理が問われているかを推測するという解き方もできる。 「貸倒引当金繰入」の行があれば貸倒れの整理があると分かる。
Q. 精算表の当期純利益と、実際の決算書の当期純利益は同じものか。 A. 同じ金額になる。精算表の損益計算書欄をそのまま縦に並べ直せば損益計算書、 貸借対照表欄を並べ直せば貸借対照表になる。 ただし並べ方と表示は変わる。決算書では繰越商品を「商品」と表示したり、 仕入を「売上原価」と表示したり、貸倒引当金を売掛金の下に△で並べたりする。 科目名と配置が変わるだけで、金額は動かない。 その書き換えのルールが次の節になる。
flowchart LR
A[決算整理前<br/>残高試算表] --> B[修正記入<br/>決算整理仕訳]
B --> C{5要素はどれか}
C -- 収益・費用 --> D[損益計算書欄]
C -- 資産・負債・純資産 --> E[貸借対照表欄]
D --> F[差額 = 当期純利益<br/>借方に置く]
E --> G[差額 = 当期純利益<br/>貸方に置く]
F --> H{一致するか}
G --> H
H --> I[財務諸表へ<br/>boki3-ch12-s04]
精算表が完成した。当期純利益は800,000円で、左右も一致している。 残っている作業は2つある。
1つは、外に見せる形に書き換えること。 精算表は社内の作業用紙なので、勘定科目の名前も並び順も帳簿のままになっている。 これを、株主や銀行や税務署が読む形に整える。
もう1つは、帳簿そのものを締めること。 4月1日から始まった1期目の記録に区切りを付けて、 2期目の帳簿を白紙から始められる状態にする。
【必然】 なぜ帳簿を締める必要があるのかというと、
収益と費用は1年で消えなければならないからだ。
売上11,500,000円は1期目の成績であって、2期目に持ち越すものではない。
4月1日に売上勘定が11,500,000円から始まったら、
2期目の売上がいくらだったのか永久に分からなくなる。
だから売上も仕入も家賃も、期末にいったん全部ゼロにする。
一方で、資産・負債・純資産は消してはいけない。 3月31日に現金1,850,000円があるなら、4月1日にも1,850,000円ある。 機械も借入金も資本金も、日付が変わっただけで消えたりしない。 残高をそのまま翌期へ引き継ぐ。
【要請】 この違いが、第1章で見た2枚の紙の性格そのものになる。
損益計算書は1年間の流れ(フロー)なので毎年リセットされ、
貸借対照表はある一瞬の残高(ストック)なので積み上がっていく。
帳簿の締切という作業は、この2つを実際に分ける操作になる。
そして、消える側(収益・費用)と残る側(資産・負債・純資産)をつなぐ1本の線がある。 収益と費用の差、つまり当期純利益を繰越利益剰余金へ移す仕訳だ。 これで1年間の成績が純資産に積まれ、2期目の出発点になる。
覚え方の取っ掛かりは「消える科目はゼロにしてから、その差だけを残る側へ渡す」。
みずほ食品の1期目は2026年4月1日から2027年3月31日までだった。 日本の会社は3月決算が多く、国の会計年度も4月から3月になっている。
この4月始まりが定まったのは1886年(明治19年)からだとされる。 それ以前は1月始まりや7月始まりの時期もあり、何度か変更されている。 4月に落ち着いた理由については、当時の国の歳入の中心が地租、 つまり米の収穫に対する税だったことと関係があるという説が有力だ。 秋に収穫した米を換金して納税する流れを考えると、 1月に年度が変わると納税と年度末が重なって都合が悪い。 納税期間を年度の途中に収めるには、春に区切るのが合理的だった、という説明になる。
その後、国の会計年度に合わせて学校の年度も企業の決算期も4月始まりが広まった。 ただし義務ではないので、2月決算の小売業、9月決算の会社もある。 むしろ世界的には12月決算が主流で、 日本の3月決算は珍しい部類に入る。
決算期をどこに置くかは、実務では在庫が少ない時期や繁忙期を外して決める。 棚卸を実際に行う必要があるので、 商品がいちばん少ない月の末日を期末にすると作業が軽くなる。
で、幹の話に戻ると、決算日がいつであれ、やることは同じになる。 その日で収益と費用を締め切り、差額を純資産へ移し、残高を翌期へ渡す。
決算が終わると、同じ内容の書類がいくつかの相手に渡る。 渡す相手によって、求められる形と重点が変わる。
税務署に出すのは法人税の申告書で、 決算書を添付したうえで、会計の利益から課税所得へ調整する別表を付ける (第9章)。ここで見られるのは、 費用として認められない項目が正しく除かれているかになる。
金融機関に出すのは決算書一式と、多くの場合は勘定科目内訳明細書だ。 内訳明細書には、売掛金や買掛金の相手先ごとの残高、 借入金の借入先ごとの残高、役員への貸付金などが並ぶ。 決算書の「売掛金 900,000」という1行では分からない中身がここに出る。 特定の1社に集中していないか、回収の遅れている先はないか、 役員貸付金が膨らんでいないかを見る。
株主に見せるのは、株主総会に提出する計算書類になる。 みずほ食品のように株主が社長ひとりなら形式的だが、 第9章で見たとおり、配当を決めるのは株主総会なので、 剰余金がいくらあるかを示す必要がある。
同じ数字でも、税務は「認められるか」、 金融機関は「返せるか」、株主は「配れるか」を見ている。 決算書を作る側から見ると、どの相手にも同じ数字を出すのが前提で、 相手ごとに数字を変えることはできない。
で、幹の話に戻ると、精算表を決算書の形に書き換える作業は、 社内の帳簿を外の人が読める形に翻訳する工程になる。 科目名を変えたり並べ替えたりするのは、読む人が決まっているからだ。
損益計算書(2026年4月1日から2027年3月31日まで)
| 費用 | 金額 | 収益 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 7,200,000 | 売上高 | 11,500,000 |
| 支払家賃 | 2,400,000 | 受取利息 | 5,000 |
| 水道光熱費 | 300,000 | ||
| 支払利息 | 60,000 | ||
| 租税公課 | 30,000 | ||
| 貸倒引当金繰入 | 18,000 | ||
| 減価償却費 | 150,000 | ||
| その他費用 | 207,000 | ||
| 法人税等 | 340,000 | ||
| 当期純利益 | 800,000 | ||
| 合計 | 11,505,000 | 合計 | 11,505,000 |
貸借対照表(2027年3月31日)
| 資産 | 金額 | 負債・純資産 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 1,850,000 | 買掛金 | 600,000 |
| 当座預金 | 1,968,000 | 未払費用 | 25,000 |
| 売掛金 900,000 | 未払法人税等 | 340,000 | |
| 貸倒引当金 △18,000 | 882,000 | 借入金 | 1,500,000 |
| 商品 | 300,000 | 資本金 | 3,000,000 |
| 貯蔵品 | 15,000 | 繰越利益剰余金 | 800,000 |
| 前払費用 | 200,000 | ||
| 備品 1,200,000 | |||
| 減価償却累計額 △150,000 | 1,050,000 | ||
| 合計 | 6,265,000 | 合計 | 6,265,000 |
精算表から名前が変わっているところがある。
| 精算表の科目 | 財務諸表での表示 | 理由 |
|---|---|---|
| 仕入 | 売上原価 | 費用の中身を示す名前にする |
| 売上 | 売上高 | 金額であることを明示する |
| 繰越商品 | 商品 | 「繰越」は帳簿上の呼び方 |
| 前払家賃 | 前払費用 | 経過勘定としてまとめる |
| 貸倒引当金 | 売掛金の下に△ | 評価勘定なので控除形式で示す |
| 備品減価償却累計額 | 備品の下に△ | 同上 |
貸倒引当金と減価償却累計額を右側(貸方)ではなく資産の下に△で並べるのは、 第7章・第8章で見たとおり、 取得原価(額面)と評価の両方を残したまま、差引額も見せるためになる。
帳簿の締切(決算振替仕訳)
| # | 内容 | 仕訳 |
|---|---|---|
| 1 | 収益を損益勘定へ集める | (借) 売上・受取利息 / (貸) 損益 |
| 2 | 費用を損益勘定へ集める | (借) 損益 / (貸) 各費用 |
| 3 | 損益の残高を繰越利益剰余金へ | (借) 損益 800,000 / (貸) 繰越利益剰余金 800,000 |
1と2を損益振替、3を資本振替という。 この3本を書き終えると、収益と費用の勘定はすべて残高ゼロになり、 差額800,000円が繰越利益剰余金という純資産の科目に移る。
3月31日の締切を、順に通す。
一般化すると、締切は **「収益・費用はゼロにして差額を純資産へ、資産・負債・純資産は残高を翌期へ」**になる。
この手順で迷いが出るのは、どの勘定をゼロにするかを迷ったときだ。 判定は5要素で決まる。収益と費用はゼロ、それ以外は繰越。 第1章の5つの箱に戻れば、必ず答えが出る。
2027/3/31 収益を損益勘定へ振り替える(損益振替)
(借) 売 上 11,500,000 (貸) 損 益 11,505,000
(借) 受取利息 5,000
2027/3/31 費用を損益勘定へ振り替える(損益振替)
(借) 損 益 10,705,000 (貸) 仕 入 7,200,000
(貸) 支払家賃 2,400,000
(貸) 水道光熱費 300,000
(貸) 支払利息 60,000
(貸) 租税公課 30,000
(貸) 貸倒引当金繰入 18,000
(貸) 減価償却費 150,000
(貸) その他費用 207,000
(貸) 法人税等 340,000
2027/3/31 損益勘定の残高を繰越利益剰余金へ(資本振替)
(借) 損 益 800,000 (貸) 繰越利益剰余金 800,000
対抗案1:収益・費用の勘定も、残高のまま翌期へ繰り越す
わざわざゼロにする手間が省ける。何が起きるかを見る。
| 締め切る(正) | 繰り越す | |
|---|---|---|
| 2期目期首の売上勘定 | 0 | 11,500,000 |
| 2期目の売上が9,000,000だった場合の期末残高 | 9,000,000 | 20,500,000 |
| 2期目の損益計算書の売上高 | 9,000,000 | 20,500,000 |
| 前期との比較 | できる | できない |
2期目の売上が9,000,000円まで落ちていても、 帳簿の売上勘定は20,500,000円と表示される。 業績が落ちた年ほど数字が大きくなるという、意味の反転した帳簿になる。 創業から10年経てば、売上勘定は1億円を超えるが、それは10年分の合計でしかない。
さらに、当期純利益も計算できなくなる。 第1章で見た「収益 − 費用」は1年間の収益と費用でなければ意味がない。 損益計算書が「1年間の流れ」を示す表である以上、 その材料になる勘定も1年ごとに区切られている必要がある。
対抗案2:当期純利益を、繰越利益剰余金ではなく「当期純利益」という科目のまま残す
利益がいくら出たかが帳簿に残るので分かりやすく見える。 2期目以降で何が起きるかを見る。
| 繰越利益剰余金へ移す(正) | 当期純利益のまま残す | |
|---|---|---|
| 1期目末の純資産 | 資本金3,000,000+剰余金800,000 | 資本金3,000,000+当期純利益800,000 |
| 2期目末(利益900,000の場合) | 資本金3,000,000+剰余金1,700,000 | 資本金3,000,000+当期純利益800,000+当期純利益900,000 |
| 配当できる金額 | 剰余金の残高で一目 | 何年分かを足す必要がある |
| 「当期」がどれか | 明確 | 2つの「当期」が並ぶ |
「当期純利益」という名前はその期の成績を指す言葉なので、 翌期になった瞬間にそれは当期ではなくなる。 科目として残し続けると、何年分もの「当期純利益」が貸借対照表に並ぶことになる。
繰越利益剰余金という科目名が「繰り越した」と言っているのは、 過去の利益の累計を保持する箱だからだ(第9章)。 配当を決めるときに見るのはこの累計で、 1年分の当期純利益ではない。 第1章で1期目だけ両者が同じ800,000円になったのは、 期首の剰余金がゼロだったからにすぎない。
Q. 損益勘定というものが総勘定元帳にあるのか。資産でも負債でもないのに。 A. ある。ただし決算のときだけ使い、期中は残高がゼロのまま存在しない扱いになる。 5要素のどれでもない集計専用の箱で、 収益と費用を全部集めて差額を出したら、その差額も繰越利益剰余金へ渡してゼロになる。 1年に一度だけ現れて消える勘定なので、財務諸表には出てこない。 第11章の仕訳日計表と同じで、 集計のためだけに存在する中継地点だと考えるとよい。
Q. 決算書を作ってから帳簿を締めるのか、締めてから決算書を作るのか。 A. どちらでもよく、実務では並行して進む。 精算表の段階で損益計算書と貸借対照表の数字は出ているので、 決算書はそこから書ける。帳簿の締切は、帳簿を翌期へ引き渡すための作業になる。 理屈のうえでは、締切の結果として損益勘定に集まった数字が損益計算書、 繰り越した残高を並べたものが貸借対照表なので、 締めてから書くのが本来の順序になる。 試験では、精算表を作る問題と財務諸表を作る問題と締切の問題が別々に出るので、 どの工程を問われているかを最初に見分けることになる。
Q. 1期目が終わった。この教材の続きはどこへ行くのか。 A. みずほ食品は2期目、3期目と続く。 3期目には第2工場を増設し、外から4,000,000円を集め、 別法人の帳面が成績に影響するようになる。 そこで必要になるのが2級の範囲で、boki2-ch01から始まる。 減価償却は方法が3つに増え(boki2-ch05-s01)、 損益計算書は5段階の利益を持つ報告式になり(boki2-ch01-s02)、 株式の発行では資本金と資本準備金を分けることになる。 この章で作った2枚の紙が、そのまま2期目の出発点になる。
flowchart TD A[精算表<br/>boki3-ch12-s03] --> B[損益計算書<br/>表示を整える] A --> C[貸借対照表<br/>控除形式で並べる] A --> D[帳簿の締切] D --> E[損益振替<br/>収益・費用を損益勘定へ] E --> F[資本振替<br/>損益を繰越利益剰余金へ] F --> G[翌期へ繰り越す残高<br/>資産・負債・純資産] F --> H[株主総会で処分<br/>boki3-ch09-s01] G --> I[2期目・3期目へ<br/>boki2-ch01]
正解: 2
正解: 3
正解: 1
正解: 4
正解: 2